8月18日が忌日である人々

440年、第44代教皇、シクストゥス3世が亡くなりました。生年が不明なため、享年も特定できません。シクストゥス3世の名前は、ローマの建築ブームと結びつけて語られることが多いです。アヴェンティーノのサンタ・サビーナ聖堂は彼の在任期間中に捧げられました。また、イエスの母マリアに捧げられたサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂も、彼が431年のエフェソス公会議に承認を出すことによって建立されました。
1227年、モンゴル帝国(後の元)の始祖、チンギス・ハン(成吉思汗) が遠征中の陣中で死去。享年55。大小様々な集団に分かれてお互いに抗争していたモンゴルの遊牧民諸部族を一代で統一し、中国・中央アジア・イラン・東ヨーロッパなどを次々に征服し、最終的には当時の世界人口の半数以上を統治するに到る人類史上最大規模の世界帝国であるモンゴル帝国の基盤を築き上げました。死後その帝国は百数十年を経て分裂・解体されましたが、その影響は中央ユーラシアにおいて生き続け、遊牧民の偉大な英雄として賞賛されました。特に故国モンゴルにおいては神と崇められ、現在のモンゴル国において国家創建の英雄として称えられています。
1503年、第214代ローマ教皇のアレクサンデル6世が1503年7月に中部イタリアの残存勢力討伐の為の軍事行動を準備していましたが、突如父子共に熱病に倒れました。おそらくマラリアと推測されますが、そのまま死去。83歳。本名はロデリク・ランソルですが、母方の伯父であるカリストゥス3世の教皇就任に伴って、母方の苗字であるボルハ（ボルジャ）に変えたため、ロデリク・ボルハのイタリア語読みであるロドリーゴ・ボルジアの名前で知られることになりました。ルネサンス期の世俗化した教皇の代表的存在であり、好色さ、強欲さやジロラモ・サヴォナローラとの対立によっても非難されることが多いです。また、息子のチェーザレ・ボルジアを右腕とし、一族の繁栄とローマ教皇庁の軍事的自立に精力を注いだことで、イタリアを戦火に投じることになりました。
1598年(慶長3年)、一階の足軽から天下人に昇りつめた木下藤吉郎こと豐臣秀吉が数え62歳で病死しました。朝鮮出兵の頃から、健康状態は悪かったのです。慶長3年（1598年）5月15日には『太閤様被成御煩候内に被為仰置候覚』という名で、徳川家康・前田利家・前田利長・宇喜多秀家・上杉景勝・毛利輝元ら五大老及びその嫡男らと五奉行のうちの前田玄以・長束正家に宛てた十一箇条からなる遺言書を出し、これを受けた彼らは起請文を書きそれに血判を付けて返答しました。秀吉は他に、自身を八幡神(豊国大明神)として神格化することや、遺体を焼かずに埋葬することなどを遺言しました。
1850年、フランスの小説家、オノレ・ド・バルザックが暴飲暴食からくる糖尿病、腹膜炎、その他により51歳で死去。バルザックは90篇の長編・短編からなる小説群『人間喜劇』を執筆しています。その中でも代表作は『ゴリオ爺さん』『ウージェニー・グランデ』『谷間の百合』『ファチノ・カーネ』『サキュバス』 『従妹ベット』などです。
1940年、ウォルター・パーシー・クライスラーが65歳で永眠しました。1919年にビュイック自動車会社の社長を辞任し、ゼネラルモーターズの副社長となり、1921年、マックスウェル自動車会社の株式を大量に取得しました。 1925年、マックスウェルとチャーマーズを統合し、自らの名を冠したクライスラー社を創業しました。1928年にはPlymouth（プリムス）、De Soto（デ・ソート）の両ブランドを設立します。 同年、タイム誌の「今年の人」に選ばれました。1929年にダッジ社を買収、ビッグスリーの一角に成長しました。第二次世界大戦前には高い技術力でゼネラルモーターズに次ぐ第2位の座に着いたこともあります。また超高層ビル建設に融資し、ニューヨーク、マンハッタン島にクライスラー・ビルディングが建設されました。ウォルター・クライスラー死後のクライスラー社は、1987年にJeep（ジープ）、Eagle（イーグル）の両ブランドをアメリカン・モーターズから買収し、ビッグスリーの一角ではあり続けたものの、1998年にドイツのダイムラー・ベンツによって事実上吸収合併され、ダイムラー・クライスラーが誕生しました。しかし、2007年に合併は解消され、クライスラー部門はサーベラス・キャピタル・マネジメントに売却されました。 2009年4月30日、ニューヨーク州で連邦倒産法第11章の適用を申請し破産、以後フィアットグループ傘下でのブランド再建を目指します。
