mixiユーザー(id:52355057)

2020年07月29日14:43

122 view

日本人形の憂鬱 14

夜中に起きると、わたしはコップ一杯の水を飲んで再びベッドに入る。
それは朝方の夢だと感じる感覚であった。
大きな広間に棺が置かれていた。
近づくと真由美が白い花に囲まれて入っている。
「わたしの初めての獲物よ」
美亜が後ろに立っていた。
死神を自称してわたし達の前から消えた美亜である。
わたしは想像した、真由美が居ない生活である。
「美亜、何故、わたしを殺さないの?」
「あなたは、魔女と契約している。『祈りの石』は魔女の物だし、叩けばすぐに自ら命を断つ獲物なんてつまらないわ」
そう、これは夢である。
アイが見せた時空を超えた感覚の夢である。アイが近づいてくる。
「この世界では真由美という個体一体の居ない世界よ……あなたはこの真由美に依存している。死神はそんな個体を好むの」
アイの言葉に悪い夢である事を願う。
わたしは試しに鉛筆で腕を刺してみる。
……痛い。
この感覚は夢であって夢でないモノであった。
美亜の狙いは真由美だ。
その認識が引き金になって目が覚める。
薄暗い部屋の中でアイが椅子に座っている。
「真由美なる個体を守る方法があるわ」
「お願い、教えて!」
アイは立ち上がりゆっくりと近づいてくる。
「『祈りの石』を使うの……亜美の支払った対価を『祈りの石』で返すだけ」
わたしの頬に顔をすり寄せるとアイは消えてしまう。
これも夢?違う現実だ。
スマホを見ると真由美の着信が残っている。
寝てから電話なんて真由美らしい。
わたしは『祈りの石』を使う事を決意したのである。

5 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する