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2019年04月21日12:32

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小林秀雄とベルクソン その8 私とベルクソン

学生時代、小林秀雄にかぶれ、「俺が小林秀雄か、小林秀雄が俺か」とまで言い放った男は物理学科でした。
それを見ていた私は「これじゃいかん」と、小林の思想的源流の一つを形成していたベルクソンの研究に立ち向かった訳です。獣医学科を中退してまで哲学科のある大学へ入り直したけですが、残念なことにベルクソンを専門とする教授や講師はそこにはいませんでした。
でもそれは却って良いことだったと思います。師の教えに束縛されることなく、自由に伸び伸びと研究できたから。
私は獣医大学ではドイツ語を選択していたので、ベルクソンを専攻する以上、フランス語は必須です。和訳ではなく、原書で卒論にも当たりたかったから。大学の講座だけでは物足りず、御茶ノ水のアテネフランセにも、高等科一年まで通いつめました。歳も歳だったので、学費稼ぎのバイトもせねばならず、サークル活動などとは無縁でした。
アテネフランセに通い詰めたおかげもあって、何とかベルクソンの四大著作を中心に、彼の心身二元論を徹底的に調べ上げ、卒論にまとめあげました。
副査の教授からは「何が言いたいのか分からない」と冷たくあしらわれましたが、主査の教授からは「今まで学生が書いたベルクソンについての論文ではいちばん優れている」と、過分なお言葉をいただきました。
これで小林秀雄から独立できた。そういう感慨も押し寄せてきました。
ベルクソンへの興味はその後も尽きず、後年にも新宿副都心の住友三角ビルにある朝日カルチャーセンターで、複数のベルクソンについての講座を聴講しました。元大学教授で現在は評論家の前田先生という方が、今でもベルクソンの四大主著の最終作『創造的進化論』を何年かかけて丁寧に読み進んでいるそうです。この前田先生、以前は小林秀雄がベルクソンに取り組んで途中で挫折した『観想』をテキストにしていたと仰っていました。ぜひ聴きたかったものですが、その時点では前田先生はおろか、朝日カルチャーセンターのことも知らなかったので、間に合いませんでした。

さあ、いよいよ次回は小林秀雄についての最終回。彼と数学者・岡潔との対談を取り上げることといたします。
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