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2020年04月02日17:20

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ピケティの描く未来図

今日は新宿シネマカリテで「21世紀の資本」を観てきました。

監督:ジャスティン・ペンバートン

主な出演者:トマ・ピケティ、ジョセフ・E・スティグリッツ、スレシュ・ナイドゥ、プライス・エドワーズ他。

フランスの経済学者トマ・ピケティの経済学書を元に経済学者たちが過去と現在を対比させて語るドキュメンタリー作品です。

ピケティは若い頃にドイツが東西に分かれていた頃、東欧を旅して社会主義体制の崩壊と欺瞞を知るところになります。
そして、資本主義が大手を振るう様を平均寿命が17歳だった18世紀の時代と重ね合わせ、貴族が権力維持の為に課税に反対し、資産のある者同士が結びつく様子は現代とさほど変わらないものだったと慨嘆します。

奴隷が転売され、富める者の資産であったというのは斬新な見方に見えました。
そして、ファッションは労働者も流行を追いかける革命と位置づけ、クリスマスプレゼント交換により製造業者が儲かるという様は、人為的に作られた習慣で、人々は見事に乗せられているのだと感じさせられました。

1920年代は株式バブルの時代で、1%の人が70%の富を独占し、金融崩壊後は関税引き上げ合戦による貿易戦争、果ては世界恐慌に陥り失業者で溢れ、当時の映像が流れます。
1930年代には資本主義が根源と見做され、暴動が多発。
ルーズベルト大統領のニューディール政策は共産主義からヒントを得たというのは意外な話でした。

ヒトラーはドイツの貧困は英米が原因と位置づけ国民をファシズムに駆り立て、また、戦争で失う資産は1/3程度で、残りは力関係の一変により価値がなくなることで焼失すると解説しています。

1950年代になると、皆が豊かになる事を目標とし、中産階級が台頭します(多分、この時代が米国民にとって最も豊かな時代だったのではないでしょうか)。
原題は中産階級の貧困化が進み、企業経営を財務だけの狭い見方をする時代に入り、日独のような福祉国家に差をつけられた米国は労組潰しを始めます。
レーガン大統領はストに参加した航空業界社員をクビにし、レーガンとサッチャーによる金持ちへの減税は目論んでいたトリクルダウンにはならずに失敗したと解説しています。
また、規制緩和で誰でもローンが組めるようにした事で、払えない人にローンを組ませて焦げ付きとなるサブプライムローンによる不景気は米国経済に大打撃を与えます。
モノポリーゲームによる実験では、サイコロで金持ち役となった人がハンデを生かしてどんどん資産を増やし、貧乏人役の人は差をつけられる一方となります。
そして、金持ち役となった人は横柄な態度を取り始め、貧困層の人に金没薬をさせてもやはり同じ結果になるというものでした。

富める者へのアドバンテージという事で現実の世界に照らし合わせると、アップル社は150億ドルもの税金を滞納し、フェイスブックもアマゾンも税金を払っていない(節税と言われるグレーゾーンな方法によるものでしょうか)と指摘しています。
各国の大企業はダミー資産管理産業により脱税していると指摘し、これに対し各国は何の対策もしていないと批判しています。
これにより1%の富裕層の収入が2000%も上がったそうです。

現在、米国では第2次大戦で儲けた人たちの後継者への資産移動を始めているそうで、資産に対する課税をするべきだと訴えています。
人間、得た物は手放したくないのが常で、これは富の集中と権力の固定化になると指摘しています。
こうなると脱する術のない底辺層は手近なものに捌け口を求め犯罪が増えると語っています。

結びにSF映画の映像を織り交ぜながら、未来がSF映画のような二極化社会になってしまうと危惧し、全ては政治の決断によって決まるとピケティは主張しています。

原著は難解な数式や難しい話が書かれていて、とても一般人に理解するのは困難だそうですが、本作では分りやすい表現で語られています。
シンプルに理解するならば、富と権力が集中することにより持てる者はそれを守る事だけに腐心し、底辺にいる者など顧みる事がなく、流動化させてゆく構造を構築する事が肝要だと言っているものと理解しました。
その決め手となるのは賢明な指導者の出現でしょうか。

公式サイトURL
https://21shihonn.com
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