武田鏡村「中村天風の行動力」（東洋経済）より要約。
運命には天命と宿命がある
天風によると、運命には二つの種類がある。
1．天命
絶対的な運命で、人間の力ではどうすることもできないもの
2．宿命
相対的な運命で、人間の力で打ち開いていくことができるもの
運命にはこの二種類があるにもかかわらず、私たちは二つを混同して、すべて運命であると思い込んでいる。病気をする、事業がうまくいかない・・・・、なにもかもが運命だと思って、諦めてしまう。
天風は言う。
「人間の力では、どうにもしようがない運命というものは、たくさんあるものではない」。
どうすることもできない絶対的な天命は、たとえば男女の性別や生まれる時代などは、どうすることもできないし、生があり、死があるというのも、それは人間の天命である。
そんな天命には抗うことはできない。しかし、それが宿命であれば、人間の力で打ち開いていくことができる。では、宿命をどのようにとらえて、自分のものにすればいいのか。
天風は言う。
「自分の心を、積極的にして活きるという方に自分の心を決定しなさい。そうすればもう、天命なんてものは、極めて僅かしかない」。
つまり、心を積極的にして、常に前向きに生きるよう自分の心を導いていくことだとしている。
どうしようもないと思われる壁にぶち当たった場合に、その時の自分の心の持ち方を考えてみるがいい。「これが運命か」と絶望的な気持ちになっているなら、必ず心の持ち方が受動的・消極的になっていることに気づくはずだ。運命ということにとらわれて、振り回されているのである。
そうしたものを振り払い、前向きに生きようとすれば、運命だと思っている壁が、明るく開かれてくるはずである。
後ろ向きな生き方を反省する
後ろ向きな気持ち、消極的な心とは、どんなものだろうか。
天風は、それを二つに分類している。
�ー�己に無自覚な人
自分の人生に対する考え方が低級な人
�⊃牲于疉劼平瓦了�ち主
神経過敏すぎて気の弱い人
つまり優れた可能性を秘めている自己への無自覚さと神経の過敏さが、人生をくだらないものにしている、と天風は言うのだ。
具体的には、自分自身で人生が決められずに、易や占い、方位や日の良し悪しなどにすがっている状態である。
「迷信深い人間は、さかりのついた動物よりも下等だ」と、天風はアメリカのことわざを引いている。
天風が我慢ならないのは、自分の生き方や人生を自分で切り拓こうとはせず、他人任せで済まそうとする姿勢である。人に言われたり、昔からの言い伝えだからと無自覚に従うのは、自己という尊い存在を放棄することにほかならない。
こうした後ろ向きな生き方と決別するには、宿命を自分から統制して活き、天命に安住することだと言う。
宿命を統制するには、正義を実行して、運命を選ぶ法則を自覚することだ。正義の実行は、本心や良心の命じるままに活きることであり、それが生命の本質となる霊魂という「気」を活かすことにもつながるのだ。
感謝と歓喜のプラス感情に立て
宿命を自分の力で打開していくためには、常に心の持ち方を前向きに、積極的にすることだ。
天風は、「腹が立つことがあろうと、悲しいことがあろうと、瞬間に心から離してしまえばいいんだ。心を積極的にすることを心がけて、自分の心を汚さないようにするには、気がついたらすぐそれを拭いてしまえばいい」。
ところが、多くの人はマイナス感情が起ると、それにこだわって、なかなか手放そうとしない。
しかし、マイナス感情にとらわれていると思ったら、それはすぐさま捨て去ることだ。
天風は、マイナス感情を捨てて、明るいプラス感情は積極的に受け入れよと説く。天風は、一貫してプラス思考であり、それが宿命を前向きにするものであると断言しているのだ。
宿命を自分で打開するには、自分の心を統制しなければならない。そのために天命は、心に「感謝」と「歓喜」の感情を持つよう心がけることを勧めている。
「感謝と歓喜の心で人生を活きるのには、宇宙霊の心を、自己の心となさねばならない。宇宙霊の心は、絶対積極であり、真と善と美のみである」。
感謝と歓喜に満ちた言葉と行為は、人生に幸福という実を結ぶ種子である。また、宇宙霊の中に私たちが存在しているということは、神仏とともに私たちが存在しているということである。そのことを忘れずに、感謝と喜びの心を持って生活すれば、心は消極的になることはない。
天風は言う。
「常に最高の運命を招くべく、いかなるときにも、すべてを感謝と歓喜に振り替えるよう、積極的な態度を、心に命じて活きるよう努力しよう。これが宇宙の法則に従順に従うことになり、またそうするなら、宇宙法則も当然、我々によき運命を与えてくれるに決まっている」。
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