放送停止命令‼

ちょっと前に起こったおはなし。

5月5日にフィリピン最大手の放送局のABS-CBN社がテレビ・ラジオの放送を突然停止した
放送免許の期限切れにより国家通信委員会（NTC）が放送停止を命令したのがその理由

うっそ〜

フィリピンには主な放送グループが３つあり、その中でABS-CBN社は最大手になる。視聴率でいうと全体の５０％以上を占めており、存在感という点では日本で例えると在京キー局の半分が放送を停止したくらいのインパクトがあるだろう。
日本の常識ではにわかには信じがたいようなとんでもない話

ABS-CBNの放送免許は、今年の3月末で25年の有効期限を迎えていた。この免許の更新問題がにわかに脚光を浴びたのは昨年12月にドゥテルテ大統領が『免許更新を認めない』と発言したことに始まる。
同社は麻薬撲滅政策などで政権の政策に批判的な報道をしてきたことに加え、自身の大統領選のキャンペーンで費用を徴収しながらコマーシャルを放送しなかった（後日CEOが事実として認め謝罪）こと等もあり大統領は同社に対して思い切り怒っているわけ

これを受けて、司法省訟務長官室も『ABS-CBNのようなメディア会社に外資が出資していることは憲法違反』（確かに外資出資規制はあるが、いままでは黙認されていた）として、今年2月に免許取り消しを高等裁判所に請求していた。

そうはいっても誰も放送が停止になるとは思っていなかった…

まずは5月4日まで暫定的に免許が延長され、下院で免許延長審議が継続していた。
NTC委員長は3月には『下院の審議が続く限り、暫定免許が付与されるだろう』と発言していたんだけど、彼が豹変して放送停止を命令したわけ
ウラでは政府側の某氏が放送停止に向けて暴走したとかいろいろな噂があるが、真相は不明

もちろん放送停止は国民の利益に大きく反する。
さらにCOVID19でタイムリーな情報共有が何よりも必要とされている時期に、いったい何を考えているのやら
ちなみに同社は今はインターネット経由である程度の放送はやっているらしい。

政府の人権委員会も声明の中でパンデミックの危機下で信頼できる情報源を失う影響の大きさを強調したうえで『表現の自由に悪影響を及ぼす今回の決定を深く憂慮している。政治的な気まぐれがメディアの運命を決定してはならないことは民主主義において重要だ。疑惑のある違反はすべて法律に基づいて処理されるべきで、法律で認められている保護はABS-CBNにも同様に適用されるべきだ』と政府側の対応を批判している。
国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナルのフィリピン事務局長は『メディアの自由に対する法外で無謀な攻撃だ。人々は独立した情報源からの正確な情報を必要としており、政府はABS-CBNの放送を維持するために直ちに行動し、報道の自由を抑制する試みはすべてやめなければならない』との声明を発表した。
そりゃぁ、そうだよな…

放送停止を受け、下院は5月13日に10月末までの５カ月間の暫定的放送免許を与える法案をスピード承認した。今後25年間の免許更新は暫定放送期間中に時間をかけて審議する予定とされている。
この暫定免許法案は、上院承認⇒大統領の署名を経て成立する。
大統領も今は「署名を拒否しない意向」を表明しているので、すぐにでも放送再開が期待されていたが、今になってもまだ再開されていない
なんか、審議の過程でいちゃもんをつけた勢力がいるらしい。

自分はネットで日本のテレビしか見ていない（現地の一般放送を見ることができない）から実害はない。
もちろん一般の国民にとっては大変なことなんだけど、なんでこんなことになるのかねぇ…恐ろしい国だなぁ