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2020年08月10日21:13

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『メロンはいかが?』第1話

 『聖闘士星矢』の二次創作で聖戦後復活設定。ただしオリキャラ多めです。
 オケアノス神、アケローオス河神、エウリュノメ女神のオケアノス一家がサガとカノンと一緒に星の子学園にメロンを持ってきて、沙織さんと星矢と瞬とわちゃわちゃする話。今まで頭の中に断片的なネタとしてあったものを一つの話にまとめたものです。
 オケアノス神と双子たちのオリジナル過去設定は『雪解け』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3484101を参照。アケローオス河神は『ハルモニアの首飾り』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3513947が初出なので参照。エウリュノメ女神は『2010年双子誕AnotherStory』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5356268に、彼女の夫のオフィオンは『海龍の冥界行』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4033165にちょこっと出てきてます。
 ギリシャ喜劇だとアケローオス河神のことを「竜神様」(河とか水の神様だから)と日本語訳してるものもあるので、彼の着てる「竜神」Tシャツは自己紹介のつもりなのかも…。
 エウリュノメ女神はゼウス神との間に「優雅の女神たち(カリテス)」を産んでますが、この「優雅の女神たち(カリテス)」、数は三人だったり、二人だったり、メンバーの顔触れも諸説あります。母親もヘラ女神とする説もあったりで、私の設定では「オリンポスの宮廷に仕える女官の総称が『優雅の女神たち(カリテス)』」ってことにしてます。
 エウリュノメ女神と夫のオフィオンがオリンポスに住んでいて、クロノス神とレア女神に追われた…という話は『アルゴナウティカ』に出てきます。彼女がオフィオンとの間に「宇宙卵」を産んで世界を創造したという話もありますが、これを語ってるのは「あの」ロバート・グレイヴスなので、彼の創作の可能性大…。でもオフィオンの頭を蹴り潰す話は強烈で好きなので、採用wアルカディア地方には半人半魚の姿をしたエウリュノメ女神の神像があったそうです。
 ゼウス神と喧嘩したヘラ女神が「実家に帰らせていただきます!」とオケアノス神のところに戻ってくる話は、オウィディウスの『祭暦』に出てきます。神々がアイティオピアに行く話は『イリアス』『オデュッセイア』に載ってます。
 アケローオス河神が歌ってるのは唐代の詩人・李賀の『蘇小小歌』です。
 城戸光政のあの実子の数は、「最愛の妻が亡くなってからはっちゃけちゃった」白河天皇パターンと解釈しましたw
 しかし『蟹食う人々』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12313630では蟹を持ってきたり、『アルペイオス河神の話』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10712879では肉を持ってきたり、今回はメロンだったり、何かとオケアノス一家が食べ物を差し入れてくれるのは、きっと彼らの属性が「豊穣」(アトリビュートが果実や神酒を出す「豊穣の角」)だから。まあ聖域の人たちは大食らいが多そうだから、助かってるし、喜んでるとも思うけど。
 おまけでアケローオス河神とサガが「大人のお馬さんごっこ」をする話を書く予定。
 追記:おまけを書きました。『メロンはいかが?おまけ』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13577277(R-18です)

