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2015年10月09日16:43

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『双子の見分け方』

 ちょっと思いついた小ネタを、岡山に行く前にUPしておきます。
 双子のオリジナル少年時代設定については『雪解け』を参照。
 次はロス誕かな。一つネタを思いついたけどすごい小ネタだ…。がっつりした話も一応目指してみる、かな。

『双子の見分け方』

 それはアテナ沙織が久々に日本から聖域に帰還していた時のことだった。
 沙織が聖域に来たと知り、普段は海界にいるカノンがご機嫌伺いに参上した。そのまま沙織の勧めにより、カノンは、双子の兄であり教皇の首席補佐官であるサガ、そして教皇アイオロス、それに沙織の四人で、教皇の間の執務室でアフタヌーンティーを楽しんでいた。そんな時、書類を提出しに執務室を訪ねたデスマスクが一同を眺めてこう言ったのである。
「しかし見れば見るほどそっくりだな、あんたら」
 向かいに腰かけて紅茶を飲むサガとカノンの姿に、蟹座の黄金聖闘士はそう感嘆した。
「いくら一卵性双生児でも、十三年間も離れてたら少しは見た目に違ったところが出てもいいと思うんだが…髪型まで一緒なんだからな。双子の遺伝子ってスゲーわ。服を交換したら、どっちがどっちかもう見分けがつかなくなるぞ」
 その言葉に、サガとカノンは怪訝な顔になってそれぞれ首を傾げた。
「そんなに…似ているか?」
「なんか、瓜二つとか見分けがつかないと言われても、ピンとこないよな。ガキの頃から、取り違えられたことって絶対なかったし…。まあ、周りにいた連中、全員、普通の人間じゃなかったけどさ」
「どこで私たちの区別をつけていたんだろうな、彼らは…」
 その疑問に、沙織が明るい声で答えた。
「あら、そんなの簡単よ。双子座の星を持っているのがサガで、海龍の星もあわせ持っているのがカノンです。見れば分かります」
 極めて明快で単純なその答えに、人間一同は沈黙した。
「…ああ、神様的には識別ポイントはそこなんですね。でもおれたち人間には双子座の星とか海龍の星とかは見えないんで…。もっと分かり易い識別法はないですかね?」
「識別法か…ああ、あるぞ!」
 アイオロスが膝を打った。
「胸の傷跡を見ればいい。サガには自害した時の傷跡が左胸にあるし、カノンにはポセイドンの三叉戟の傷跡がある」
 これで解決だ、と言いたげな教皇に、カノンがうろんな目を向けた。
「…胸の傷跡なんて普段は見えないし…。おれたちにいちいち裸になれってか?」
 デスマスクも呆れたような顔をする。
「というか、アイオロス、あんたも双子の見分けができてないのかよ。そこは愛の力で見分けるとかしろよ」
「え、いや…その…」
 口ごもったアイオロスに、眉根を寄せたサガが問うた。
「…そういえば、アイオロス。どうしてお前がカノンの傷跡のことを知っている?」
 険悪なオーラを体にまとわせ、だん!と机に手をついてサガが立ち上がった。
「まさか…カノンの裸を見たことがあるのか!?い、いったいいつ…!?もしやカノンと深い仲に…!?い、いや、それともカノンがお前を誘惑したのか!?お、おのれ、カノン!お前はアイオロスに何を…!お前という奴はやはり邪悪の化身だーっ!」
 弟に猛然と食ってかかった兄に、カノンも怒鳴り返した。
「アホかーっ!誰がこんな男を誘うか!好みじゃねえよ!」
「ではお前の好みとは何だ!あの冥界の眉毛か!悪趣味な…許さんぞ!」
「絶倫以外に取り柄のないこんな人馬に惚れ抜いているお前に、悪趣味とか言われたくないわーっ!」
「お、お前…!何故アイオロスが絶倫であることを知っている!?やはり…!」
「お前が散々愚痴ったんだろうがーっ!」
 机を挟んでひっつかみ合いを始めた双子に、デスマスクはこの話題を振ったことを心底後悔した。できれば逃げ出したいがタイミングがつかめない。慌てた教皇アイオロスが二人を引き離す。
「お、落ち着け、二人とも!」
