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2020年05月31日21:14
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p.170 賃金上昇をはじめとした雇用環境の改善が、労働者のためだけではなく、経営者の視点からみてもメリットがあることは、すでにアダム・スミスが『国富論』において、「労働に対する気前のいい報酬は、普通の民衆の増殖を促進するとともに、その勤労を増進させる。労働の賃金は勤労への奨励であり、勤勉は、人間の他のすべての資質と同様、受ける奨励に比例して増大する」と指摘していたことであり、この引用箇所は古くは大河内一男氏の労働力保全理論、新しくはアカロフたちの効率賃金仮説などにより活用されてきたことでもあります。 p.172 さらには、共働き世帯が増えると、家計の消費構造が大きく変化するために、新しい需要が創出されることになります。なお、リーマン・ショックの後、中低所得層で共働き世帯が増えています。この時、家計単位の所得格差は縮小しています84。 84 石井加代子(2018)「家族としゃかいほしょうせいどによる「健康で文化的な最低限度の生活」の計量的検証――パネルデータを用いた所得・時間・健康の相対的概念に基づく測定」第3章「リーマンショックは所得格差にいかなる影響を与えたか?――景気変動と有配偶世帯の所得格差」において、リーマンショックを境に妻の就業による家計間のジニ係数の削減効果が大きくなっていることを指摘しています。 p.207 同じ職種job――営業とか経理とか人事とか――であれば、企業が違っても同じ賃金を払いなさいということです。 p.208 給与の大枠が、職務、つまりjobごとに労使団体による中央交渉で決められるから、北欧では同一労働同一賃金という制度が成立していることになるわけです。 p.210 企業別組合が主たる日本型の労働市場は、産業別労働組合が成立し職務の区分が明確なヨーロッパ型とは異なる。このことが、ILO175号条約において、フルタイムとパートタイム労働の均等待遇が批准されていない理由ともなっている。 p.213 そして、内閣府「令和元年版子供・若者白書」によれば、フリーター(15〜34歳のパート・アルバイトとその希望者)は、ピーク時の2003年には217万人に上っていました。その後、フリーター数は減少に転じ2018年には143万人となりましたが、15〜24歳層に比べて25〜34歳の減少幅が小さく、年長フリーターが滞留していることが課題となっています。 p.216 ちなみに、最低賃金の引き上げ、さらに言えば最低賃金制度そのものについて、経済学者は長らく懐疑的でした。というのは、完全競争市場においては、市場清算水準(需給が一致する賃金水準)を上回る下限規制は、(最も貧しい人々の職を奪い)失業を生み出すと、経済学は教えてきたからです。ところが、実際には、リーマンショック以降、最低賃金の引き上げが続いている一方、失業率の上昇は見られませんでした。2018年の完全失業率は2.4%とバブル期以来の低い水準であり、これは地方でも同様です。 p.217 こうした状況を受け、経済学者は、最低賃金が上がっても失業率が高くならない事実と整合性のある理論を求めざるをえなくなり、それを、古くからある理論――労働市場が完全競争市場ではなく、企業が労働市場で価格支配力を持つ買い手独占市場――に求めるようになっていきます。というのは、買い手独占市場は、賃金水準、雇用量とも競争市場より低く設定されており、賃金を挙げてもコストの増加を上回る売り上げの伸びが期待できる余地があるため、失業を増やすことなく、賃金の引き上げが可能となることを示唆するからです。 しかし、日本をはじめいくつかの国でみられる、最低賃金が上がっても失業率が上がらない理由を買い手独占モデルにだけ求めるのにも無理があるようにも思えます。 p.259 なにも変わらないではないかと思われるかもしれませんけど、これが離婚時の年金分割の時に生きてくることになるわけですし、この規定が明示されて以降は、第3号被保険者の保険料は、配偶者が負担しているという解釈が成立するようになっています。 p.260 と言いますか、この規定が1985年の第3号被保険者制度創設時になされていれば、その後の第3号被保険者をめぐる議論は違ったものになったと思うのですが、当時は時代が許さなかったのでしょう。 p.263 (若い時から道徳哲学の研究者であり続けた)スミスは、労使間の交渉上の地歩のアンバランスを補正する必要に気付いており、労働者が使用者と公正な競争を行うことができるように、労働者にいわばハンディキャップを与える政策を積極的に展開することを説いた。つまり、スミスは「能動的自由放任主義者」であったのである。彼は労使間の交渉上の地歩のアンバランスを自らの理論に組み込まなかった(若き日を株式仲介人として過ごした)リカード以降の「消極的自由放任主義者」とは180度、政策の方向性が異なっていた。 p.272 こうした議論の対立は、古くから、人的資本理論vs仕事待ち行列(レスター・C・サロー等)、人的資本理論vsシグナリング理論(マイケル・スペンス等)としてあった話でした。
政府は、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案の今国会成立を見送る方向で調整に入った。政府高官が18日明らかにした。検察の独立を脅かす恐れがあるとして同改正案に反対する世論が高まる中、採決を強行して批判を招くのは得策ではないと判断した。 「束ね法案」となっている国家公務員法改正案などと合わせ、秋に予想される臨時国会で仕切り直す考えだ。
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