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2020年01月18日01:29

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1月に見た映画 寸評メモ(2)

●『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』(MTJJ木頭) 昨年秋頃から京都の出町座で上映され、連日満席で札止めになっていた中国産のアニメ。口コミでどんどん広がっているらしい。ようやく12月末になって大阪の第七藝術劇場に回ってきたので、試しに見てみた。
 ストーリーはかつて人間たちに住処を追われた精霊たちが、人間と共存する派としない派に分かれ、対立して暮らしている。そこへそんな事情の知らない子猫の精霊の小黒(シャオヘイ)が二つの派閥のリーダーと出会い、親しくなるうちに、板挟みになるというパターン。自然と人間の対立という主題は宮崎駿の『もののけ姫』あたりの影響か。話そのものは決して目新しいものではない。また主人公たち精霊が持ち前の能力を使って戦う、というのもマーベルの『Xメン』あたりがすぐに頭に浮かぶ。後半の迫力ある市街戦などもそのあたりのアメコミもののクライマックスを見ているようだ。ただ勘違いしてほしくないのは、この作品が単なるパクリ映画なのかというと決してそうだと言えないことだ。
 例えば先にも書いた市街戦のビルの破壊場面や途中の走行する地下鉄を使ったバトルなど、アクションのスピード感がハンパなく、並みのアニメにはないクオリティの高さが堪能できる。それだけでもじゅうぶん凄いのだが、そういうことをやっている一方で、日常と地続きの、極めてアジア的というか、マンガ的なほのぼのさが一緒に共存しているところがまた凄いと思う。私がこの作品を見ていて一番気になったのは、映画のあちこちに日本の同人誌系のマンガに出てきそうな「笑い」が顔を出すことだ。その「笑い」というのは、うまく説明できないのでむず痒いが、例えばシャオヘイがおいしいものを食べて目がキランと光るというようなセンス。あるいはエンディングにあるキャラたちの日常をギャグっぽく描いているところとか。こういうのはディズニー作品などでは絶対見かけないようなテイストだ。この映画の作り手は元々個人制作のWebアニメから出発したそうだが、技術的なことでいえばいくらでもプロの商業作品らしく作ることができる実力を持っているのに、わざとそういう部分を残しているように思う。そんなバランスのとり方が独特で面白い。
 あと、最初にも書いたように本作は公開規模が非常に小さい。インディペンデント系の小さな配給会社のようだ。そのためか、日本語字幕もプロではなく自前で付けているみたいで、日本語がおかしかったり、読んでいる途中ですぐ消えてしまったりする。作品自体は映画館で上映できるクオリティを持っているのに、ちょっと海賊版ビデオを見ているようで、もったいない。(第七藝術劇場にて鑑賞)。

●『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』(ジョナサン・レヴィン) 冴えないジャーナリストのセス・ローゲンはあるパーティで、幼なじみのシャーリーズ・セロンと再会。お互いその気があったことがわかるが、彼女は次期大統領候補が噂される国務長官であった…というトンデモ設定のラブコメ。昨年に見た三谷幸喜の『記憶にございません!』と同様、政界を舞台にしたコメディなのに現実の政治とリンクするところが一切ない(と思う)。完全にお笑いネタとしての政界ものなので、この話なら別に大スターでも王女でも、一般人には手の届かない女性なら何でもいいと思う。そういうところが私にはつまらなかった。さらに笑いのネタが下品なものばかり。セロンがブランドもののバッグにうん○した話をして盛り上がるとか、事の最中にスパンキングしてくれと頼んだりとか…私も下ネタは嫌いじゃないけど、この映画では笑えなかったなあ。なぜかと考えるに、この話、男性の願望ばかりが優先されているからだ。インテリ美女が本当はこんなに下品でいやらしくて、男性の好みもブサメンで…って。こんなのありえないだろ、ガハハ、って笑う映画なの? 付き合いきれなかった。(TOHOシネマズなんば別館シアター11にて鑑賞)

●『カツベン!』(周防正行) いや、そんなに面白くないことは予想していたのだけど、一応、ずっと見続けている周防監督なので迷った挙句、最終週に見に行った。映画がまだ「活動写真」と呼ばれていた時代が舞台の話だが、それに引っ張られたのか、内容まで古くさい喜劇になっているとは。さすがにコマ落としにしたり、ピアノ伴奏にしたりするような、いかにもな演出はしなかったものの、最後の追っかけ場面などまんまそういう感じを狙ったのがアリアリ。いっそキートンやチャップリン風に、成田凌に体を使ったアクションを披露してもらいたかった。そういえば黒島結菜が敵対する小屋主に捕まって縛られているのを、成田が助けにいくのもサイレント映画によくあるパターンなのに、クモが顔の上に垂れてくる程度のピンチなのでぜんぜん盛り上がらない。周防監督はグリフィスの「ラスト・ミニッツ・レスキュー」ぐらいご存じですよね? もしやサイレント風の演出遊びは劇中に登場するフェイク映画の方でやったので、ドラマ部分では遠慮したのか。あと当時の映画館興行、活動弁士周辺および撮影所など、実際にあったエピソードを脚本に盛り込んでいるらしいことは伺われたが、映画ファンしかピンとこないだろうなあ。そもそも配給が東映ってどうよ? 東映は戦後誕生した映画会社なので、サイレント時代はまだ存在していない。内容的にも松竹あたりが妥当だったが…。(梅田ブルク7、シアター4にて鑑賞)
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