『メロンはいかが?』第1話

 ある夏の良く晴れた日のことだった。
 女神アテナの化身たる城戸沙織は日本に帰っており、星矢と瞬を連れて「星の子学園」を訪ねていた。姉・星華とともに幼い頃を過ごした「星の子学園」は、星矢にとって大事な「我が家」だった。今でも彼は学園とそこにいる孤児たちのことを何かと気にかけ、日本にいる時は手伝いに訪れる。そして沙織もまた星矢のそのような気持ちを尊重し、折につけては子供たちに衣類や食べ物を差し入れし、必要なら金銭も援助しているのだった。
 そしてその日も、星矢と瞬は美穂を手伝って「星の子学園」の清掃や洗濯をし、沙織は絵を描く女の子たちの遊び相手を務めていた。
 その時。
「ごめんくださ〜い」
 明るい女性の呼び声が、入り口の門から聞こえてきた。
「こちらにアテナ…、え、と、キド・サオリ嬢はいらっしゃいますか〜?」
「あ、はい…」
 名を呼ばれて、沙織は訪問者を出迎えようとした。庭に面した窓から降り、サンダルを履いて、門に向かう。
 門には、一人の女性が立っていた。大きな麦わら帽子をかぶり、フリルがついた白いカットソーに、青い薄地のフレアスカートを履いている。足はサンダルで銀のアンクレットを飾っており、白い腕先にもやはり銀のブレスレットをしていた。首元には夏用の薄いスカーフをかけている。とても上品で優雅な、いかにも上流に属していることを思わせる女性だった。
 ただ普通の女性と違ったところがあるとすれば、髪の色が染めたような紺青色だったことだ。紺青の巻き毛を肩に垂らし、顔の中では丸い青緑色の瞳が生き生きと輝いている。十代後半に見える顔立ちもとても愛らしく、出るところと引っ込むところがバランス良くついた肢体といい、そのまま雑誌のモデルになれそうだ。
 沙織が出てくると、女性は手を上げた。
「はーい!トリトゲネイア、久しぶりね!」
「え、ええ!?」
 訪問者の姿に沙織は驚いた。沙織のことを「アテナ」の異称で呼んだこの女性は…。
「エウリュノメ…伯母様!」
「うっふふ。元気そうね。うーん、相変わらずメーティスに似て美人ね〜」
 エウリュノメと呼ばれた女性は笑い、沙織を抱き寄せると両頬に一回ずつキスをした。
 思わぬ再会に沙織は喜びつつ、戸惑った。大洋神オケアオスの娘にして、アテナの母である知恵の女神メーティスの姉に当たるエウリュノメ女神が、なぜ地上の孤児院の前にいるのだ?
「どうしてこんなところに…」
「実はね〜。アイティオピアにあるうちの荘園でメロンがたくさん穫れたのよ。それでね、知り合いにおすそ分けして回ってるの」
「はあ…」
 意味が良くつながらない状況説明に、沙織はあいまいに相槌を打った。
 アイティオピアというのは、ギリシャ神話で世界の南の端、世界を環流するオケアノスの流れのほとりにあるとされた理想郷の名前だ。そこの住民たちは敬虔で神々にも愛され、時に神々はオリンポスからアイティオピアに行って保養するという。現実世界にある「エチオピア」という国名の語源でもある。だがそのような神話的な要素にも関わらず、会話の内容は農家の気さくなおばちゃんそのものであった。
「で、せっかくだから、あなたの聖域にもメロンを持って行こうと思ったのよ。ほら、最近、アケローオス大兄様が良く顔を出してるらしいじゃない?それならちょっと挨拶が必要かな〜と思って」
「ええ…まあ…」
 オケアノス神の長男で「河の王(クレイオン)」と呼ばれるアケローオス河神は、双子座のサガとカノンが子供のころに彼らに関わったという経緯で、成人した双子たちと再会してからは「兄代わりだから」と何かにつけて彼らと交流していた。
「で、聖域にメロンを持って行ったの。久しぶりにあなたにも会えるかな〜とも思ったし。そしたら、アテナは日本です、と聞かされたの。それだったら、美味しいメロンだからあなたにも食べさせたいし、久々に会いたいし、どうせなら日本まで持って行っちゃえって…。で、キド邸?とかいう所に行ったら、あなたはここだと聞いて、こっちに来たってわけ」
「まあ、それはわざわざすみません」
「いいのよ〜。大した手間じゃないわ」
 手を振ってエウリュノメ女神が明るく笑う。
「あの、でも伯母様、メロンは持っていらっしゃらないようですけど…城戸邸に置いて来られたんですか?」
 沙織が首をかしげる。エウリュノメ女神は全くの手ぶらだったからだ。
「ああ、大丈夫。男どもにしっかり持たせてるから」
 エウリュノメ女神が親指を立てて門の脇を指し示す。その方向を沙織はのぞきこみ、目の前の光景に固まった。
 そこでは、「神々の祖」とも言われる偉大なるティターンの長老たるオケアノス神と、彼の長子で「河の王」たるアケローオス河神と、黄金聖闘士の中でも最強と呼ばれる双子座のサガと、ポセイドンの代理人たる海将軍筆頭・海龍のカノンが、それぞれ両手にメロンの詰まった白いビニール袋を提げて、所在なげに立っていたのであった。
 そうそうたる面々(しかも全員、美形)が、商店での買い物帰りのように大衆的なビニール袋にメロンを入れて手に提げているという不釣り合いな光景に、沙織はあごが外れるかと思うほど驚いたのだった。

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