mixiユーザー(id:4535387)
2021年09月18日17:30
86 view
憲さんマニアック映画評 黒澤明監督『天国と地獄』で憲さん想い出の横浜の謎を解く！
※画像は映画『天国と地獄』のポスター
憲さん、学生時代の短い期間であるが横浜に住んでいたことがある。
住んでいたというよりは「居候」に近い状態だったが･･･。
横浜の繁華街伊勢佐木町に近い中区である。
横浜の中心地は主に２つに分けられる。現横浜駅周辺と桜木町から関内にかけてのエリアである。
桜木町駅は1872年（明治5年）、日本で最初に鉄道が開通した時に初代の横浜駅として開業した。その後、東海道本線の延伸に伴い1915年（大正4年）8月15日横浜駅（2代目）開業により桜木町駅に改称、東海道線の電車線の終点駅となった。
参考
↓
【桜木町駅】
https:/
なので、本来の横浜とは桜木町周辺であった。
そもそも、幕末に開港した横浜港周辺の「横浜村」が発祥であり、そこを中心に外国人居留地も形成されていったのである。
参考
↓
「『横浜』の由来って何？」
https:/
「横浜居留地Q&A - 」
https:/
そして、その横浜外国人居留地の中にはご多分に漏れず遊郭も形成されていった。
参考
↓
【港崎遊郭(みよざきゆうかく)】
https:/
この横浜を舞台とし、往年の横浜の姿をスクリーンに焼き付けている傑作映画がある。
1963年公開の黒澤明監督の映画『天国と地獄』である。
参考
↓
【天国と地獄 (映画)】
https:/
予告編
https:/
あの特急列車から酒匂川鉄橋で身代金の入った鞄を投げ落とすシーンは余りにも有名である。
この映画、黒澤明監督が読んだエド・マクベインの小説『キングの身代金』に触発され、映画化した作品である。
参考
↓
「『キングの身代金』エド・マクベイン」
https:/
1961年に『用心棒』、『椿三十郎』と娯楽時代劇を制作した黒澤監督が満を持して世に送った現代劇である。
黒澤監督のこの映画作成の動機は2点あり「徹底的に細部にこだわった推理映画を作ってみよう」ということと「当時の誘拐罪に対する刑の軽さ」であったという。
しかし、公開されて以降、この映画を模倣する誘拐事件が多発し、それ以来黒澤監督は犯罪映画を撮らなかったという逸話が残るくらい社会的影響力をもった映画である。
この映画、憲さんも20代くらいに観ている。
もちろん、封切り時には憲さん生まれていないので、レンタルで借りて観た記憶がある。
そして、その舞台となった横浜の街並みに何故かちょっとした違和感を覚えている。
その違和感の一つは高台にある主人公の邸宅である。間違えて運転手の子供を犯人に誘拐され、身代金を要求さらた三船敏郎演じる権藤金吾の豪華すぎる邸宅である。
映画を観た時に「横浜にこんな高台にポツンとある邸宅があったのか？これは、どこだろう？」と思った。
そして、もう一つは山崎努演じる犯人のインターンの竹内銀次郎が純度の高い麻薬使用によるショック死の効果を実験した横浜の麻薬常習者の巣窟黄金町の描写である。
憲さん、1980年代後半の黄金町のあのガード下を何回か歩いたことがあるが、それ以前もそれ以降もあのような雰囲気の場所、いわゆる青線街を歩いたのははじめてであり、若かりし憲さんが「このような場所が日本にもあるのか！？」と大変衝撃を受けたのを覚えている。
参考
↓
【黄金町】
https:/
【青線】
https:/
2000年頃の横浜黄金町の動画。数は減っているが往年の「ちょんの間」が散見される。
https:/
【ちょんの間】
https:/
先日、YouTubeをみていたらそれらの憲さんの疑問に答えてくれる動画を発見した。
それがこれである。
↓
「天国と地獄� �
https:/
「天国と地獄�◆�
https:/
この動画で権藤邸の現地比定がされている。
そこでわかったことなのだが、この映画の主人公の権藤邸は映画制作上３つ用意されていているのだそうだ。
