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2019年09月16日13:37

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キリスト教252〜日本の調和の精神が新しい文明を開く

●日本の調和の精神が新しい文明を開く

 キリスト教には、ユダヤ的価値観の超克を主要な課題とする自己改革が期待される。
もっとも私は、キリスト教を含むセム系唯一神教の諸宗教がそれ自体の内部的な動きだけで、大きく変化していくのは、難しいのではないかと思っている。その動きを補助し、その変化を促進するものが必要である。私は、そこに多神教の諸宗教の役割があると考える。また、私は、一神教文明群の内部抗争は多神教文明群の仲介によってのみ協調の方向に転じられると考える。一神教文明群の衝突が世界全体を巻き込んで人類が自壊・滅亡に至る惨事を防ぐために、多神教文明群は、あい協力する必要がある。その働きかけにおいて、特に日本文明には、重要な役割がある、と私は考える。
 日本文明については、拙稿「人類史の中の日本文明」に書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09c.htm
 現代世界において、日本文明は、世界の主要文明の一つに数えられる。日本文明は、古代から独自の文化を発達させながら、東洋諸文明から伝来した宗教・思想・芸術等を摂取し、それらを独創的に発展させてきた。また、19世紀後半から、近代西洋文明から科学技術や制度を積極的に摂取してさらなる発展を遂げている。しかもその半面で、日本古来の伝統・文化・国柄を豊かに保持している。
 日本文明は、一神教諸文明にも他の多神教諸文明にもない独自の特徴を持つ。それは、人と人、人と自然が調和して生きる精神である。この精神は、四方を海に囲まれ、四季の変化に富む豊かな自然に恵まれて、共同労働によって集約的灌漑水田稲作で米作りをしてきた日本人の生活の中で育まれたものである。これを日本精神という。日本精神は大調和の精神であり、その点では日本民族だけのものではなく、世界の諸民族にも求められるものである。この人と人、人と自然が調和する大調和の精神にこそ、危機にある人類の文明を転換し、この地球で人類が生存・発展していくための鍵がある。
 人類は核戦争と地球環境破壊による滅亡の危機にある。この危機を乗り越えるには、まず、人類の間に人と人の調和が必要である。核兵器が増加・拡散する今日の世界において、人類は、戦争による自滅を避けるために、対立・抗争、征服・支配ではなく、個人と個人、国家と国家、民族と民族が共存調和して、ともに繁栄できるような社会のあり方を見出さねばならない。そして私は、その世界的な共存調和を可能にする原理は、日本の精神文化に内在していると考える。
 キリスト教をはじめとするセム系唯一神教の社会では、宗教紛争・宗教戦争が多く繰り返されてきた。これに対し、日本では、こうした宗教紛争・宗教戦争がない。古代の日本には、シナ文明から儒教・道教・仏教が伝来した。それら外来の宗教のうち、儒教・道教は日本固有の神道の中に取り込まれた。また神道と仏教は共存し、混交して、日本独自の宗教を形成した。こうした日本の精神文化の持つユニークな性格が、文明間の摩擦を和らげ、文明の衝突を回避して、大いなる調和を促す働きをすることが期待される。日本の精神文化の伝統を踏まえて、宗教・思想・文化等の相違を超えて諸国家・諸民族が調和できる世界のあり方を示すことが、わが国の世界平和への最大の貢献となるだろう。同時にそれが、日本が国際社会で平和と繁栄を確保する道ともなるだろう。
 次に、人類には、人と自然の調和が必要である。近代西洋文明は、ユダヤ=キリスト教の世界観の強い影響を受けている。ユダヤ=キリスト教には、人間は神の似姿として創造されたものであり、自然は支配し利用すべきものだとする思想がある。近代西洋では、その思想のもとに、物質としての自然、魂なき自然という自然観が形成された。そして、そうした自然観のもとに科学技術が発達し、人間による自然の征服・改造が推し進められている。そのため、地球の自然環境が破壊され、人類は文明の土台を自ら突き崩しつつある。
 この危機を回避するには、自然を単に物質・エネルギーの循環システムと見るのではなく、人間の生命や心霊と通底したものと感じる心を取り戻すことが必要である。そして人間は自然から生まれ、その一部であるという自己認識を回復しなければならない。20世紀後半から世界的に広がった環境科学としてのエコロジーは、自然の全体に人間の生命につながるものを感じ、また人間の精神に通底するものを感じ取る生命的・心霊的な自然観に裏付けられる時にのみ、自然と調和した文明を創造することに貢献するものとなるだろう。
 先進国の中で唯一、わが国は今日でも、生命的・心霊的な自然観を保っている。それは、日本文明の宗教的中核となっている神道の伝統によるものである。神道は、日本精神の宗教的表現である。神道については、先に地球環境危機の項目でカトリック教会と神社の違いについて書いたが、神道は世界の主な宗教の中で自然との調和を最も重んじる宗教である。日本人は神道の信仰に基づき、自然の恵みに感謝し、森を守り、海を守る生き方をしてきた。その日本人の自然と調和する生き方を、今日の地球に生かす。それにより、日本文明は人類文明の転換に貢献し、新しい地球文明の創造に寄与し得る、と私は考える。
 核戦争と地球環境破壊による自滅の危機に直面する人類は、この危機を乗り越えて物心調和・共存共栄の新文明を地球上に創造できるかどうかに、自らの運命がかかっている。ここに、現在の人類文明がより高度な文明へ飛躍できるか、それともそれに達する前に滅亡するかという分かれ目がある。
 この危機と飛躍の時にあって、日本人には、自らの伝統的な精神を取り戻し、その精神に内在する原理を発動して、新しい精神文化を興隆し、世界人類を精神的な向上に導く役割がある、と私は信じる。
 ただし、古来の伝統的な神道は、科学が発達する前に現れた宗教の一つであり、そのままで、今日の人類を導きうるものではない。その点では、他の諸宗教と同じである。神道の中から、また神道の伝統を踏まえた立場から、科学と両立し、融合し得る新しい宗教が現れることが期待される。

 次回に続く。

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