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2018年12月15日00:02

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[観劇]グッド・バイ[劇団地点]

@京都芸術センター。
バーのカウンターを模した舞台で、高さ2M程の石壁に面して横に伸びた卓上に、
無数の酒瓶が並んでいる。ユニークなのは、生演奏である意味俳優たち以上にこの演劇の主役でもある「空間現代」が、
この石壁の上にセッティングされていることだ。オーケストラピットならぬ、オーケストラバルコニー、とでもいったところか。
頭上から雨のように音楽が降り注ぐなか、7人の俳優たちが酒瓶を振り回しつつ太宰のテキストを朗唱する、それがこの劇の基本形となる。
タイトルの「グッド・バイ」は太宰の絶筆となったユーモア小説だが、
小説のタイトルのみ、というケースも含めれば太宰の代表的なテキストをほとんど網羅的に引用されているのではないか。
その内容だけみれば、酔った文士の大言壮語に自虐、鬱屈した自意識に、自殺願望と、通俗的な「太宰文学」のイメージに収容されてしまいそうだが…
断片化し、また音楽に合わせて輪唱することで、テキストは「文学」の小箱から解放され、まったく新しい活力を帯びる。
カウンターを危ういほどにダイナミックに昇降する、上下の運動(果ては石壁の向こうに役者の半数が消えていく!)も小気味良く、1時間半ほどの上演が終わり、会場を後にするころには、すっかり観客の内側にも、太宰のテキストが生きづいているのだった。
照明効果が極めて卓抜であったことも付け加えておきたい。スクリーンとして観客の前に聳える石壁に、躍動する演者と、酒瓶・椅子の脚の影が美しいコントラストを織り成す。
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