それが･･･。
�＾譴弔聾�藤邸サロン内からガラス窓越しに横浜市街が見える西区浅間台に建てられたセット。映画冒頭に登場したのがこれ。「浅間台の権藤邸セット」である。
ここには一階サロンの内装、玄関周りの内、外装、芝生の庭、塀など外構が作られた。
��二つ目は浅間台からは南に3.7キロばかりも離れた南太田に作られた「南太田の権藤邸セット」だ。
このセットは外観用である。竹内や、捜査する刑事が屋敷を見上げるシーン用に作られた。しかし権藤邸のサロン内で子供達が走り回っている様子が見えたり、ソファーなども見えるので、ある程度は室内も作られていたのかもしれない。
�Ｅ貶�の撮影所に作られた邸内のセットがある。
以上のよう「権藤邸」は三つ作られた。
これについては、前出の動画の基となったであろうサイトが存在して、その場所の比定を綿密に行っている。
これは、まさに「『天国と地獄』マニア」の仕事と思われるが驚愕の調査力である。
以下
聖地巡礼 天国と地獄 �� ロケ地編 監督・黒澤 明（1963）
http://
聖地巡礼 天国と地獄 �� 補足・些細なことなど編
http://
そして��のセットは別として、この映画の内容として一致するのは�，寮�間台である。
それは捜査本部の会議において「浅間台誘拐事件」とあるから間違いない。
なので、権藤邸は映画の筋書きに沿えば横浜駅から真西に１キロ少しの浅間台の高台に存在しており、権藤邸内部からの景色もそれに沿って、横浜高島屋の看板や平沼橋が見えている。
そして、それを見上げる高台の麓にあった犯人の竹内銀次郎のアパートはその南東に位置する浅間町4丁目278番地、日ノ出アパート12号室。これが、映画の中での竹内の家の住所だ。
しかし、実際の竹内銀次郎のアパートが撮影されたのはそこではない。
外観の権藤邸のセットのあった京急南太田駅の北側高台にある常照寺の現在頂上に1981年建立の「日蓮聖人像の建つ通称「ダンゴ山」のやはり東南に位置する京急の線路と県道218号線を越えた大岡川沿いなのだ。
この２つのセットの距離は３キロ以上も離れており、生活圏としても全く違うところである。
もっと言ってしまうと浅間町は新しい横浜駅文化圏であり、南太田は桜木町・関内文化圏なのである。
しかし、地形的には２つの場所はよく似ている。
高台があり、その東南に川が流れていて住宅街が密集している。
しかし、生活文化圏が違う。
やはりセレブリティである権藤の生活圏は�，寮�間台であるが、竹内銀次郎の生活圏は�△瞭鄲静弔任△蹐Α�
しかし、黒澤監督は権藤邸からの眺めは横浜や横浜港が見渡せる�，箸掘�外観は�△箸掘�犯人竹内の生活圏も実際は�，箸靴燭�その内実は�△箸靴燭里任呂覆い世蹐Δ�？
というのも､犯人の竹内が生活する文化圏は黄金町や伊勢佐木町など�△龍瓩�なのであるから。
特に南太田は黄金町と大岡川沿いに隣接しておりいわゆる「大岡川スラム」の影響を受けていたことは容易に想像ができる。
ということで、結論的に言うと
映画『天国と地獄』での権藤邸は中からの眺めは浅間台、外観は南太田ということであり、また、犯人竹内の住む場所は実際の地名は浅間町であるが、イメージとしては南太田ということとするのがいちばんスッキリするであろう。
まず、一つ解決。
そして、次に映画での黄金町の描写である。
これを検証してみる。以下、ウィキペディアの「黄金町」の記述より。
以下、引用
黄金町は戦前から大岡川の船運を活用した問屋街として栄えたが、終戦後は高架下にバラック小屋の住居が集まり、次第に飲食店に変わっていった。そんな店の中から女性が客を取る店、いわゆる「ちょんの間」が現れ、いつしか関東でも屈指の「青線地帯」として知られるようになる。
そして、日ノ出町周辺や黄金町付近の大岡川沿岸にはバラック群がずらりと建ち並び（大岡川スラム）、さらにはしけを転用した不法の水上ホテルが28隻も浮いていた。
