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2019年12月16日09:30

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李栄薫氏の「反日種族主義」とは2

 さて、渡辺氏は、氏のいう「血族的民族主義」について、李栄薫氏の編著書によると、「民族主義というより、はるか遠い時代に淵源をもつもっと原始的な「種族主義」に由来するらしい」と書いている。ここで種族主義とは、私のいうエスニシズムに類するものである。先に私は、韓国の種族主義は、シナより朱子学を摂取する以前から韓民族が持ち続けてきた呪術や風水などのシャーマニズム的な民俗信仰を含んでいる。それが土台にあり、上物として朱子学的な全体主義が立っているという構造であると書いた。このシャーマニズム的な民俗信仰が、原始的な「種族主義」の重要な要素となっていると考えられる。
 李栄薫氏によれば、朝鮮の民族主義が日本の民族意識と大きく異なっていたのは、それが「親族の拡大形態として受容された」ことにある。私の概念で言い換えれば、ナショナリズムをエスニシズムとしてとらえ、それを「親族の拡大形態」として受容したということである。親族とは、渡辺氏のいう血族に当たる。血でつながっているう意識で親族をとらえ、それを拡大したものが国民であり、かつ民族であるという理解と考えられる。
 李氏は、個人が「全体に没我的に包摂」され、「集団の目標と指導者を没個性的に受容」する集団を「種族」と呼ぶ。また、このような集団を単位にした政治を「種族主義」と呼ぶ。そして、韓国の政治は種族主義の特徴を強く帯びていると指摘する。この特徴は、人類学的には、種族というより氏族や部族に見られるもので、原始的な共同体において、最も強くその特徴が見られる。個人の意識がほとんどなく、族長を中心とした集団の全体が画一的な意識で統一されている。人間の社会ではあるが、ムクドリやイワシの群れにおける本能的な集団行動に通じるような画一的な集団性が見られるものと考えられる。こうした社会では、シナから摂取した儒教は、支配者のもとで画一的であることを善とする道徳観を一層強固にするだろう。李氏朝鮮が支配した時代の朝鮮は、儒教を国教とし、両班はそれを教養とし、信条とした。原始的な「種族主義」が思想として高度化され、朝鮮の知識人の精神を画一化したと考えられる。日本でも集団性は強いが、多様なものの調和を重んじるので、儒教を摂取しても、こうした極端な画一性は生まれなかった。
 李氏のいう韓国の「種族主義」は、日本に対して非常に強い形で噴出する。李氏は、次のように書いている。
 「反日種族主義は1960年代から徐々に成熟し、1980年代に至り爆発しました。自律の時代に至り、物質主義が花開いたのと軌を一にしました。反日種族主義に便乗し、韓国の歴史学界は数多くの嘘を作り出しました。この本が告白したいくつかは、そのほんの一部に過ぎません。嘘はまた反日種族主義を強化しました。過ぎし30年間、韓国の精神文化はその悪循環でした。その中で韓国の精神文化は、徐々に低い水準に堕ちて行きました」と。
 渡辺氏によると、李氏は韓国経済史学会会長を務め、韓国古文書学会を立ち上げた経済史の本格的な研究者であり、フィールドワークによる各地の資料の収集、これにもとづく徹底的な実証が李氏の研究の「真骨頂」だという。そうした実証的な経済史の研究家が書いた『反日種族主義』が、韓国でベストセラーになっていることについて、渡辺氏は、「本書はひょっとしたら韓国を変えるのかもしれない。日本人の韓国理解に転機をもたらすのではないか」と書いている。
 もし本書が韓国を変える力を発揮するならば、その力は「自由民主主義文明勢力」が、種族主義を土台とする「朱子学的全体主義勢力」から自由、人権、民主主義、市場経済、法治等の普遍的な価値を守り、韓国の思想的・感情的な閉鎖体質を改善する力として働くだろう。
 私は、わが国は韓国内の「自由民主主義文明勢力」、保守派、「アンチ反日」派と連携し、朝鮮半島が北朝鮮主導で統一され、共産中国に支配されるないように、半島政策を立てるべきだと思う。
 以下は、渡辺氏の記事の全文。

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●産経新聞 令和元年11月28日

https://special.sankei.com/f/seiron/article/20191128/0001.html
実証研究『反日種族主義』の衝撃 拓殖大学学事顧問・渡辺利夫
2019.11.28

