わたしは市内のバスに乗っていた。
湖のある公園に向かっていた。
リアルクラッシャー以外の唯一の趣味であるスケッチをする為である。
最近のソシャゲーはタイムポイントがある事が多い。
タイムポイントが切れるとメインの遊びが出来ない。
今日は朝からリアルクラッシャーを始めて、タイムポイントが尽きたのである。
家から三十分ほどで公園に着く。
わたしは湖のほとりでベンチに座りスケッチを始める。
鉛筆を走らせて風景が浮かび上がる。
しかし、白黒の世界は寂しいものであった。
わたしは色鉛筆を使うか迷った。
色のある世界……。
どうするか、長考していると。
「お嬢さん、綺麗に書けているね」
おじいちゃんが声をかけてくる。この公園を散歩中らしく、子犬を連れていた。
「このスケッチに色を入れた方がいいですかね?」
おじいちゃんは首を傾げて困った様子である。
自分決めろと言うのかと解釈した。
「ありがとうございます、色を入れてみますね」
おじいちゃんが去って行くと、わたしは青を手にしていた。
青い空、青い湖、青い世界……。
この世界に青が舞い降りた。
うん?
雲行きが怪しい。
ここで雨に降られたら不幸である。
とにかくバス停に向かおう。
バス停に着くと曇り空は雨の降る様子が無くなった。
スケッチの途中だが帰る事にした。
軽い憂鬱である。
不幸ではなく憂鬱が正しい表現であった。
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