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2018年10月11日20:10

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モーグの新機種ポリシンセ「moog one」爆誕!!!!

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真打登場。


10 月8日、かねてから噂されていた新機種、moog one(モーグ・ワン)なるアナログポリシンセを、ついにモーグ社が発表!

国内発売未定なるも、16 音ポリ版で US$ 7,999、8音ポリ版で US$ 5,999 に達するから、デイヴスミスやなんかより遥かに上空を行く、おそらく日本では百万円コースに肉薄する価格となろう。

モーグが、ポリシンセを出すのは、じつに三十数年ぶりとなる。

詳しいスペックや外観、さらにはプリセット音色を試聴するには、下記のリンクをご参照いただくとして、ここではあくまで私見を述べるにとどめる。

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1.社運どころかシンセの命運をかけた、ものごっつい極悪にぶっとい音!!!!

まちがいなくこれは、モーグ社が、こんにち的シンセの始祖=オリジネイターとして、シンセのドンとして、マフィアなみの親分の貫禄として、そのプレゼンス復権をかけ、社運をかけ、さらには凡百のソフトシンセやアプリシンセ、特にモーグをエミュしたものに対する宣戦布告として、ハードシンセの命運すらをもかけて、
「おめーら、なめんじゃねーぞー!!」
という怒号咆哮、雄たけびをあげた回答なんだろう。
未来にもハードシンセが生き残れるよう、ハードシンセでしかありえない音を遺すべく、モーグのみならず、ハードシンセ全体の未来をしょって立ち、その全歴史をかけて、全力投球したギャンブルなんだろう。

かつて「ミニモーグ」は、ハードシンセの代名詞であった。
シンセ黎明期の '70 年代の話である。
そのことを充分に、痛いほど意識して、ハードシンセの始祖として代表者としての、宣戦布告。
それがモーグ・ワン。

ものごっつい気合の入った機種であることに間違いない。


価格設定からして、売れることは考えていない。
アドバルーンである。
たしかにモーグモジュラー復刻版は法外な値段でも完売したが、それは限定生産だったから、というコレクター向けな側面もある。
それでもあえてこのデフレなフリーウェアまんせー時代に、あえてシンセ復権の旗印となるべく、生まれてきた機種が、モーグ・ワン。
錦の旗印、爆誕。


なんでって、かつての名機メモリーモーグに似せた外観や、プロでしかありえない値段だけでなく、下記のリンクから聴ける音色が、ものすごく、いい!!!!

ぶっとい!! ぶっといだけでない、音がいい!!
メモリーモーグを今風にハイファイにしたような感があるが、CS-80 に似た音もあり、とにかくソフトシンセやアプリシンセでは、ありえない、音の太さと音圧!!

すべてのこれまでのシンセをなぎ倒すような、おそろしいまでにボルテージを感じさせる、すさまじい音色がする。
ネット越しで、圧縮オーディオで、すでにこんなに音がいいのだから、実物はとんでもねーおそろしい音がするに違いない。


かつてのメモリーモーグも、ぶっとかった! ただでさえぶっといのに、ユニゾンモードにすると凶悪だった。3基の VCO ×6音ポリで、18 基の VCO を一斉駆動できたんだから、それも後期モーグとはいえモーグのオシレーターにフィルターだったんだから、凶悪でないはずがない。
またメモリーモーグは、赤い7セグ FL 管表示がレトロフューチャーで、おっさん、こころくすぐられて、ええw

そのモーグは、メモリーモーグ以来、ポリシンセを出さないまま倒産し、新生モーグとして復活したあとも、モノシンセばかりつくってきた。それでも充分に音が太かったのだが、今度のは、モーグモジュラーを別にすれば、過去最強に極悪な音がする、とてつもないシンセ。

こんなんライヴハウスで弾いたら、出禁喰らうであろうwwww
音なんて、ぶっとけりゃいいってもんでもないのに、えげつなく極悪にぶっとくしてきやがったんだから、もうどうしようもない。

こんなにまで説得力あるアナログシンセの音を聴くのは、ひょっとしたらはじめてかもしれない。
まさしく、シンセの未来を賭けたギャンブルに打って出た機種である。

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2.ソフト vs ハード、そしてデジタル vs アナログ。

私はどんなシンセも適材適所であり、どのテクノロジーが時代遅れだのは無いと思っているが、世にこれを永遠に論争する向きは多い。

ソフトシンセのほうが圧倒的に便利であるのは、私とて認めるところ。
PC、Mac、タブレット、スマホ、などという強力なプラットフォームの上で潤沢なリソースを使い、単体ハードには真似できない音創りができる。
そして爆安、場所もとらないどころかパソコンの画面上にしか存在しない、MIDI データ修正だけで済む、オーディオトラックが不要、そしてなによりもトータルリコールに加えて、楽勝でパラメーターをオートメーションすることで自動化し、音色変化を時間軸上で演出し、なんどでも繰り返し再生でき、微修正もでき意図する結果へと緻密に追い込めるという、ものごっつい利点がある。

