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2020年07月22日10:10

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仏教31〜大乗仏教の勃興、仏教のヒンドゥー化

●新たな経典の出現

 部派仏教の盛んななか、紀元前後の時期から新しい性格を持った経典が現れ出した。その内容は、釈迦が折々に説いた教えを集成したものとは違い、新たな思想を表現したものである。それらの経典のうち、特に古いと考えられているのは、『般舟三昧経』『阿閦仏国経』『大阿弥陀経』である。続いて、般若経の経典群、浄土系経典、『法華経』、『華厳経』等が作られた。後代のものになるほど、経典に神話的要素や文学的色彩が目立つようになった。

●大乗仏教の勃興

 一連の新経典が立脚するのは、出家者が個人の解脱を目指す立場ではなく、在家者を中心として大衆の救済を求める立場である。自分が解脱して涅槃寂静に至ることを目指すことを自利、一切衆生の救済を助けることを利他という。自利より利他を尊ぶ立場の信仰運動から興ったのが、大乗仏教である。また、一連の新経典を大乗経典と呼ぶ。
 大乗とはマハー・ヤーナの漢訳で、「大きな乗り物」を意味する。乗り物とは、川のこちら側から向こう岸へと渡る船をイメージしたものであり、迷いの世界である此岸から悟りの世界である彼岸へ行くための手段である。
 大乗に対する小乗はヒーナ・ヤーナの漢訳で、「小さな乗り物」または「劣った乗り物」を意味する。これは、大乗仏教の側から部派仏教を呼んだ蔑称である。現在では、世界宗教会議での合意により、小乗仏教という言葉は使用しない。インド仏教史上では部派仏教と呼ぶ。

●クシャーナ朝における発展

 マウリヤ朝の衰滅後、インドは小国が興亡する分裂時代を経て、紀元後1世紀に、イラン系の遊牧民族クシャーン人がインド北西部に支配を及ぼして統一国家を作り、クシャーナ朝が成立した。彼らを月氏と呼ぶ。月氏の支配はインド南部には及ばなかった。
 2世紀前半、クシャーナ朝のカニシカ王は仏教を篤く保護した。当時の仏教の主流は大乗仏教に替わっていた。クシャーナ朝では、陸路でローマ帝国との交易が盛んに行われた。そのため、ギリシャ=ローマ文明のヘレニズムの影響によって、現在のパキスタン北西部からアフガニスタン東部にあったガンダーラ王国で仏像彫刻が造られた。そのガンダーラ仏教美術とともに敦煌やトルファンなどの中央アジアに大乗仏教が広がり、東アジアのシナ、さらに朝鮮や日本へと伝わっていった。この地域に伝来した仏教を、北伝仏教という。一方、部派仏教のうち保守的で権威のある上座部仏教は、スリランカやビルマ、タイ等に広がったので、その名称で呼ぶか、または南伝仏教という。

●仏教のヒンドゥー化

 大乗仏教は、在家者を中心とする信仰である。在家者は、現実社会で家庭生活・職業生活をしており、出家者のように修行生活を送ることはできない。そのため、自力による解脱は、ほとんど不可能である。そこで在家者は、他力による救済を求めた。釈迦が超人化・神格化され、救済者として崇拝されるようになったのに続いて、過去仏の信仰が現れ、さらに如来(タターガタ)や菩薩(ボーディサットヴァ)への信仰が生まれた。如来とは、ブッダの尊称の一つである。釈迦如来以外に、阿弥陀如来・薬師如来等が創り出された。菩薩とは、ブッダに次ぐ修行者である。観音・弥勒・普賢・勢至・文殊等の菩薩が立てられていった。これらは、超人的存在であり、一種の神格である。如来や菩薩への信仰は、本来無神教である仏教が有神教化したものである。この現象が意味しているのは、仏教へのヒンドゥー教の影響である。本稿では、仏教がヒンドゥー教の影響を受けて変化していった現象を、仏教のヒンドゥー化と呼ぶ。
 なお、菩薩について補足すると、菩薩とは、自利とともに、一切衆生の救済を誓願して実践する修行者をいう。だが、救済を祈願する信仰対象をいったり、大乗仏教を信奉するすべての者をいうなど、多義的である。
 仏教のヒンドゥー化には、早くから現れた兆候がある。第一は、聖地巡礼である。ヒンドゥー教徒は、神話や叙事詩と結びついた聖地への巡礼を行っていた。仏教徒は、これをまねて釈迦の由来の地に巡礼するようになった。第二は、仏像がヒンドゥー教の神々が身に付ける装身具を付けるようになったことである。装身具には、宝冠や瓔珞(ようらく)等がある。第三に、ヒンドゥー教の神像礼拝の祭儀であるプージャーにならって、仏像に花や香を供え、歌舞を奉納するようになったことである。
 これらの兆候は、もともとヒンドゥー教的な信仰を持っていた人々が、仏教に帰依した後も、以前からの慣習を保っていたためと考えられる。大乗仏教出現以降のインド仏教の歴史は、ヒンドゥー化の進行の過程となった。

 次回に続く。

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