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2016年10月10日06:01

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七つの大罪と四終(The Seven Deadly Sins and the Four Last Things)・・

七つの大罪と四終 1475-1480年頃

(The Seven Deadly Sins and the Four Last Things)

120×150cm  油彩・板

プラド美術館(マドリッド)

初期ネーデルランド絵画の中で最も異彩を放つ

巨匠ヒエロニムス・ボス初期の代表作『七つの大罪と四終』。

スペイン国王でヒエロニムス・ボスの熱烈な愛好者であったフェリペ二世に所蔵され、

エル・エスコリアル宮殿内の自身の居住区に飾られていた本作は、

元々テーブル画として描かれた円形画であり、

主イエスと銘文「汝ら心せよ、主は見そなわし給う」を中央に、

キリスト教において七つの大罪とされる

「憤怒」、「嫉妬」、「貧欲」、「大食」、「怠惰」、「淫欲」、「傲慢(虚栄)」を円を描くように配し、

その四方には「死」、「最後の審判」、「天国」、「地獄」を配した構図が用いられている。

その何れもヒエロニムス・ボス特有の解釈による大胆な場面表現が示されている。

主イエスの真下には「憤怒」として争う人間を、

その左には2匹の犬が骨を奪い合い敵対するというフランドルの諺を引用し「嫉妬」を、

その左には権力者である裁判官の収賄場面から「貧欲」を、さらにその隣には

テーブルに溢れる食物を貪る大男の姿で「大食」を、

教会へ向かうべく正装した女性が眠り耽る男を起こす場面で「怠惰」を、

二組の男女が音楽や道化と戯れる姿で「淫欲」を、

悪魔に与えられた鏡と向き合う女性の姿で「傲慢(虚栄)」を表現している。

また本作に描かれる「七つの大罪」場面の上下には、

旧約聖書の「申命記」から訓戒的な引用文「彼等は思慮に欠ける民、

洞察する力がない。もし彼等に知恵があれば悟るだろう。

自身の行く末も悟ったであろう。(上部)」、

「わたしは、わたしの顔を隠し、

彼等の行く末を見守ろう。(下部)」が記されている。
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患者の石の切除(愚者の治療・いかさま)

(The Extraction of the Stone of Folly) 1475-1480年頃

49×35cm  油彩・板

プラド美術館(マドリッド)

初期ネーデルランド絵画史で異彩を放つ画家ヒエロニムス・ボスの作品において

帰属論争の絶えない代表的な作例のひとつ『患者の石の切除』。

≪愚者の治療≫や≪いかさま≫とも呼ばれる本作に描かれるのは、

当時のネーデルランドで流布した寓話≪患者の石の切除≫で、

摘出される(本来あるはずのない)頭の中の石は大衆の無知や愚かさの意味し、

大衆の無知や愚かさを利用し利を求める打算に満ちた医師は、

高い教養者と社会のモラルの欠如を示している。

上部の銘文「Meester snyt die Keye ras, myne Name is Lubbert, das.」は一般的に

「先生、早く頭の中の石を切除してください。私の名前はルツベルト・ダスです。」

と解釈される。

その様式から本作をヒエロニムス・ボスの帰属を主張する研究者の殆どは

初期作品との見解を示す一方、後世による模写と主張する研究者も少なくない。
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干し草車 (The Haywain) 1500-05年頃

135×190cm   Oil on panel

Museo del Prado, Madrid

ヒエロニムス・ボス作品の熱心な収集家であった

16世紀スペイン国王フェリペ2世が手に入れた、

快楽の園と並ぶボスの代表作『干し草車』。

閉扉面に描かれる≪放蕩息子≫、開扉面左の≪エデンの園(原罪)≫、

開扉面中央の≪干し草車≫、開扉面右の≪地獄≫と、

4つの世界から構成されるこの祭壇画の主題は、

旧約聖書の預言書であるイザヤ書からとの見解もあるが、

当時のフランドルの諺「この世は干し草の山であり

 誰もがありったけを掴み取ろうとする」という説が

今日では今日では有力視されている。

本祭壇画で特筆すべき点は、

中央部分に細密な人物描写によって描かれる≪干し草車≫で、

祭壇画全体の図解は、原罪を持った人間が、

自己の欲に従う愚行を重ねた後、

地獄へと至る運命を意味していると推測されている。

また干草部分には我先にと干し草を掴み取ろうとする(物欲にまみれた)

人間の姿が描かれるほか、怠惰、強奪、愛欲などの罪を犯す人々の姿も描かれる。

さらに画面上部には下界(世界の全て)を見下ろす天上の神(父なる神)の姿が配されている。

なお閉扉面に描かれる≪放蕩息子≫はこの世の悪に染まる人間との見解もあるが、

一般的には神なき愚行の世界を憂い逃れんとするキリスト教信者だと解釈されている。
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