美空ひばりの新曲をAIを使って、映像も歌唱も新たに再現してみようというNHKのプロジェクトがあり、それが放送されて、それなりに反響があったことを別項で記した。NHKで先日もほぼ同じ放送があり、それはどうも、年末の紅白歌合戦の特番コーナーで、美空ひばりをやる予定をしているだからのようだ。
美空ひばりの歌のAIによる復活についての評価はおおかた、この記事で記したことと似ていた。歌はそうとうひばりの歌唱に近づいていて、素こそよかったぞと。だが、映像はなんやかんやいってもあれでいいのか。というものだった。
やはり、映像ではすでに、現在上映中の「アナと雪の女王2」にみるように驚異的な感情と表情の表現が完成の域に達していて、それが例え似すぎることの弊害を危惧したとしても、誰もが物足りないと思ったようだ。
歌の方だが、これは昭和の歌の女王といわれた、天才中の天才美空の歌唱の表現が難しいとはいえ、放送にあったようにすごい時間をかけて、手で微調整を加えなければならない姿をみると、難しいんだな、とうなってしまう。
さて、そこで、表題の番組だ。14日、日本テレビで「紅白歌手と最新AIによる前代未聞のガチ歌バトル!!」が放送されたのをみた。
紅白歌手というのは、演歌歌手の丘みどり。一方はマイクロソフトが研究しているAIのディープ・ラーニングを使って実現しているという「AIりんな」で、すでにエイベックスからデビューしているのだという。
すこしだけ、このAIりんなにプロジェクトチームが、歌を学ばせていく過程を報じている。ゼロから、声を覚えさせ、自分で何かことばを発せられるようにし、歌詞を語らせる。メロディーを覚えさせ、歌のジャンルに応じた表現を覚えさせ、徐々に詞と曲を統一させていく。
番組では、課題曲を双方に歌わせた。さらに双方の自信曲を歌わせ、ゲストの審査員が「どちらか」を選ぶというものだった。
課題曲対決では、MISIA「Everything」、自由曲対決では、丘みどりが安室奈美の「CAN YOU CELEBRATE?」、AIりんなは一青窈の「もらい泣き」を歌った。
注目はAIりんなが、はたしてどう歌ってみせるのか。こんなやつ、失礼!、とみんなの目の前で対決してみせる勇気をどう貫くのかという丘みどりの姿だ。
結果は、幸い?審査員全員の旗を獲得したということなのだが、AIりんなの歌唱については、いちように驚愕の声を漏らしたことである。歌唱表現の完成度は揺るぎがない。つまり、それが命ある人間だとすると、発声とその場その場での表現の確かさに貫かれているという感想だ。
いわば、人間でないロボットなのだから、そうなのだろう。
息する人間はそうはいかない。個性としての音域の制限もあり、苦手・不得手もある。そこをプロの歌手として、どうカバーして歌い切り、視聴者に弱いところをプラスに感じさせるように表現するかだ。
どうも、この度の番組でも、審査員の見る目は、そこにいったようだった。
歌う相手がどんな人で、どういう表情で、どんな素振りで歌うのかというビジュアルな点を完全に取り去り、純粋に歌だけをぶつけた場合に、人はどう判断するのか。それは確かに、歌が正確に歌われいるかなのだが、この歌と人間の関係においては、正確さをもとめながらも、人間が持つ特有のエラーと思しき要素が、聴く人に微妙な感情をかぶせるような関係があるようだ。
ややこしいと思うが、カラオケバトルのように、審査が機械(カラオケマシン=AI)だったらどうか、ということだ。ややもすると、カラオケAIがAIりんなに歌わせている(歌っている)AIと裏でつるんでいるかもしれない。そうなりゃ、判定の意味はどうなるんだぃ。
あるいは、この記事で筆者が「こんなやつ」とうっかい口にだしてしまったことを承知しているかもしれない。すると、AIから見たこんなやつの思いを叶えないように、などど、AIは意思をもたないふりして、判定をくだすかもしれない。またはどっかで、誰かに忖度までしかねない。。。いや、これはさすがにうがち過ぎかな。大変失礼しました。AI殿。。。
たいへん考えさせる番組だった。
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