mixiユーザー(id:5110559)

2020年03月28日20:31

125 view

国家試験合格発表

 厚生労働省のサイトで国家試験の合格発表をしている。
 3月26日。
 私の受けた三つの試験の合格者の受験番号が発表された。14時前にはリンクになっていなかった場所がクリックできるようになっているはず。
……
 10分待ってもリンクができていない。
 医師国家試験
 義肢装具士国家試験
たぶん私が受けたものより前に行われた試験なのだろう。合格者発表のリンクが上に並ぶ。私の職種はこのような人たちと同じ分野なのだ、と思うと気持ちが引き締まる。
 「14時を過ぎても合格発表が表示されない場合、ブラウザーの確認をしてください。」
 とサイトには書いてある。だから、10分は誤差なのだな、とまだ張られていないリンクを確認して思う。
 インターホンが鳴る。
 約束をしていたケアマネージャーさんが到着したようだ。
 「実は今ちょうど、試験の合格発表がはじまったところなんです。」
私が言うと
 「あ、そうなの?じゃぁ確認しなくちゃ。」
と彼女。ふんわりした雰囲気の彼女も、実は鍼灸師の免許を持っている。もしかするとケアマネージャーの資格は、鍼灸師の免許から撮ってものなのではないか、と私は思っている。
 「ありがとうございます。でもまだリンクが張られていないんです。」
 最近持ち家に戻ってきたことで私の契約の状況が変わった。そのことで書類のやり取りをしたり調整をしたりしなければならないようだ。
 福祉の現場はお年寄りとかかわることが多く、現在パンデミックが宣言された事柄に対する予防や気遣いはとても高い水準で求められているようだ。マスクをどうするのか、消毒をどうするのか。私の手続きよりもそんな話を長くした。
 「治療院を始めるならアルコールを1本なら分けられるという業者さんがいるから教えてね。」
 「ありがとうございます。いつ始めたら良いのか、この状況だとほんとうに迷います。」
 彼女が帰ったのは午後3時少し前だった。もう一度サイトにアクセスするとリンクが張られている。
 試験名を選ぶ。まず鍼師からにしよう。一番難しいと言われている免許だから。
 視覚障害があるかどうか
 都道府県。
とリンクを辿る。そして私の番号は?
 あ、あった!
 0と1が不規則に並ぶ私の受験番号。たしかにこれだったはず。
 灸師、あん摩マッサージ指圧師も同じように確認していく。すべて同じ番号で受験し、そして合格したようだ。心配になり何度も確認し、最後にはホームページをファイルに保存した。そしてそのファイルを何度も読み直す。気がつけば1時間近くが過ぎていた。
 階下に降りて家事をしたり入浴したりして自室に戻ると、担任だった先生から着信があったようだ。こちらから連絡しようと思っていたので申し訳なく思う。電話を掛け直すと
 「おめでとうございます。これで安心できましたね。これからも改行の準備は大変だと思いますが何かあれば連絡下さいね。」
 「ありがとうございます。結果が出るまではどうしても自信がなくて、まったく免許の申請書類を書いていませんでした。」
 「あはは、そうでしょう。」
 先生はいつものように力強く笑う。この先生のすべてを吹き飛ばすような力強い笑いに私は何度助けられただろう。復学してから試験までのメンタルの整え方のアドバイス。勉強の方法。的確な教授法。2年間学業を離れていた私を先生はとても丁寧に指導してくださった。良い先生に出会えたと感謝の気持ちでいっぱいになる。
 視覚障害のある者への特別な教授法がある。けれども、生徒の人数が少なすぎてそれを専門的に学ぶ人は少ない。私はわけあって三つの視覚障害のある学生のための学校で鍼師になる勉強をした。そこで働くすべての教員が的確に科目を教えることができているか?と聞かれると肯定しがたい現実がある。
 私が受験した科目数は15になるようだ。解剖学や経穴など体そのものをイメージしなければならないものは視力のない私にとって学ぶことがとても苦しい科目だった。
 社会人の視覚障がいのある者の合格率は30パーセントに満たないという厳しい現実もある。しかも、この中の点字使用者の数はほんとうに少ないはずだ。
 たしかに私はがんばった。けれども、私ががんばっただけではどうにもならない現実があったはずなのだ。どちらかと言えば最後の一念を、転校したこの学校でがんばらせていただけた。がんばることができるように私の進む道を整えていただいていた、という思いでいっぱいなのだ。私は、自分が感謝することの少ない人間だと反省してきた。けれども今、感謝せずにはいられない。人の役に立つと実感できる仕事がしたいと願い続けた私の思いがもうすぐ叶う。

 あれから二日。合格通知はまだ届かない。
 (ほんとうに合格したんだよね?)
そう思いながらこれを書いている。合格発表を見た直後に免許申請の書類を出した人もいるようだ。それと比べると私の歩みは遅い。少ない時間の中でヘルパーさんに代筆をお願いしなければならないという事情があり、思ったように書類の作業が進まないという現実がある。それでもいつかは書類が揃うだろう。いつかは開業するだろう。無理をせず、まるで呼吸をするように鍼灸・あん摩マッサージ指圧師の道を進んでいこうと思う。




4 3

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する