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2020年02月25日01:23

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2月に見た映画 寸評(1)

●『mellow メロウ』(今泉力哉)
『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』と2019年は大活躍だった今泉監督。以前に『知らない、ふたり』というのを見ているのだが、そのときはそれほど面白いとは思わなった。今はノリに乗っている感じだ。今作はまるでフランスの恋愛映画のような面白さ。洗練の極み、というか。中でもともさかりえとその夫とのくだりは、現実にこんなことがあればコワいけど、映画の中だと実におっかしく笑える。会話の妙技である。テーマは「好きなら相手に伝えましょう」。主人公をはじめ、様々な登場人物たちがその変奏を奏でるが、主題はそれ一つに絞られているのですっきりしている。主演の田中圭はモテ夫なのにそれがイヤミにならず、さらりと清潔に演じていて好演。女優陣は無名(私が知らないだけか?)の人が多かったけど、みんな美しく撮られていて、中でもラーメン屋の店主を演じた岡崎紗絵って方は魅力的だった。女学生二人もよかったが、ちょっと中学生には見えないよね。JKの設定でも別によかったのでは? <2/1 (土) 梅田ブルク7、シアター3にて鑑賞>

●『風の電話』(諏訪敦彦)
東日本大震災で家族を失い広島で叔母と暮らしていた少女が、叔母が倒れたのを機に一人ヒッチハイクで故郷の岩手県大槌町を目指すロードムービー。途中に様々な人々と出会い、助けてもらうというパターンになるが、モトーラ世理奈演じる少女が受け身なだけなので、見ていてイライラする。これも一つのドキュメンタリー的リアリズム演出なのかもしれないが、人前になると喋らないっていうのはねえ。モトーラの佇まいはいかにも脆そうでピッタリではあるのだが。タイトルの「風の電話」というのは大槌町に実際にある電話ボックスで、ここに来ると亡くなった家族と電話で話せるという。変なのはヒロインが最初からこの電話を目指すのではなく、帰るときになって、急にその噂を聞いてそこに立ち寄るという展開になり、なんだか本編のおまけみたいになっているのが、よくわからない。もちろんこれまであまり喋らなかった少女が電話で死んだ家族相手に一気に喋りはじめるという演出なのだろうけど、ここがフィックスの長回しで、思わず「長電話か!」とつっこんでしまった。/劇中、震災後の福島に暮らす西田敏行が、福島を舞台にした映画『警察日記』(日活1955)の話をする場面は印象的だった。映画の中に出てくる美しい田畑を懐かしむのだが、「若い頃の三國連太郎なんか出てて…」というセリフは『釣りバカ日誌』でコンビを組んでいた過去を踏まえてのことだろうと思うと、なにか西田の懐かしんでいる感情にリアルさが生じて感動させられた。考えすぎかもだが。<2/1(土) MOVIXあまがさき シアター3にて鑑賞>

●『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(テリー・ギリアム)
テリー・ギリアム監督の、念願の企画の実現だが、退屈した。この監督は『ラスベガスをやっつけろ』(1998)あたりまでは楽しく見られた。しかし近年の作品は衰えがヒドく、見ていて苦痛なことが多い。本作も例外ではなく、ドン・キホーテの映画を撮影しにきている主人公の映画監督(アダム・ドライバー)が、自分がドン・キホーテと区別がつかなくなった素人役者(ジョナサン・プライス)に振り回されているうちに現実と空想的世界との境界が曖昧になるという話ながら、それが案外に型どおりなので面白くならない。ギリアム独特のビジュアルも昔のような鋭さはもうなく、平凡。ただ代表作の『未来世紀ブラジル』をはじめ、個人の夢想的世界が現実の前でもろくも崩れ去るというギリアム作品によくみられるプロットは、このセルバンテスの「ドン・キホーテ」が原点になっているということはわかった。それゆえに思い入れも強かったのだろうけど…。<2/1(土) 大阪ステーションシティシネマ シアター5にて鑑賞>
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