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2019年08月15日09:41

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『おとぎ話なラダカノ』第1話

 おとぎ話風のラダカノです。先天的女体化のカノン姫と隣国の王子ラダマンティスの話です。おとぎ話風ですが、エロです。ラダカノで、ちょっとだけロスサガです。
 ある日、天啓のごとくこのネタが降ってきて、でもあまりにくだらないので放置してたのですが、暑い日が続くので、暑さしのぎに作品化してみました。暑さで作者の脳が沸いたと思ってください。
 おとぎ話なので、定型句で始まって、定型句で終わります。
 でもこれはこれで書いてて楽しかった…。
 サガとカノンが16歳で、アイオロスとラダマンティスは19〜20歳くらい?の設定。このカノン姫は、今まで私が書いたカノンの中で一番、純真なカノンかもしれん…。
 しかし、
 アイオロス→サガに一目惚れしてその場でプロポース(『射手と双子の嬉し恥ずかし初体験☆』https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1972164719&owner_id=4632969
 ラダマンティス王子→カノン姫に一目惚れしてその場でプロポース
 うむ、似た者同士だwさすが義兄弟w

『おとぎ話なラダカノ』第1話

 むかしむかし、あるところに(おとぎ話はこういう定型句で始まるものです)、女神アテナを奉ずる聖域王国という国がありました。水と緑に恵まれたその美しい国は、シオンという王様に治められていました。
 国王シオンには、サガとカノンという、双子の王女様たちがいました。たいそう美しい、うりふたつのその王女様たちは、「聖域の二つの真珠」と人々に称えられました。王妃様を亡くしたシオン王は王女様たちを掌中の珠として大切に育て、王国の人々もまた彼女たちを愛して、二人は健やかに、年ごとに美しく、育ちました。
 そして二人の王女様が十六歳の年になった時、王国の貴族たちや近隣の諸侯たちも招いて、盛大な誕生の宴が催されたのです。
 ですが…。
「やだったら、やだ!おれは宴なんて出ないぞ!」
 妹姫のカノン姫は、ぷりぷりと不貞腐れていました。姉姫のサガ姫は、そんな妹を一生懸命になだめていました。
「そんなことを言わないで、カノン。ご覧、このドレス。王都一番の針子に作らせたものだよ。この真珠色の生地が七色に光って…見事だろう?お前の白い肌によく似合うよ」
「そんなドレス、サガが着ればいいだろ!」
 虹色に光る美しいドレスにも、妹姫は見向きもしません。
「私のドレスは別に用意してあるから…」
「とにかく、おれは出ないからな!」
「カノン…。今日は私たちの誕生日のお祝いなんだよ?」
「サガが出れば、おれなんていなくてもいいだろ!」
 サガ姫は困り切った顔になりました。
 妹姫のカノン姫は、いわゆる「オレっ娘」でしたが、同時に引きこもり気質でもありました。
 姉のサガ姫は、王女としての自覚を持ち、社交も、慈善も、積極的にこなしていましたが、妹のカノン姫はそういう場所は苦手で、一人で山や森を歩いて時間を過ごしたい性格でした。
 でもそれも無理からぬことです。周囲は姉のサガ姫を「聖域王国の後継ぎ」とみなして、丁重に扱い、教育にも力を入れ、成果を出した時は褒めたたえていました。またサガ姫も周囲の期待に良く応えました。
 それに対し、カノン姫はいつも姉のおまけのような扱いを受けて、おざなりにされていたのです。そんなわけで、カノン姫は出来の良い姉をひがんで、少々いじけて、グレかけていました。
「ねぇ、カノン。私たちは王女だ。いずれ国の利益のために、相応の相手と結婚しなくてはいけない。今日は近隣の国々からも、たくさん貴族や王族が来ている。お前が気に入る相手だって見つかるかもしれない」
「どうせ、みんなサガの方に行くさ」
 つん、と、カノン姫は顔を背けました。
 そうなのです。美しく育ち、年頃になった聖域王国の王女様には、国内外からちらほらと求婚者が現れていました。でも、彼らがいつも求婚相手に選ぶのは、王国の後継ぎとみなされているサガ姫だけ。カノン姫はここでもほったらかされていました。そしてますます、カノン姫はいじけてしまうのでした。
「カノン、今日は、隣国のハーデス王国の王子たちも招いている。聖域王国とハーデス王国は長年敵対していたが、やっと和平が結ばれて、それから初めての王族の訪問だ。お前が欠席しては礼を失するよ」
「知るもんか!」
「カノ〜ン」
 姉姫が困り果てた時、カノン姫の部屋の扉が突然開き、シオン王が姿を見せました。
「…げっ」
 カノン姫が顔をしかめましたが、シオン王はごねている娘に厳しく言いつけました。
「カノン、文句を言っていないで、さっさと着替えよ!」
 少々グレかけていたカノン姫でしたが、厳格な父王には頭が上がりません。
 こうして父に叱られたカノン姫は、しぶしぶと用意されたドレスに着替え、誕生祝賀会に出席したのでした。