≪韓国理解に転機もたらす≫
 李栄薫編著『反日種族主義』が韓国でベストセラーとなり、邦訳も出版と同時に版を重ねているという。本書はひょっとしたら韓国を変えるのかもしれない。日本人の韓国理解に転機をもたらすのではないか。本書を読了して得た感想の一文を認(したた)めておきたい。
 竹島、慰安婦、いわゆる徴用工などの問題でしばしば噴出する韓国人の反日感情をみていると、合理を超えた何かもっと深いところにある「原初的な」情念のようなものを感じることがよくある。専制主義や恐怖政治の北朝鮮に対する韓国民の心情的な思い入れも、平均的な日本人の私の理解を超えている。
 私はかねて韓国の民族主義のことを「血族的民族主義」と呼んできたのだが、本書によればこれは民族主義というより、はるか遠い時代に淵源(えんげん)をもつもっと原始的な「種族主義」に由来するらしい。
 英語のネーション(nation)、ドイツ語のフォルク(Volk)が日本に導入されて、これが民族と翻訳され一般化したのは明治中期のことである。この時代に国語と国民を創出し、日本を一つの民族として意味づけ、そうすることにより近代主権国家としての社会統合を図ろうという欲求が、それまでには存在しなかった民族という観念を生み出したのであろう。雑誌『太陽』の編集主幹・高山樗牛(ちょぎゅう)の翻訳だといわれる。

≪捏造の再生産止める研究≫
 李栄薫教授によれば、朝鮮に民族という観念が初めて導入されたのは日本統治時代のことであり、日本による抑圧と差別の中で生まれた新しい共同体意識が朝鮮の民族主義だという。しかし、朝鮮の民族主義が日本の民族意識と大きく異なっていたのは、それが親族の拡大形態として受容されたことにあるという。私が朝鮮の民族主義を血族的民族主義と呼んだこともあながち間違っていたわけではなさそうだ。
 血族は、たどれば古朝鮮の王・檀君にたどり着く。「我々はみな檀君の子孫であるという民族意識」である。朝鮮人の、とりわけ支配階級「両班」においてこの観念は拭いがたく強いものであったらしい。一代の家計図「族譜」の壮大な拡大バージョン、これが朝鮮民族である。その観念は、「新しき両班」現代韓国の進歩派・左派エリートの思想を呪縛し、竹島や慰安婦や徴用工といった架空の新しい捏造(ねつぞう)の記憶を国民に刻み込むことによってより強固なものへと再生産されている。盧武鉉政権の登場以降の常軌を逸した反日怨恨(えんこん)の根は相当に深いもののようだ。李教授は次のようにいう。
 〈個人は全体に没我的に包摂され、集団の目標と指導者を没個性的に受容します。このような集団が種族です。このような集団を単位にした政治が「種族主義」です。私は、韓国の政治はこのような種族主義の特徴を強く帯びていると考えます。(中略)このような韓国の政治文化が、対外的に日本との関係に至ると、非常に強い種族主義として噴出します〉
 〈反日種族主義は一九六〇年代から徐々に成熟し、一九八〇年代に至り爆発しました。自律の時代に至り、物質主義が花開いたのと軌を一にしました。反日種族主義に便乗し、韓国の歴史学界は数多くの嘘を作り出しました。この本が告白したいくつかは、そのほんの一部に過ぎません。嘘はまた反日種族主義を強化しました。過ぎし三〇年間、韓国の精神文化はその悪循環でした。その中で韓国の精神文化は、徐々に低い水準に堕ちて行きました〉 運命の半島という表現が私の頭をよぎる。この半島にあってまっとうな歴史認識にまで到達しようと格闘する知識人の文明批評は実に過酷である。李教授は韓国経済史学会会長を務め、韓国古文書学会を立ち上げた経済史の本格的な研究者である。保守派の論客でもある。言説は実に果敢である。フィールドワークによる各地の資料の収集、これにもとづく徹底的な実証が教授の研究の真骨頂である。

≪憂国の思いに頭を垂れる≫
 朝鮮の土地の4割が日本統治時代の土地調査事業を通じて日本に収奪されたとする往時の韓国歴史学界の通説、現在の中高生の使う教科書のほとんどにそのように書かれている事実が無根であることを証して、手酷(ひど)い反発を買った研究者が李教授である。土地調査事業は、総督府の土地行政を公正化し所有権を確定するための画期的な試図であったことを立証したのである。
 真実に徹底的に向き合うことがアカデミズムのすべてだという教授の信条は、日本の温和で穏やかなアカデミズムの世界では想像もできないほどの勇気を要する。李教授ならびに李教授の下に集った執筆グループの憂国の思いに頭を垂れる。
 自宅近くのレンタルワンルームマンションの一室に逼塞(ひっそく)して読書と執筆の単調な日々を送っている私のところに送られてきた本書だが、その衝撃的な言説に心安らかにはいられない。(わたなべ としお)
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