1945年、インドの独立運動家、スバス・チャンドラ・ボースがソ連を目指して台湾島の松山飛行場から大連へ向かう予定であった九七式重爆撃機に乗り込んだところ、離陸直前に左側プロペラが外れ、機体はバウンドして土堤に衝突、炎上しました。ボースは炎上する機体から脱出できたものの、全身に大やけどを負いました。ボースは台北市内の大日本帝国陸軍病院の南院に運ばれ、手当を受けましたが午後11時41分に死去しました。火葬されたボースの遺骨は東京都杉並区の日蓮宗蓮光寺に今でも眠っています。インドを独立させようとしていたボースは力を借りるのに好悪を選ばず、第二次世界大戦中の日本、ドイツ、イタリア、ソ連と提携しようと飛び回っておりました。カレー屋の新宿中村屋のビハーリー・ボースは係累です。
1951年、出版社「新潮社」の創立者で、雑誌「新潮」を発行した佐藤義亮が昭和26年（1951年）8月18日、73歳で死去。佐藤は青春時代、苦労して哲学館（現在の東洋大学）夜間部卒。新潮社を創立すると、社是に「良心に背く出版は殺されてもせぬ事」「どんな場合でも借金をしない事」「決して約束手形を書かぬ事」の3か条を掲げ、自然主義文学運動と結んで多くの文学作品や雑誌を出版、新潮文庫（1914年）、「世界文学全集」（1927年）などで文芸出版社としての地位を確立しました。昭和10年ごろ、PL教団の前身である「ひとのみち」教団に入信し、社員や取引先なども強制的に入信させました。娘の病気回復を願って一家で入信した義亮は、教団のパトロンでもあり、新潮社の雑誌『日の出』でも、三角寛ら「ひとのみち文士」と呼ばれる書き手を多く起用しました。新潮社の名物編集者として知られた斎藤十一も同教団の信仰を通じて義亮の四男・哲夫と知り合い、義亮の孫・亮一の家庭教師となり、それが縁で新潮社へ入社したのです。戦後には公職追放の憂き目にあいました。その後の新潮社は息子、孫へと受け継がれました。そもそも多くの出版社が同族企業なのです。部外者が出世するのはとても難しいのです。
1987年、『楢山節考』『風流夢譚』などを著した小説家、ギター奏者の深沢七郎が心不全のため、自ら開いたラブミー農場の土間で、椅子に座ったまま死去しました。73歳没。それに先立って1968年10月31日、心筋症による重度の心臓発作に見舞われ、生死の境をさまよったことがあります。以後、亡くなるまでの19年間、闘病生活を送ることとなります。ギタリストになったのは中学生時代からギターに熱中していたからです。1956年（昭和31年）に姨捨山をテーマにした『楢山節考』を中央公論新人賞に応募、第1回受賞作となりました。三島由紀夫らが激賞して、ベストセラーになります。また、戦国時代の甲州の農民を描いた『笛吹川』も評判になりました。1960年末に『中央公論』に発表した『風流夢譚』では、皇室を侮辱していると受け取れるような内容を描いたため、翌年、中央公論社社長宅が右翼に襲撃される嶋中事件（風流夢譚事件）が起こりました。そのため筆を折って3年間各地を放浪しています。放浪中も『放浪の手記』などを執筆しています。
1989年、作曲家の古関裕而が脳梗塞のため聖マリアンナ医科大学病院で没しました（享年80歳）。経済的な理由により、クラシック畑からポピュラー畑に転身し、多数の軍歌、歌謡曲、早稲田大学第一応援歌「紺碧の空」、慶應義塾大学応援歌「我ぞ覇者」、東京農業大学応援歌「カレッジソング」、中央大学応援歌「あゝ中央の若き日に」、名城大学応援歌「真澄の空に」、 全国高等学校野球選手権大会の大会歌「栄冠は君に輝く」、阪神タイガースの応援歌「大阪（阪神）タイガースの歌」（「六甲おろし」）、読売ジャイアンツの応援歌「巨人軍の歌（闘魂こめて）」、「中日ドラゴンズの歌」、東京五輪のオリンピックマーチ、NHKスポーツ中継テーマ「スポーツショー行進曲」など、実に数多くの応援歌、行進曲の作曲を手がけ、和製スーザと呼ばれました。戦後は、暗く不安な日本を音楽によって明るくするための活動に力を注ぎました。長崎だけにとどまらず日本全体に向けた壮大な鎮魂歌「長崎の鐘」。戦災孤児の救済がテーマのラジオドラマ『鐘の鳴る丘』の主題歌「とんがり帽子」。現在も毎年夏の甲子園に流れている高校野球大会歌「栄冠は君に輝く」。その他にも「フランチェスカの鐘」、「君の名は」、「高原列車は行く」などの格調高い曲を多く創作しました。劇作家の菊田一夫と名コンビを組み、数々のラジオドラマ、テレビドラマ、映画、演劇、ミュージカルのヒット作品を世に送り出しました。1961年に菊田と手がけた森光子主演の『放浪記』は長期公演舞台となりました。晩年には萩本欽一が司会者であったフジテレビ系の音楽番組『オールスター家族対抗歌合戦』の審査員を務めていました。
