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2020年07月24日09:03

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日本人形の憂鬱 10

それはまだ肺の病気で入院してた頃のお話である。
窓から心地よい風が舞い込み、カーテンを揺らしていた。
「検温ですよ」
若い男性の看護師さんが体温計を持って部屋に入ってくる。
それは初恋であった。
「今日も少し体温が高めだけど大丈夫でしょう」
男性看護師さんが帰っていくと。
わたしはシーツに包まる。
改めて体を見回すと、細い腕は病弱な体を象徴していた。
これではわたしを見てくれない。
わたしは親に無理を言って色の入ったリップを頼んだ。
翌日に手鏡を使い桜色のリップを口元に付ける。
恋心をリップに乗せて気持ちはお姫様であった。
「検温ですよ」
男性看護師さんが入ってくるとわたしは急いで唇を拭く。
素直じゃない、素直じゃない、素直じゃない。
わたしは内向きの性格が嫌になるのであった。
「今日は月に一度の採血ですよ」
テキパキと採血の準備かされて針が腕を刺す。
この想いも検査されたら……。
『初恋陽性』とか。
わたしは深い妄想に浸っていた。
検温も終わり、男性看護師が帰っていくと、わたしは呼び止める。
「もし、この病気が治ったなら……」
告白は途中で途切れてしまった。
「今日も体調は良さそうですね」
そう言うと男性看護師はいなくなる。
わたしは今日もシーツに包まり自己嫌悪になるのであった。
……。
「何しているの?」
わたしが自宅でシーツに包まっていると母親に怒られる。
この包まる癖は入院中に付いたものだ。
あの頃の初恋を思い出していた。

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