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2019年11月29日15:30

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『燈火』

 2019年ロス誕作品です。 
 『聖闘士星矢』の二次創作で聖戦後復活設定でロスサガ。
 アイオロスとサガがいちゃいちゃしてるだけの話です。もっとちゃんとした話を書いてあげたかったんだけどなぁ…。
 冒頭の詩は『ギリシャ詞華集』(西洋古典叢書)より。
  去年の作品はこちら。『月下の誓い』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10422793


聖なる夜とランプよ、私たち二人は共にお前たちを他ならぬ誓いの証人に選んだもの。あの人は私を愛おしく思い、私もあの人の元を離れぬと固く誓い合い、お前達がそろってその証となってくれたが、あの人は、そんな誓いは流れる水に書かれた言葉だという。ランプよ、お前が目にするものは、他の女たちの胸に抱かれたあの人の姿。

紀元前二世紀のギリシャの詩人メレアグロスの恋愛詩

『燈火』

 その夜、聖域の教皇を務めるアイオロスは、まどろみの中にいた。誕生日の前日の夜、彼は首席補佐官であり恋人でもある双子座のサガを、自らの寝室に連れ込んでいた。「誕生日を迎える瞬間を一緒に過ごしたい」という理由で、熱心にサガを口説き落としたのだ。
 そして寝室に連れ込んだ以上は当然とアイオロスはサガに迫って、寝台の上で愛の喜びをサガから摘むことに成功した。
 何度かの愛の合戦を終えたアイオロスは満足感と幸福感を得て、広い寝台に寝そべってうたたねをしていたが、ふと視線を感じて目を開けた。
「ん…?」
 すると愛しいサガが、微笑みを浮かべてアイオロスの顔を見つめていた。
「どうした、サガ?」
「お前の寝顔を見ていた」
 ふふふ…と笑い、サガがアイオロスの前髪を指ですく。
「初めのころは…」
 サガが言葉を続ける。
「お前の寝顔を見るのが怖かった。まるで死に顔を見ているようで…」
「……」
 アイオロスを死に追いやった過去を思い出すかのようなサガの言葉に、アイオロスの方が顔をしかめた。だがサガは穏やかな顔をして語り続けた。
「でも今は…お前の寝顔を見ると、安心する。お前が私の側にいて、呼吸して、生きている…」
 微笑んだサガは、アイオロスの体の上に乗り上げて彼の胸に抱かれた。
「ずっとこんな夜を迎えたい。愛している、アイオロス」
 そっとサガがアイオロスに口づけした。
「おれも愛してるよ、サガ」
 二人がキスを終えた時、サイドテーブルに置いてある目覚まし時計が鳴った。
「なんだ、こんな時間に?」
「私がこの時間にセットしていたんだ」
 サガが時計のベルを止める。
「たった今、日付けが変わった。誰よりも先に、お前に誕生日の祝いを言いたくてな」
 そしてサガはアイオロスに告げた。
「誕生日おめでとう、アイオロス」
「…ありがとう、サガ」
 ちゅ、ちゅ、と二人は軽い口づけを交わして、寝台の中で互いの体に触れてじゃれ合った。
「いっそ、あのランプになってしまいたいな。そうしたら毎晩、お前の寝顔を夜通しで見ていられる」
 サイドテーブルの上でオレンジ色の炎を灯してアイオロスの寝室をほの暗く照らしているランプを指差して、サガが笑う。
「だったら、おれはあのランプの明かりに誓おう、お前への愛をな」
 アイオロスが言うと、サガは笑った。
「ランプの明かりはだめだ。昼には消えてしまう」
「では窓辺に差し込んでいる、あの白い月の光に誓おうか?」
「月もだめだ。満ち欠けして、形が定まらない」
 笑いながら、二人は他愛ない睦言を続けていく。
「では星に」
「星の輝きも永遠ではないぞ」
「では何に誓えばいい?」
 微笑んだサガが、アイオロスのまぶたに指を伸ばした。
「…お前の瞳に、アイオロス」
 アイオロスのまぶたに唇を寄せてサガがささやく。
「この瞳が永遠に閉ざされるまで、私を愛すると…そう誓ってくれ」
「誓うよ、サガ」
 二人は誓いにと口づけを交わした。
「…ああ!明日の朝が来なければいいのに。夜明けを告げる雄鶏が憎いよ。出来ればお前と一日中、こうして寝室に籠っていたいのになぁ」
 サガを抱き締めてアイオロスが大げさに嘆いてみせる。翌日の教皇の誕生日は聖域では盛大に祝うことになっていて、早朝から祝いの祭礼だの、祝賀のための競技会だの、住民との祝宴だの、晩餐会だの、朝から晩までアイオロスの予定はみっちりと詰まっていた。アイオロスとしてはのんびりと己の誕生日を祝うどころではない。
「教皇の義務だ。仕方がない」
 くすくすとサガが笑う。
「なあ、サガ、しばらくまとまった休みをくれ。お前と二人で出かけて、誰の目も気にしない場所に行きたい。そして二人で街を歩いたり、映画を見たり、恋人らしいデートをして、その後は一日中、部屋の中に閉じ籠ってお前と二人きりで愛し合って過ごすんだ。いいだろう?」
 スケジュールの調整はお前の仕事だろう、と、アイオロスがサガにねだってみせる。
「善処しよう」
 笑いながらサガはアイオロスの頼みをいなした。
「おいおい、そんな曖昧な言い方はやめてくれ。はっきり『はい』と言うまで、離さないぞ」
「ああ、こら…!アイオロス、やめ…っ」
 サガの体を組みしだいてまさぐり始めたアイオロスの振る舞いに、サガの声が乱れていく。
「ん?どうだ、サガ。返事は?」
「ああ…ん、だめだってぇ…ロス…ぅ」
 結局サガは、アイオロスに休みを約束するまで、彼に攻められ続けたのだった。
二人の秘め事を見守るのは、寝台の横のランプの炎と窓辺の月の光だけ。

<FIN>

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