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2020年01月18日01:14

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映画『太陽の家』作品レビュー(2020年1月17日公開)

映画『太陽の家』作品レビュー(2020年1月17日公開)

★★★★★特選
 本日公開の映画を4本続けてみてきました。見た作品は『ジョジョ・ラビット』『記憶屋 あなたを忘れない』『太陽の家』『ラストレター』です。
中でも『太陽の家』には予想外に大感動!久しぶりに映画でボロボロと大泣きしてしまいました。『ラストレター』はストーリーがイマイチ期待にかないませんでした。別途感想をアップします。
 
 『太陽の家』は、ミュージシャンで、ドラマ「とんぼ」や『英二』などで俳優としても活動してきた長渕剛が主演を務めるヒューマンドラマ。タイトルからてっきり介護ドラマかと思ったら、大工の棟梁とある母子との交流を、家族や弟子たちとのエピソードを絡めながら描いた作品です。長渕剛は20年振りにスクリーンに蘇ることに。
 本作でグッときたのは、長渕剛の芝居の上手さ。案外地で演じているのかもしれませんが、職人肌の大工の棟梁役にドンピシャリとはまっていたのです。ポンポンと威勢良く飛び出す啖呵には、寅さんを彷彿させる勢いといなせさ、つまり男気があり粋であり、心意気のあることをたっぷりと演じてくれました。なかでも困った人に差しのべる優しさは、感涙もの。数々の名曲をリリースしてきた長渕の楽曲には、繊細な歌詞の中に常に大切な人への愛が綴られてきました。その思いがそのまま本作の演技にも込められていたのです。長渕がデビュー40年の節目に、自分の良しとする生き様を思う存分披露した本作は、長渕のファンならず、全ての映画ファンに俳優・長渕剛の姿が、新たな伝説を生み出すことになるでしょう。
 
 長渕とともに注目なのが、権野監督の存在。長渕だけでなく、出演者全員が共通していてスピード感のある台詞の応酬をしていて、まるで落語の人情噺を聞いているような感覚になってきます。この絶妙な間の取り方でメガホンをとっているのは山田洋次監督ぐらいでしょう。その山田監督の絶妙な演出手法に一番近いのは、本作の権野監督だと思います。権野監督は近年『相棒』シリーズの演出で頭角を現してきており、シリーズの大半と重要回の演出を橋本一監督と分担するまでになりました。『相棒』シリーズの演出でも、人間関係の緻密な描き方に注目していたのですが、本作でその緻密なところが一段と磨きがかかり、長渕の演技を自然に引き出しました。
 
 物語は大工の棟梁・川崎信吾(長渕剛)が、いつものように弟子の入江たちと現場で仕事に励んでいるところに信吾の好みのタイプの保険会社の営業ウーマンが通りかかったことから始まります。
普段は強面風な信吾は、やんちゃで人情味の厚い男。ひとたび現場で木と向き合えば、神業的な腕を発揮し、職人気質なオーラを放つ存在でした。けれどもそこは男!好みの女性には少々弱かったのです。しっかり者の女房・美沙希(飯島直子)と年頃の娘・柑奈(山口まゆ)と共に幸せに暮らす信吾でしたが、女ごのみと人情に厚いところがたたって、何度も美沙希を激怒させてきた実績がありました。 
 なので、好みのタイプの営業ウーマンとの出会いは、すわ不倫になってしまうのかと波乱を感じさせてくれるはじまりとなりました。
 
 そんな彼女の名前は池田芽衣(広末涼子)。独身だと思っていた芽衣には、龍生(潤浩)という名の息子が一人いたのです。父親を知らずに育った気弱な少年・龍生が気になる信吾。俺が男にしてやる!とばかりに、信吾の血が騒ぎます。半ば強引な信吾になかなか懐かない龍生でしたが、徐々に男同士の触れ合いができるまで心を開いていきます。そんな折、信吾はこの親子に家を作ろうと思い立つのでした。それが本作のタイトルとなる「太陽の家」。でも、そんな父親の様子にどうも納得がいかないのが、娘・柑奈でした。信吾にべったりの龍生に嫉妬して、怒りを信吾にぶつけます。柑奈が嫉妬するのには、信吾の家族にはネタバレできない特殊な関係があったからなのです。
 娘と妻と信吾の一番弟子の高史(瑛太)。しかし周りの不穏な空気も気にせず、家づくりに没頭する信吾の前に、突如龍生の父と名乗る男が現れて、さすがの信吾も龍生をどうすべきか迷います。
 柑奈や高史と大喧嘩したときに見せる信吾の男気、そして実父の登場でも、父親以上の存在として信吾の元を離れようとしない龍生いたいけさ、そんな龍生を諫める信吾の優しい気持ちにグッときました。
 単純だけど実直な一人の男の「愛と優しさ」が、不器用で臆病な少年の心を成長させていく本作は、人と人との「愛」と人への「優しさ」を爽快に描くものでした。本年度最高の邦画作品感動作としてお勧めします。



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