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2019年04月21日13:35

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上方歌舞伎役者 中村太郎

ここで取り上げるのは、二代目の中村太郎です。1928年生まれ、1989没。初代中村太郎の息子であり、本来なら上方の大看板・中村成太郎の名を継いで、上方歌舞伎の中心に座るべきはずの人でした。

ところがこの中村太郎、私生活でとんでもない悪癖がありました。それは「心中」です。
彼は心中未遂を別々の女性相手に三度も起こしました。そのたびに女性だけが亡くなり、太郎のほうだけが一命を取り留めたのです。
さあこうなると、上方の歌舞伎界で彼を相手にする人はいなくなってしまいました。それは東京へ出てきても同じことです。次にいつ心中事件を起こして舞台に穴を開けるか分からないから。
出番のなくなった彼が身を寄せたのは、先代の市川猿之助(現・市川猿翁)の一座でした。先代の猿之助は高麗屋三兄弟など、歌舞伎界の大物たちから疎外され、共演してくれる相手にも不足する始末でした。仕方なく先代猿之助は国立劇場が養成した梨園(歌舞伎界)出身ではない若手たちを一座に引き取り、また当時衰退していた上方の歌舞伎界の役者たちも一座に引き入れました。そんな上方役者の中の一人が、くだんの中村太郎だったのです。
歌舞伎を評論する小山観翁氏が「どんな舞台の片隅に出ていても、ああプロだなあと思わせる」と自身の著書で書いていましたが、まことにその通りです。
中肉中背で容姿も取り立てて特徴もない人でしたが、所作は本格的でした。いつも端役で、台詞もほんの一言か二言。でも、安心して視ていられる役者さんだったのです。
息子に恵まれず、中村成太郎〜太郎の血統は絶えてしまいました。残念なことです。
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