自殺現場

これまでの人生で一度だけ自殺現場を見たことがある。当時は宿泊関係の仕事をしていたが、ある朝、部屋掃除として雇っていたおばさんが事務所に駆け込んできた。おばさんの話しによれば、声をかけて部屋に入ったが、何やら様子がおかしいということであった。

そこで確認のために部屋に行ったが、窓のカーテンは閉じたままだったので室内は薄暗く、窓側に人が佇んでいるかのようだった。
声をかけたものの応答はなかったので近寄ると、窓側の鴨居に腰紐を掛けて、首吊り自殺をしているのだと判明した。確認のために手に触ったが冷たく、顔は青ざめ、口からはよだれを流しているのが見て取れた。

警察に首吊りをしている客がいると連絡をすると、程なくして作業着姿の警官が男女ひとりづつやってきた。警察は心得た様子であるらしく、ワゴンタイプの車でやってきた。そして非常口から建物内に入り、テキパキと作業をして死体を死体袋に入れて搬出したが、他の客に気付かれないように気を配ってるのがわかった。

後になって、この客は事業に失敗をし、首吊り目的で宿泊したのだろうとか、その他色々なことを警察から教えてもらったが、月に数回の宿直勤務で建物を巡回する時には、自殺があった部屋の前の廊下を通る度に嫌な思いがした。

幽霊などいるはずはないと頭では分かっていたが、もしものことを考えて数ヶ月間は、よほど立て込んでない限り、この部屋には客を泊めないように言い渡された。

テント内で4人死亡 集団自殺か
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