「青線地帯」「大岡川スラム」で悪名をはせる一方、戦後の黄金町はヒロポンやヘロインといった麻薬密売の温床でもあった。特に昭和20年代は、大岡川を境界に密売組織による縄張り争いが頻発した。警察官の巡回すら身の危険を感じて出来ない程荒んだ環境であったという。
特殊飲食店（外観や届け出は飲食店や旅館を装っているが、実際は売春を目的とした店）街は1958年（昭和33年）の売春防止法施行後、一旦大人しくなったが、その間隙を縫って麻薬の売買が盛んになった。その臨界点は1962年（昭和37年）7月6日で、警察の取締で供給源を断たれた200人あまりの中毒者が路上に飛び出し、禁断症状を起こした。この騒ぎは社会問題になり、街灯の整備やバラックの撤去、麻薬の更生施設の設置などの施策が行われ、麻薬禍は過去のものとなった。
以上、引用終わり。
憲さんが訪れた黄金町は1980年代中期〜後期であったが、さすがに青線地帯ではあったが麻薬常習者の巣窟という感じはなく、安全に歩くことができた。しかし、この映画のできた1960年代においては黄金町は「麻薬常習者の巣窟」であったというのは驚いた。
今の黄金町は当局の「浄化作戦」によって「青線」の姿は見る影もなくなってしまったそうだが、それはそれで寂しいものである。
と、YouTubeの動画を何気なくみていて、昔観た傑作映画の作成秘話に触れることによって、憲さんの当時感じた謎が氷解した。
憲さん、実は黒澤明監督はあまり高く評価していない。
それは、彼の映画に対する我が儘なほどの「こだわり」が癇に触るのである。
映画人はもっと謙虚でなくてはなるまい。
しかし、『七人の侍』やこの『天国と地獄』、さらには『生きる』などは現代人の教養として観る価値はあろう。
最後にこのYouTubeで黒澤明監督のこだわりに穴があったことを知って少し愉快に思ったことを紹介しよう。
黒澤監督はこの映画の作成動機でも「徹底的に細部にこだわった推理映画を作ってみよう」といっており、有名な酒匂川のシーンで鉄橋の脇に建つ民家の二階が邪魔でそれを一時的に撤去したというのは有名な話である。
参考(前出)
↓
聖地巡礼 天国と地獄 �� 補足・些細なことなど編
http://
しかし、ここまでこだわる黒澤明監督でもどうしようもならなかったことがあった。
それが、誘拐された子供が、監禁された場所は「海と富士山の見える所」と証言して子供にその時の絵を描いてもらい、その場所を突き止めようとす場面。
この映画は9月3日に特急こだま号での身代金受け渡しの設定ということで、残暑が厳しい季節という設定である。
しかしこの湘南方面のロケは実は11月から12月にかけて行われており、出演者は厳寒の中で半袖シャツで汗を拭きながら演技をしている
そして、この湘南から見える富士山が実は冠雪しているのである。
11〜12月の富士山は当然冠雪しているが、残暑の季節の富士山はさすがに冠雪はしていない。
さすがの黒澤監督も「おい！あの富士山の雪を全部とってこい！」と言って富士山の冠雪をどかすことはできなかったようである。
参考
↓
「天国と地獄��」
https:/
因みに現代ならコンピュータ処理で簡単に雪などなくしてしまうことができるであろう。
はたまた、黒澤監督は敢えて白黒映画で富士山を強調するために冠雪期の富士を写したのであろうか？
謎だ。
それにしても世の中には映画の細部にこだわりよく検証している人がいるものである。
いまや、インターネットや動画の普及でそれらが簡単に見ることができ、さらには地図アプリの開発で現地の様子を簡単に伺い知ることができる。
これは、まさに文明の利器である。
これを機に憲さんも大好きな寅さんシリーズのロケ地巡礼をしてみようかな〜！
(￣ー￣)ムフフ
どーよっ！
どーなのよっ？
参考サイト
↓
「黒澤映画「天国と地獄」のロケ地はどうなってる？」
https:/
「●「天国と地獄」伊勢佐木町から黄金町を歩く（下）」
http://
他、多数。
0
0
ログインしてコメントを確認・投稿する