2003年、タレントの穂積由香里が20代で腎臓を患って、十数年の闘病生活を送り、2000年には腎不全で入院しており、その年の秋には実母（2001年死去）からの提供で生体腎移植を受け、35歳になった2003年8月18日、父の隆信夫妻と同居する都内マンションの自室で亡くなっているところを発見されました。行政解剖の結果、死因は多臓器不全で、2003年8月13日夜から14日未明にかけて死亡したとみられます。後年の1983年にはトルエン所持による毒物及び劇物取締法違反で、また覚せい剤取締法違反でも2度逮捕されるほどの不良少女で、父である俳優・穂積隆信の著書『積木くずし』のモデルにもなっています。該当書は約300万部を発行するベストセラーになり、TBSでのテレビドラマ化、東宝での映画化などが行われました。1986年に穂積由里の芸名でテレビドラマ『妻たちの課外授業』で女優デビュー。ヌードまで披露した芸能活動は成功せず、アメリカ留学中に知り合った邦人男性と結婚しますが、間もなく離婚。ナイトクラブ「積木の家」を経営するなどしましたが、亡くなる前は父とその再婚相手でもある義母と同居し、知人のスナックの手伝いをしていました。私の知人は娘の由香里の行方を捜していたのか、呆然と口をあけながら徘徊していた穂積隆信の姿を赤坂で何度も見かけたそうです。
2005年、上方の講談師、3代目旭堂南陵が 2005年（平成17年）に88歳で没しました。同世代の桂米朝とは落語と講談と道は違えど、盟友の仲でした。死後、2006年に第11回上方演芸の殿堂入り。狭い上方の講談界ですが、現在は三派に分裂してしまっているのは情けない限りです。
2009年、第15代韓国大統領に就任していた金大中(キム・デジュン)が多臓器不全により85歳で死去しています。1971年の大統領選では、落選しましたが、直後には交通事故を装った暗殺工作に遭い、股関節の障害を負いました。1973年（昭和48年）8月8日、東京に滞在中、ホテルグランドパレスで何者か（複数）によって拉致され、行方不明となりました。この犯人たちは、謀殺を意図した韓国中央情報部 (KCIA) の工作員であった事が後に判明します。拉致後、神戸から出港した工作船の上で殺害される寸前でしたが、日本の海上保安庁のヘリコプターが船の上を旋回し､照明弾などで威嚇したため、犯人らは殺害は中止。その後、ソウルで解放されて九死に一生を得ましたが、ソウルの自宅で日本人記者らに会見を行った後、2か月間、軟禁状態に置かれました(金大中事件)。大統領になるまでの自宅軟禁、投獄期間は約10年に及びました。1976年3月には尹潽善らと共に「民主救国宣言」を発表、逮捕され懲役判決を受けるも、1978年3月に釈放されました。1979年10月26日に朴正煕暗殺事件が起きると、民主化の機運が高まってソウルの春が訪れ、韓国政界で金大中・金泳三・金鍾泌の3人のリーダーが注目される、いわゆる三金時代が始まりました。1980年2月29日に公民権を回復。政治活動を再開しますが、3ヶ月後の1980年5月18日に再び逮捕。これが原因となって光州で起きた民主化要求のデモを軍部が武力鎮圧します、流血の大惨事となりました（光州事件）。このため、軍法会議で首謀者として、また1977年に発生した学園浸透スパイ団事件での“摘発スパイ”の自白から「韓国民主回復統一促進国民会議」の議長とされ、死刑判決を受けました。しかし、次第に民主化弾圧の死刑判決であると国際的な批判が強まって、1982年1月23日の閣議決定により無期懲役に減刑される事が決定し、12月23日に米国への出国を条件に刑の執行を停止されました。1985年2月8日に亡命先の米国からの帰国を強行し軟禁状態に置かれますしたが、1ヶ月後の3月6日に全斗煥大統領により政治活動を解禁されました。1987年には再び公民権を回復。16年ぶりに直接選挙制で行われた大統領選挙で平和民主党を結成して、軍人出身の盧泰愚に挑むものの、金泳三と分立したことが文民勢力の分裂を招いて敗北しました。1992年にも金泳三、鄭周永らを相手に大統領選を戦うも再び敗北。これをもって金大中は一時、政界引退を表明しました。その後、研究生活に入り、論文を書く日々を送っていましたが、次回大統領選挙に向け動向に注目が集まっていた1995年に、新政治国民会議を結成して、総裁に就任。政界復帰しました。1997年の大統領選挙で当選しました。対北朝鮮への対応が評価され、2000年にはノーベル平和賞を受賞。これは現時点で韓国人唯一のノーベル賞受賞です。大統領退任後は政界を引退しました。延世大学校付属の金大中図書館設立に携わるなど政治とは距離を置き、研究生活を送りました。政治家にもろくな人材がいない韓国においては珍しくまともな人材。

本日はここまでです。
ではまた明日！