 色とりどりのドレスや礼服に身を包んだ貴顕淑女が集う祝賀会に、黒一色の目立つ一団がいました。隣国のハーデス王国から来た人々です。
 冥王ハーデスを奉ずるハーデス王国は聖域王国と長年争っていましたが、このたびやっと和平が成立し、友好親善の意味を込めて、王子二人がこの祝賀会に招かれたのでした。
 招かれたのは、第一王子のミーノスと、第三王子のラダマンティスです。二人は、ハーデス王国の先王の庶出の王子でした。ハーデス王国の先王が急死し、王位は王妃との間の嫡出の王女であるパンドラ王女が継ぎました。そして庶出の三人の王子、長兄ミーノス、次兄アイアコス、末弟ラダマンティスは、それぞれ騎士団長として三つの騎士団を率いて、若い妹の女王の補佐をしているのでした。
「ラダマンティス、そのいかめしい顔を少し緩めて、微笑みなさい」
「…無理を言うな、ミーノス」
「無理でも、しなさい。今後、こういう場所に出る機会はますます増えるんですよ」
「社交など、お前がやればいいだろう!人には適不適というものがな…」
「ほらほら、王女たちに挨拶をする順番が回ってきますよ。そんな顔で怖がられたらどうするんです?」
「ううう…」
 長い白銀の髪を美しく揺らめかせながら優美な笑みを浮かべるミーノス王子に対し、ラダマンティス王子は、ごわついた金髪と同じく、いかめしい顔立ちと、顔立ち通りの堅物な性格でした。
 ああ、なぜおれはこんな場違いな所に来てしまったのだろう…と後悔しながら、ラダマンティス王子は、列を進んで、聖域王国の王女への挨拶に向かいました。
 さて、一方、サガ姫とカノン姫の方は。
 サガ姫は、いつものように、清らかで優しい微笑みを浮かべて、来賓たちに相対していました。薄い空色から濃い藍色までグラデーションをつけた優雅なドレスは、サガ姫の美しい銀髪と雪白の肌によく映えていました。
「おお、噂通りに何と美しい…!」
「まさに真珠の化身だ!」
 来賓たちがサガ姫の姿にざわめきます。
「サガ王女、お会いできて光栄です」
「ぜひ一度、我が国をご来訪ください、サガ王女」
「サガ王女への贈り物です。このダイヤモンドとサファイアの首飾りをどうぞ」
 さっそく一人の客が誕生祝いの贈り物をサガ姫に差し出します。すると競い合うように、客たちは我も我もと贈り物をサガ王女に差し出しました。
「金とエメラルドの髪飾りです。サガ王女、ぜひあなたの身につけてください」
「東洋から取り寄せた金襴の織物です。どうかあなたの身にまとってください、サガ王女」
「南方の珍しい香料です。その美しい肌にどうぞ」
 これまたいつものように、サガ姫の周りには人が群がり、様々な賞賛の言葉と贈り物で「王国の後継ぎ」たる彼女の気を惹こうとしました。そしてカノン姫は、ぽつん、と、姉姫の後ろでほったらかされて、居心地の悪い思いをしているのでした。これもまた、いつものことでした。
 カノン姫にも贈り物や挨拶がないわけではありませんが、それは小さな真珠のブローチだったり、レースのハンカチだったり、ガラス製の香水瓶だったり、姉姫への贈り物と比べれば明らかに見劣りしていました。挨拶だって、姉姫へのついでです。
「サガ…おれ、部屋に帰りたい…」
 居心地の悪さに、カノン姫は姉姫の耳元で小さな声で頼みました。
「我慢しなさい、カノン」
「でも…」
「あと少しだから」
 姉に不満を訴えても、サガ姫はカノン姫の退室を許してくれませんでした。カノン姫の心がますますささくれだったころ、ついにハーデス王国の王子たちの挨拶の順番になりました。
「サガ王女、ハーデス王国の王子でミーノスと申します。お会いできて光栄です」
「こちらも会えて嬉しく思います、ミーノス王子」
 ミーノス王子はサガ姫の手を取り、礼儀正しく挨拶しました。サガ姫も、礼儀正しくミーノス王子に挨拶を返しました。
 そして弟のラダマンティス王子の方は…。
 雷に打たれたような愕然とした顔で、姉姫の後ろに隠れるようにしていたカノン姫を凝視していたのでした。
「ラダマンティス、あなたもサガ王女に挨拶を…」
 ミーノス王子が弟に促します。
 ラダマンティス王子はつかつかとサガ王女に歩み寄りました。しかしそのまま彼女の横を通り過ぎ、背後にいたカノン姫の前に進み出て、彼女の前で片膝を床につきました。そしてカノン姫の手を取ってこう言ったのです。
「カノン王女!どうか私と結婚してください!」
「…は?」
「…え?」
 突然のラダマンティス王子の行動に、ミーノス王子とサガ姫は固まりました。玉座の上でシオン王も固まっています。手をラダマンティス王子に取られたカノン姫の顔は、たちまち真っ赤になりました。
「あ、あの…おれ…あの…」
 真っ赤になってもごもごと言っていたカノン姫は、ばっとラダマンティスの手を振りほどき、そのまま背後の扉に走り去って祝賀会場を後にしてしまいました。
「こ、こ、こ…」
 やがてフリーズ状態が解除したサガ姫が叫びました。
「この馬鹿王子!貴様のような奴に、カノンをやってたまるかーっ!」
 そうしてサガ姫は、今まで誰一人見たことがない般若のごとき顔で、ひざまずくラダマンティス王子を蹴倒したのでした。

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