現にモーグ自身も、iOS アプリシンセを、いろいろ出している。自社のヴィンテモジュラーシンセをモデリングした Model 15 から、Animoog のような新機軸ものまで、さまざまにアプリシンセを出している。

しかし、そんなことモーグ・ワンは気にしていない。
なんでもできてしまう PCM や大容量サンプル音源、あるいはモデリングすらをも見切りをつけ、ひたすらアナログのハードシンセだけで、地響きするほどおっとろしい音がする怪物シンセを出してしまった。

若干の LCD によるメニュー操作はあるので、もぐってたどりつくパラメーターもある。
すべてが表に出ているわけではない。だがそれは、デイヴスミスのシンセも同じ。

なによりも、ここまですさまじい真打ちが出てくると、もう他のアナログとかアナモデとかは、まるで勝てない、まるで歯が立たない、もう太刀打ちする以前の問題で、はなから勝負にならない。

だいたい、今や、なんでもできるデジタル、なんでも手に入る高度情報化社会に疲れたひとびとは、限定されたアナログとハードとに、かえって自分自身をうつしだす鏡のような、意のままになる音色表現を、再発見したのだ。

そしてモーグ・ワンは、その真の主役たるシンセとして躍り出た。


そうなると、もはやデジタルはデジタルならではの音創りを追求したほうがいい。生楽器モデリングもいいが、そこでの成果を応用したデジタルな新しい音色がつくれるとか追究してほしい。

いっつも言ってるが、サックスの表現力を解析しモデリングできるなら、その表現力を持ったシンセリードが創りたいのだ、わたしゃ!!!!

事実、デジタルはデジタルで、デジタルでしか出せない音色や音創りを追い求めることで、デジタルならではのアイデンティティやレゾンデートルを追究する向きもある。

わかりやすいのは、ヤマハによる FM 音源への回帰と拡大再生産。
reface DX にはじまり、montage、そして先般でてきた中堅機種 MODX(海外ではモーディーエックス、日本ではエムオーディーエックスと読むらしい?)シリーズ、すべてに FM 音源を、それも過去機種からは拡大発展させたものを、さらに montage / MODX には、今までの最大規模だった FS1R 音源モジュールに搭載されていた8オペ 88 アルゴリズムのものを、まんま搭載してきた。

高山博氏による「FM シンセのあたらしいトリセツ」なる本まで出てきて、わたしゃ電子書籍で読んでるが、この期に及んでまだあたらしく学ぶことは多い。


また、脱 PCM 音源なひとびとの一部は、ユーロラックモジュラーという、あたらしいデジアナ混交世界に踏み込み、自分でカスタムメイドした組み合わせで、他人にまねできない自分だけのカラーを出そうとしている。デジタルによる変態モジュールもたくさんあるので、可能性が無限で楽しい沼w

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3.プレイヤー vs クリエイター

これも永遠の論争。
シンセをばりばり弾くプレイヤーさんと、あんまし、あるいは全く弾けないが音創りや DAW 上でのプログラミングなどにこだわって作品をつくるクリエイターさん、この二つは、じつは明確に違う。演奏と制作との違い、と言ってもいい。

プレイヤーさんは、プリセット音色だろうが自作音色だろうが、とにかくばりばり弾く。ライヴで曲を演奏するか、自宅で弾き倒して録音するか。いずれにせよ、ライヴ指向パフォーマンス指向と言っていい。
ヤマハのシンセは、明らかに一貫してずーっと全機種プレイヤーさんを対象としている。とにかく弾きなはれ。ええ音はメーカーに任せなはれ。プリセットでええさかい、なんも考えんと弾きなはれ。そんなスタンスがありありと見える、そんな声が聞こえてくる。生楽器メーカーとして、ブレない。そのぶん、音創りからすると、なんでこんなしょーもないリミッターみたいな限界を設けるのか?と思わされるところもある。

いっぽう、必ずしも弾けるわけでないクリエイターさんたち。主に宅録で作品を完成させ、ネットに成果物をアップし、場合によってはステージでライヴするも、ばりばり弾ける演奏技術が無いため、パソコンを持ち込んだり、スマホやタブレット、ミニ鍵シンセ、あるいは鍵盤すら無いフィジコンでのライヴをしたりする。
クラブ DJ からの流れでは、最近、タンテや DJ ミキサーだけでなく、グルボや 303 などを、クラブやライヴのステージに持ち込む「マシン・ライヴ」というジャンルも出てきた。

