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2019年12月14日10:59

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「鳥の骨格標本図鑑」読了

【書名】鳥の骨格標本図鑑
【著者】川上和人 著/中村利和 写真
【発行】文一総合出版
https://www.bun-ichi.co.jp/tabid/57/pdid/978-4-8299-7509-1/Default.aspx

マイミクさんの紹介で知った本。145種の鳥の骨格写真と「生前のお姿」を見比べたり、他の鳥の骨格と比較することで、鳥の生態や行動と骨の形や長さ・大きさの関係を考察したり、進化の過程に思いをはせることができるとてもおもしろい本。生きている状態の鳥で見えているのは大部分が羽で、それを支える骨格との落差も興味深い。

一部の鳥の行動はワールドワイドだけど、鳥と関わる人の世界は意外と狭く、以前にも書いたとおり川上和人さんは講演会に参加して不規則発言とはいえ言葉を交わしたこともあるし、掲載写真を撮影した中村利和さんとは、知人に付き添ってだけど例の近所の池で一緒に鳥を見ながら撮影散歩したこともあったりします。

いえ、顔見知りの本だから褒めてるわけじゃなくて、これは鳥の生態とか進化に興味のある人にはぜひ読んでほしいし、探鳥会の話題作りにも使える情報満載でもあるのです。

たとえば、潜水ガモでスズガモとキンクロハジロというかなり姿形の似た種類の鳥がいるのですが、キンクロハジロはわりと内陸にも姿を見せるけどスズガモは海か汽水域にしかやってきません。よく見かける普通種のわりに、初心者には識別が難しいことでも知られています。

ところがこの2種類は、頭蓋骨を並べて見ればどちらなのか一目瞭然。というのが、キンクロハジロの眼窩は周囲がずっと同じ高さだけど、スズガモは眉の生え際のあたりが少しへこんでいるのです。これは、塩類腺という海水から塩分を除いて淡水だけ体内に取り込む組織の圧痕。スズガモが海域に適応している証で、見た目は似ているけど生息域が違うことが骨を見ることでわかるわけです。だからスズガモは内陸部にはほとんど姿を見せない、と。

でも、そんな小難しいことばかり書いてある、ましてや図鑑という調べたいところだけぱらぱらっと見ればいい本がそんなにおもしろいのか、と不安をお持ちの向きもおありでしょうが、心配御無用。著者はエッセイで映画やSFや漫画、アニメへのオマージュ満載の文章を書く川上さんです。

この本でも例えば、「鳥の祖先は獣脚類恐竜である。ティラノサウルスやゴジラザウルスの仲間だ。」とか、「鳥以外で、空飛ぶ脊椎動物を思い浮かべてみる。コウモリ、ムササビ、トビトカゲ、カル・エル*、ヨクリュウ、トビガエル、トビウオ、トビヘビ、バットマン*。」とか、油断していると随所に著者の趣味がほとばしっているのです。

しかもご親切に、先の引用で「*」を付けたような用語にはアンダーラインが引いてあり、巻末の「用語の解説」にまとめられています。ちなみに「カル・エル」はスーパーマンの本名で、他にも「ゴンとドテチン」「ザク」「侍ジャイアンツのハイジャンプ魔球」などが並んでいます。

日記タイトルで図鑑を読了したと書いて違和感を覚えた方も、こういう遊び心満載の本ならそれもむべなるかなとご理解いただけるのではないかと思います。はっきりいって読んで楽しむ図鑑です。興味のある方はぜひご一読を。


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