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2021年05月10日02:14

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映画『ジェントルメン』作品レビュー(2021年5月7日公開)

映画『ジェントルメン』作品レビュー(2021年5月7日公開)

 これぞガイ・リッチー。1998年、ロンドンを舞台にした若者の群像犯罪映画「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」の快感に酔った人には嬉しい“帰還”とうつることでしょうね。
 
 その後の2002年に当時の妻である歌手マドンナの主演でリナ・ウェルトミューラー監督の『流されて…』をリメイクした『スウェプト・アウェイ』を監督したが全くヒットせず、夫婦揃ってゴールデンラズベリー賞を受賞してしまったかと思えば、「シャーロック・ホームズ」は大当たりしてシリーズ化。当たり外れの差が大きいガイ・リッチー監督。今作は原点回帰して、デビュー作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」を思わせる、アクの強いクセ者が入り乱れる犯罪物語です。

 冒頭のイントロからして凄くスタイリッシュでした。主要出演者がタバコの煙のようにスパっと現れて、モクモクとと消えていく映像は、このだまし合い作品のプロローグとしてふさわしく、一気に作品世界に引き込まれました。

 舞台は監督にとっての再びのロンドン。物語は、主人公となる麻薬業界の大物であるミッキー(マシュー・マコノヒー)がいきなり襲撃されるという衝撃的なシーンからはじまります。
 そこからミッキーの腹心の右腕であるレイモンド・スミス(チャーリー・ハナム)が帰宅するシーンに変わります。そこには私立探偵のフレッチャー(ヒュー・グラント)が待ち構えていて、ミッキーに関わるスキャンダルの調査結果をまとめたものを、レイモンドに突き付け、2000万ポンドの支払いを要求するのでした。
 
 レイモンドに調査を依頼したのはタブロイド紙の編集者だったビッグ・デイブ(エディ・マーサン)。デイブは、あるパーティーに参加したしたとき、居合わせたミッキーに挨拶をしようとしたのですが、ミッキーはデイヴを無視したのです。腹を立てたデイヴは探フレッチャーを雇い、ミッキーとプレスフィールド卿(サミュエル・ウェスト)
の関係を調査させることにしたのでした。彼の娘、ローラ(エリオット・サムナー)はヘロインに依存しており、ミッキーと何らかの繋がりがあるのではないかと疑ったからでした。
 
 こうして物語は、レイモンドにネタを売ろうとするフレッチャーの語りで展開されていきます。それは、ネタを元に映画化を考えたフレッチャーによる虚実を交えた脚本を元に劇中劇のような趣きです。時折フレッチャーの開設とそれに対してレイモンドが突っ込みを入れるという掛けあいが混じっていきます。この辺のストーリーテリングでは、タランティーノ好きな人にとっては、なにか似ている感じがするかもしれません。

 そして物語は過去に遡って行きます。ミッキーはアメリカの貧困家庭で生まれ育ちましたが、勉学に秀でていたために、奨学金を得てオックスフォード大学に進学しました。在学中、ミッキーは裕福な家に生まれ育った学生たちにマリファナを売るビジネスを始めたのです。ビジネスにのめり込んいったミッキーは大学を退学し、そのまま裏社会でのし上がっていくのでした。その後、階級社会の歪みを突き、貴族らの豪邸の維持費負担と引き換えに敷地の地下に秘密の農場を作って大麻の栽培・販売するビジネスを成功させたのでした。
 
 けれどもここ最近、ミッキーは殺伐とした裏社会に嫌気がさしてきており、引退して妻のロザリンドと一緒に平穏に暮らしたがっていたのです。そこで彼は自分が一代で築き上げたビジネスをアメリカの富豪、マシュー・バーガー(ジェレミー・ストロング)に4億ポンド(500億円)で売却をもちかけたのでした。
 
 こうしてミッキーが、事業の売却を決めた途端、利権を狙ってワルたちが群がってくるのです。富豪のユダヤ系のマシューや悪徳私立探偵のフレッチャーばかりでなく、中国マフィアのドライ・アイ( ヘンリー・ゴールディング)やロシア系のマフィアまでもが暗躍を始めます。

 そのなかで、ドライ・アイに唆されてミッキーの秘密の農場を襲撃してしまったスラムの不良たちを巡り、彼らの更生に奔走する格闘技コーチ(コリン・ファレル)が、レイモンドに、お詫びとして組織の仕事を引き受けたいと申し出たのでした。コーチは、不良たちを動かして欲に走るワルどもを蹴散らし、後始末つけていきます。本作の一流のワルとワルに仕える者たちは、あくまで紳士にして、惚れ惚れするほどカッコいいのです!
  
 ただ本作は、冗舌でせわしない感じを強く持ちました。フレッチャーが映画の脚本用と言いつつ事細かに語る物語は、多くの登場人物と彼らの思惑が錯綜して複雑怪奇です。それでも筋立ては方々へ跳びはねて観客を幻惑するものの、振り落とされる寸前で本筋に戻るかじ取りが巧妙です。緻密な構成と編集でテンポ良く運んで緩みがありませんでした。
 緻密な構成と脚本はリッチーの得意技。時系列や多人数のエピソードをシャッフルし、パズルのようにつないでいく構成や味わいは、どこを切ってもリッチー節。スピーディーな展開と編集、映像、軽妙洒脱な語り口、リズミカルなセリフ回しなどすべてがスタイリッシュです。過激なシーンも笑いのネタにして下品に堕すことがありませんでした。

 監督も年をとり、キャストもおじさんになった。経験と成熟が、昔の鋭さや威勢に洗練と渋みを加えた大人の映画へと変えたのだと思います。 評論家によっては、キャラクターやプロットは“作り物”感が過剰で、笑いは誘うがヒリヒリするようなスリルは乏しいと評する人もいます。ただ普通の映画ファンとっては、本作に折り込まれた悪党たちの右往左往とだまし合いにより、二転三転してゆく驚きのストーリー展開を、深く考えずにゆったり楽しむべきだと思うのです。まぁ〜リッチー監督ならではのご都合主義も味のうちとしておきましょう。
 
公式サイト
https://www.gentlemen-movie.jp/





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