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2019年01月12日09:58

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ある大工


渡辺昇一「人生を創る言葉」(致知出版)より。

ある裁判官が自分の家の板塀をつくろうとして、「材料はこちら持ち、1ドル半の手間賃だけでこしらえてほしい」と広告を出した。なかなかこの条件で受けてくれる人はいなかったが、ようやく一人、やりましょうといってきた者があった。

この裁判官が、
「荒削りでざっとでいいのだよ。1ドル半しか出せないのだからね」
というと、この男は、
「よろしゅうございます」
と承知して仕事に取りかかった。仕事の様子を見ると、実に丁寧に、念には念を入れてきれいに削っている。

裁判官が帰ってくると、板塀がちゃんとできあがっていた。しかも立派なものだった。これならもう半ドル増してくれというに違いないと思ったので、裁判官は先手を打った。

「どうも念の入れすぎだなあ。こんなに丁寧にしてくれとは頼まなかったはずだが」
「丁寧にして悪かったですか」
「別に悪いわけじゃないが、いくら念を入れてしてくれても、約束通り1ドル半しか金は払わないよ」
「はい、結構でございます」
「こんな手間をかけて損ではないか」
「損は損かもしれませんが、安いからといって仕事を粗末にすると、賃金を損した上に、自分の良心を損しなければなりません。大工として仕事をする以上、仕事に精魂打ち込んで、自分でよくできたと満足しないと私の気が済みません。賃金が安いからといって、いい加減な仕事をすると、賃金を損した上に、私の性根まで損しますのでね」

これを聞いた裁判官は、いい心掛けの大工だと、その後、裁判所を建てるときに、最も信用ある大工としてこの者を推薦したという。

私もこれに似た体験をしたことがある。近所の人が家を建てたときに、ある工務店に請け負わせた。すると、ちゃんとした立派な家ができた。その代金を清算することになったときに、びっくりすることがあった。
普通、請負工事では、請け負った予算より請求金額が増えることはあっても、減額されることはない。ところが、その工務店は「この額で請け負いましたが、余りましたので」といって、何10万円も返してきたというのである。それで、その家の人が気に行って、わたしの家を建て替えるときに、「あの工務店はいいですよ」と推薦されたのである。

日本には「損して得とれ」という言葉があるが、先に損しても、それが巡りめぐって大きな得をつれて来るということは現実にあるようだ。ただし、最初から得を期待していては駄目で、この大工のように、手を抜くと自分の気持ちが悪いからといって一生懸命に働く心掛けが大切なのだろう。

そういう姿勢を見ている人がいて、ひそかに評価してくれる。それが何かの機会に得=徳となって戻ってくるかもしれないのである。








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