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2020年06月05日12:18

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仏教11〜実在観、世界観

●実在観

 私は、個別の宗教論を書く際、教義の内容として、実在観・世界観・人間観という項目を立てている。これらのうち、実在観という用語を仏教について使うのは、適当ではないが、他の宗教と対比するために、同じ項目を設けることにする。
 仏教では、あらゆるものは変化し、恒常的なものは存在しないとし、あらゆるものは因縁によって生じるとし、不変の実体を認めない。それゆえ、永遠不変の実在を認めない。
大乗仏教では、このような教義を発展させた空(シューニヤ)の思想が現れた。空とは、すべてのものは、みな因縁によって起こる仮の相であり、実体性がなく固定した本質を持たないことをいう。空の思想を体系化したナーガールジュナ(龍樹)は、すべてのものは本質的に空であるが、それを相対的な日常的立場からは有と見るとして、空を説きながら空に執着しない中道を説いた。
 空の思想を受け継いだ唯識説は、あらゆるものは実体や本質を持たない空であり、心の内なる「識」の作用によって仮に現れたものに過ぎないとした。唯識説は、世界の実在性を否定する世界幻影論を説く。
 西洋哲学においては、自我以外の普遍または個物の客観的実在性を疑う立場を、独我論(ソリプシズム)という。独我論では、世界は自我の意識内容にほかならないとし、物や他我の実在を確実に認識することはできないとしたり、それらに自我と同様の実在性は認められないとする。バークリー、フィヒテ、前期ヴィトゲンシュタイン等が代表的な論者である。
 仏教は、自我中心の独我論ではなく、縁起説によってすべてのものを説明する。また、輪廻転生の世界から解脱することを目的とし、その目的のもとに、実在を否定する点でも異なる。

●世界観

・輪廻転生の世界
 仏教の世界観は、輪廻転生説に基づいている。人間だけでなく、衆生すなわちあらゆる生命体が輪廻転生するとされる。
 迷いの世界から解脱しない限り、前世と現世の行為(業)、及び臨終の心の状態等によって、輪廻転生を続ける。
 部派仏教は、天上道・人間道・餓鬼道・畜生道・地獄道の五道を説いた。道は、ここでは領域または世界を意味する。大乗仏教は、五道に修羅道を加えて、六道とする。また、輪廻転生する世界を、欲界・色界・無色界の三界に分ける。

・前世・現世・来世
 仏教は、生きとし生けるものは、幾度も生まれ変わるという多生説に立つ。死後の世界である来世を想定するだけでなく、前世(過去世)を信じる。キリスト教は、単生説であり、来世は信じるが、前世を想定しない。

・六道
 輪廻転生の世界は、六つの領域で構成される多層世界である。その六つの領域を六道という。六道とは、天上道―人間道―修羅道―畜生道―餓鬼道―地獄道の六つである。中心は、人間道(人道、人間界)であり、これより下に、四つの領域、修羅道(修羅界)、畜生道(畜生界)、餓鬼道(餓鬼界)、地獄道(地獄界)がある。これより上に、天上道(天道、天上界)がある。

 次回に続く。

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