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2020年11月25日14:56

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幼馴染と仮想空間の幽霊 5

「ねえ、わたしの特技見てみない?」
静まり返った旧美術室に入江の言葉だけが響く。
入江が取り出したのはノートに描かれた自画像である。
白紙のページを固定して鏡をセットする。
描かれる軌跡は線が細くクールビューティーの入江そのものであった。
「へー凄い」
素直に驚く真奈であったが入江は手を止める。
「見てと言ったけど何かが違うわ。光のかげんかしら……」
俺が見ても綺麗に描けていると思うのだが、入江は片付けを始める。
「今日は終わり、このコードを携帯に入力して」
極地的SNSのもっとネットのマイルームの申請番号らしい。
俺達はもっとネットを立ち上げると9桁の番号を入力する。
「これは……」
それは驚きであった。
入江のマイルームはこの旧美術室であったからだ。
更に画面上では蒼色の少女が動いていた。
蒼色の髪のアバターなど初めて見るのであった。
「わたしが特別なのは分かった?でも、これだけ……」
入江は再びクルリと一回転すると。
「データのわたしは無力な存在なの。手遅れかもしれないけれど体がやっぱり欲しいわ。もし、良ければ手伝ってくれる?」
綺麗な女子のお願いである……迷いはあったが快諾することにした。
「真奈はどうする?」
俺のふりに真奈は背筋を伸ばして「面白そうだからわたしも参加するよ」と答える。
「決まりだ、今日から俺達は同じミッションをこなす、同士だ」
クスリと笑う入江はとても人間臭くデータの塊である事を忘れさせる。
入江は間に合わないかもとか言っていたが嘘のようであった。
陽ざしが傾き俺達は帰ることにした。
「マイルームの申請をしておくわ、自宅に着いたら、君たちのマイルームに遊びに行くわ」
その言葉が聞こえたと思ったら入江の姿は消えていた。
まるで仮想空間の幽霊にでも会った気分だ。
俺は真奈と顔を合わせると頭をかきながら旧美術室を後にするのであった。

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