「おお、アイオロス…」
 般若のごとき顔になって嫉妬をむき出しにしていたサガが、一転、はらはらと落涙し始めた。
「私がかつてお前にした裏切りを考えれば、私はどのような仕打ちを受けても仕方がない。なんであれ甘受する覚悟はある…。だが、よりによってカノンと浮気など…。ああ、これが私の罪に対して与えられた罰なのか。私はこれを耐え忍ばねばならぬのか…」
「いや、だからサガ、おれはカノンの裸を見たことなんかない!三叉戟の傷跡のことは話に聞いただけだ!だから冷静になってくれー!」
「本当だな、アイオロス。信じて良いのだな?もし…もし、お前が浮気などした日には…」
 涙に潤む目でアイオロスを見つめたサガが、彼の胸にわっと泣き伏せた。
「私はお前を殺して、それから自害してやるーっ!」
「うん!何度でも殺されてやるから!今度は一緒に死のう、サガ!だから落ち着け!アテナの御前だぞ!」
 「アテナ」の単語に、取り乱していたサガは、はっと我に返った。
「…もうしわけございません、アテナ。見苦しい所をお目にかけました」
「お騒がせをいたしました」
 乱れた衣服を整え、表情を改め、サガとカノンがそろって沙織に頭を下げた。沙織は一向に動揺した様子もなく、にこにこと笑って一連の騒動を眺めていた。内心では「やっぱり面白いわ、この双子。手元に置いておいて正解だった。退屈しなくていいわね」ぐらいは考えていそうだというのが、彼女の表情を見ていたデスマスクの推測である。
「い、いや〜、しかし困りましたね〜。なにか見分けるポイントがありませんかね〜」
 場を取り繕うかのように、会話を続けるデスマスクに、ならば、とカノンが言った。
「よかろう、デスマスク。お前にとっておきの識別ポイントを教えてやろう」
「あるのか?」
「うむ。実はおれとサガはな…瞳の色合いが少し違うのだ」
 カノンが自分の瞳を指して説明を続ける。
「おれの瞳の色は少し緑が入っていて、アクアマリン色なのだ。海の水の色だな。サガの瞳はすっきりとしたスカイブルー、昼間の空の色だ。空の青を面に映した泉の色かな。光彩に銀の色合いがのぞくこともある」
 そう言われたデスマスクは双子の瞳の色をまじまじと眺めた。
「ああ、そう言われたら、ちょっと違うな」
「じっくり見ないと分からないような、小さな違いだがな」
 サガが軽く笑う。
「とはいえ、瞳をいちいちのぞき込まれてはこちらも落ち着かない。普段は着ている物が違うのだし、あるいは動作や言動を見ていれば区別がつくと思う」
 サガは儀式の場では双子座の聖衣か法衣を着ており、普段の執務では質素な丈長のチュニック姿だ。カノンも、着ている服の形としてはサガと似たような丈長のチュニックだが、海界の統治者でもある彼がまとっている服は、実はサガよりも上等なものだ。現代風の衣装を着る時は、サガはきっちりしたスーツ姿になるし、カノンはもっと砕けたジャケットとパンツ姿のことが多い。「たまには一緒に手合わせでもするか」と言って二人そろって訓練着でも着ない限り、同じ服を着るということはまずない。
「そうだな。まあ、ぱっと見て区別がつかないときは、これからは瞳の色を見てみることにするわ」
 これで一件落着、と、デスマスクは執務室を退室した。
「しかし、情けないな、アイオロス。お前、本当におれとサガの違いに気付いてなかったのか?」
「…面目ない」
「う〜ん、何か不安になって来たぞ。ラダマンティスの奴、おれとサガの区別ができているのかな?」
「…今度、試してみるか、カノン?」
「おお、面白そうだな。同じ服を着てあいつの前に立って、どっちとデートするか選べってやってみるか?」
「もし私とお前を間違えたら、どうする?」
「殴る。それから、そのままサガとベッドインしろって言って、蹴り飛ばす」
「どこまで騙せるかやってみるかな?」
「あー、本当にベッドに行って裸になるまで、気付かないかもなー、あいつ」
 不穏な相談を始めた双子の姿に、一人ラダマンティスの健闘を祈るアイオロスだった。

<FIN>

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