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2020年07月21日10:14

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ウイルス6〜感染症を通じて21世紀の世界は変わる

●中世ヨーロッパのペストによる社会の変化

 武漢ウイルスの感染拡大は、社会に大きな変化をもたらしている。次に、この社会の変化を考察するために、中世ヨーロッパにおけるペストの流行と、それによる社会の変化を振り返ってみよう。
 14世紀には世界的に黒死病(ペスト)が大流行した。1347年にアジアからイタリアに上陸し、イタリア北部では住民がほとんど全滅した。1348年にはアルプス以北のヨーロッパにも伝わり、14世紀末まで3回の大流行と多くの小流行を繰り返し、猛威を振るった。当時のヨーロッパ人口の3分の1から3分の2に当たる、約2千万から3千万人が死亡したと推定されている。
 1347〜50年に黒死病がはやった時、キリスト教徒の間に、ユダヤ人が水や食物に毒を入れたせいだという噂が流れた。黒死病は、人間の悪意によって蔓延した病気であると人々は信じるようになった。取調べはユダヤ人に集中した。脅迫されたユダヤ人が拷問を受けて自白すると、さらに、ユダヤ人への嫌疑が強まった。あらゆる場所でユダヤ人は井戸に毒を投じたと訴えられた。ドイツでは黒死病流行の後に、ユダヤ人の追放が行われた。
 当時のヨーロッパは、封建制の社会だった。封建領主が農民を奴隷のように使役する農奴制のもと、領主が農奴に土地を貸し付け、農作物を納めさせる荘園制が行われていた。ペストで人口が激減し、農奴が一気に減少すると、封建領主は労働力を確保するため、農奴への支配の手を緩めた。農奴は待遇改善を要求し始め、農奴制が崩れていった。農奴が賃金小作農に代わることで社会構造が変化し、後に賃金を得て労働する賃金労働制へと移行することになった。また、労働によって蓄えた富を領主に支払うなどして農奴から解放される独立自営農民が出現した。こうして封建制の基盤である荘園制が解体されるに従い、封建領主は段々没落していった。また、独立自営農民が増えるにつれ、徐々に農村で商品経済が発達し、やがて社会全体に大きな変化を生み出していった。14世紀の危機は、西欧で社会的・経済的な近代化が進む前の、暗黒の序章となったといえよう。
 疫病の蔓延は、社会的・経済的な変化だけでなく、文化的な変化をももたらした。当時、西方キリスト教では、教皇の全盛期で、教会がすべての権威を持っていた。だが、ペストは、信心の浅い者も熱心な者も無差別に襲った。教皇や神父が儀式を行ない、神に祈ってもペストは治まらない。人々は、不満と懐疑を抱くようになった。宗教的権威が揺らぐなかで、14〜15世紀にはイタリアでルネサンスが起こり、16世紀には内陸部で宗教改革が進むことになる。また同時に価値観の揺らぎの中から科学的精神が復興し、西欧の思想・文化に大きな変化を生み出していった。そして、宗教的な聖職者に代わって、世俗的な国家の警察が権力を執行し、近代西洋医学の医者が権威を持つようになっていった。

●感染症を通じて21世紀の世界は変わる

 14世紀を中心とするヨーロッパは人口が少なく、移動手段は限られ、情報の伝達も遅かった。そのため、ペストによる社会の変化には、約400年がかかった。だが、21世紀の現在は、人やものがわずか2〜3日で世界の各地から各地へと移動するようになった。カネや情報は、ほとんど瞬間に近い速度で流通や伝達をするようになっている。それゆえ、中世ヨーロッパで1世紀かけて起きた変化が、1年や数カ月で起きる可能性がある。
 まず世界コロナ危機の中で、働き方が変わってきている。外出自粛や都市封鎖が実施されるなかで、インターネットを使ったテレワークが広がった。長時間かけて職場に通勤し、一定の空間に人が集まって労働する形態から、家庭に居ながら働く形態が急速に取り入れられた。オンライン会議がまたたくまに採用され、オンラインでの医師の診療、職場の面接、学校の授業等が行われるようになっている。書類の押印や手交も電子的な方法に変化しつつある。
 経済的には、グローバリズムの進展によって、この20年ほどの間に、「世界の工場」としての中国の役割が大きくなった。さまざまなものの生産拠点が中国に集中し、安い中国製品が世界各地に輸出され、各国の国内産業は衰退した。だが、武漢ウイルスの感染拡大によって、中国と他国との間の人とものの移動が止まり、また中国の経済活動が低下したことによって、それまでのサプライ・チェーンがマヒ状態になった。そのため、各国ではさまざまな製品を自国で生産する方向への転換が起こり、世界的なサプライ・チェーンの組み換えが起こっている。グローバル経済からナショナル経済への転換である。より正確に言えば、ナショナル経済が連携するインターナショナル経済への回帰である。
 また、政治的には、各国における国境の閉鎖、物資の国内優先使用等にみられるような自国優先の姿勢が、今後も強まると予想される。感染症は国際問題だから、国際的に協調しないと解決できない。世界的なパンデミックは世界各国が協力して英知や技術を結集しなければならない。だが、感染拡大の中で中国が世界保健機構(WHO)を支配していることが明らかになり、米国政府を始めWHOのあり方への批判が高まった。米国がWHOに拠出金を出さないとか、脱退も辞さないことを表明すると、中国は一層WHOへの影響力を強めようとしている。国際協調が最も求められる状況において、逆に中国は、コロナ危機に乗じて、自国の利益を増大しようとする利己的な行動を露わにしている。大衆の選挙で指導者が選ばれる自由民主主義の諸国と、共産党が支配する統制主義・全体主義の国家との世界的な対立が強まっている。自由主義的民主主義と統制主義的権威主義のどちらが、世界的な主導権を握るかの戦いともいえる。

 次回に続く。

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