さてモーグ・ワン。
プレイヤーはもちろん、クリエイターにとってもロールスロイス、それがモーグ・ワン。
こんなん出されたら、今までクリエイターにも目をくばりながらアナログシンセを出してきたコルグやローランドは涙目であろう。
デイヴスミスこと新生シーケンシャルは、もっとやばいが、まだ価格帯が違うので、少数精鋭でもって小回り利かせてサバイバルするかもしれない。
ヤマハは、プレイヤーしか相手にしなかったために、デジタル化が進みすぎて、もはや話にもならない、関係ない別世界であろう。

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4.プロにしかゆるされない名機の再来

モーグ・ワンは、かつてプロしか手が出せず、トーシロは指くわえてながめ、あこがれるしかなかった名機の再来。
価格帯といい、音といい、アマが出を出すと「やけどするぜ!!」という、真紅の灼熱に白熱したシンセ。
往年のプロ5や CS-80、Jupiter-8、イーミュレーター、DX1、VP1、The Wave、OASYS くらいまでか。まぁ、たしかに今でも Solaris とか、最近出てきたばかりの waldorf Quantum とかあるが、せっかく多彩な音がするのに、バグや出音の説得力において、消し飛んでしまいそうだ。フェアライトやシンクラは、どだい違いすぎるので論外。Hartmann 20 は、2万ユーロもしたが、たった 20 台の限定生産だったので、もはやコレクターズシンセであり、位置づけが違いすぎ。

まさにプロか、せいぜい極超ハイエンドアマ向け、伝説的にええ音するのに高すぎて買えなかったあこがれの名機というカテゴリーの再来。誰がそんな機種の誕生を予想したであろう。少なくとも私は、予想していなかった。
こうなったらもう、わたいら庶民のおっさんは、指くわえ、せいぜい背伸びしてデイヴスミスの新生シーケンシャルへ、それもがんばってがんばってがんばってがんばって背伸びして行くしかない。
お小遣いためてる少年少女は、コルグのローグ・シリーズやヴォルカへ行くだろう。権利侵害で訴えられる常習犯ベリなんか、子供たちのヒーローだ。
好事家は、ユーロラックな沼(笑)へ行く。
ちかごろの若い子らのライヴステージを見てると、ローランド JD-Xi などをひんぱんに見かけるので、ああいうちっちゃいかわいいグルボなキーボードも大アリ。

そしてふたたびの、モーグ・ワン。
爆誕を宣言する公式動画に、いきなり教授が、つまり坂本龍一氏が出てくるし、'70 年代の元祖「シンセ女子」スザンヌ・チアニも出てくるという、これまた重鎮ぞろい。これもまた、日本をふくめ、重鎮な人々に向けたプロしか眼中にないマーケティングであろう。ハイアマは、買う人もいるだろうが、無理めっぽい価格がよけいにほしさをかきたてるが、大半は手が届かない。でも、あこがれる。
教授も、こんだけ同時発音数が多くて、しかも大好きだと本人が言ってはばからないアナログシンセの音が、それも理想的な音圧がぎゅうぎゅう詰まった、えげつない音が出てくるのだから、きっと買って使い倒すであろう。映画「ブレラン 2049」などをはじめ、重量級アナログシンセの音が劇伴に多用される昨今、きっとこれは、あらたなる歴史的名機として、かたりつがれるあらたな伝説となり、神話となるであろう。


かつてシンセは、一部の特権階級にのみゆるされし存在であった。
それをテクノロジーが万人に開放し、民主化が進んだ結果、誰でも手にできるフリーウェアにまで至った。

そんな時代に刃向かうように、モーグ・ワンは、老舗中の老舗が放つ主砲、その号砲一発、皇帝が君臨する時代の再来である。

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島村楽器での情報:
https://info.shimamura.co.jp/digital/newitem/2018/10/126713

上記サイトの文中に「3つのコアのアナログVCO」とあるのは誤訳で、正確には「トライアングル・コアの VCO が3基」と訳すべき。
トライアングル・コアの VCO とは、三角波をベースに他の波形をつくりだす回路のオシレーターであり、三角波からきれいなサイン波を出せるため、クロス変調とかもきれいな音になる。
世の中には、ソウ・コアというのもあり、鋸歯状波をベースに他の波形をつくるので、回路が簡単になってコストダウンをはかることができ、ヴィンテっぽい汚れた音になる。

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モーグ社 英文公式サイト:
https://www.moogmusic.com/products/moog-one

リアパネルに LAN 端子がついているのだが、これは将来、かなり深いところまで接続して使う拡張機能のために、つけているらしい。

そして同じくリアパネルの機種名プレートに
「Moog Music Is An Employee Owned Company」
と書いてあるのが、すばらしい。
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新生モーグ社は、じつに株の半分を社員にタダで譲渡しており、それを使って社員は資産運用したり、退職時に売却して儲けたりできるという、すばらしくモチベーションが上がる仕組みを導入してるんよねー。日本企業にありがちな、ただの持株会とかとは大違い。

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