プロローグ��
「なんじゃ、ニコ。もう食べ終わったのか？早いのぉ〜」クマさんがそう言うと
「あたしが食べるの早いんじゃなくて、
クマさんの食べる量がハンパないのよ〜」
と、半ば呆れ顔でニコが言った。
「およよ、そうじゃったかのぉ〜」と、クマさんはニコから一足遅れて完食すると、食器を下げ珈琲の準備を始めた。
遠くで聞こえる珈琲豆を挽く音、
ドリップする時の蒸らしで立ち昇る香りのなか、
ニコは自分の意識が遠のいて行くのを感じていた。
ここ数日、絵が描けなくなった不安から、良く眠れていなかった所に、食べ慣れない量のスパゲッティーでお腹がパンパンに膨れて、眠気が急に襲って来たのだ。
「ニコ、珈琲がはいったよ・・・と、ありゃりゃ？」
クマさんが珈琲を運んで来た頃には、ニコは眠りに落ちていた。
クマさんはテーブルに突っ伏したニコにブランケットを掛けると隣に座り、珈琲を飲みながらニコの持って来たスケッチブックに手を伸ばした。
「ふう〜む・・・」クマさんがスケッチブックに見入っていると、玄関のドアがパタンと鳴って「ただいま〜」と、声がした。
「あらあら、ニコちゃんが来てたの？」と、現れたのはクマさんの奥さんのクゥーさんだった。
「大きくなったわねぇ〜」と、クゥーさんはニコの顔を覗き込むと、「寝顔は小さい時と変わらないわね」と、目を細めた。
「朝食を抜いて来たって言うから、スパゲッティー食わしたら寝ちゃったんだよ」クマさんがそう言うと「食べさせすぎたんじゃありませんか？」とクゥーさんが聞いた。
「そうでもないぞ、ちゃんと頭の大きさを手で計ってだな」とクマさんが答えると、クゥーさんは「頭の大きさの1/2が胃の大きさの目安って、それはワンちゃんの話しですよ」と、呆れ顔で言った。
「そうだったっけ？」と、トボけるクマさん。
その傍らで眠りこけるニコに向かって「大好きなクマジィジのムチャ振りに頑張ったのね、ニコちゃんは」と、クゥーさんは優しく語りかけた。
「そう、そこなんだよ。」クマさんはそう言うと、ニコのスケッチブックをクゥーさんに差し出した。
「あら、上手に描けてるじゃない！」と初めは明るい表情を見せたクゥーさんだったが、次へ次へと観ていく内に表情が曇りだした。
「クマさん、コレは・・・」と言うクゥーさんに「クゥーさんも気付いたかい」とクマさんが言ったのだった。
続く
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