変わった家族だった。一家揃って爬虫類が大好き。水槽やケージが所狭しと家を埋め尽くしている。
「先生、うちの子大丈夫でしょうか?」
お母さんが心配そうに尋ねる。
「大丈夫ですよ」
兄が尋ねる。
「この子にもしものことがあったら僕は……先生、大事な蛇なんです。助けてあげてください」
妹が大きな声で。
「太郎ー、しっかりしてー」
「皆さん、落ち着いてください。見たところ太郎君は、お腹が膨れてる以外に異常は見当たりません。何か異物を飲んだんでしょう。口を開けて、引っ張り出してみます」
「お願いします」
獣医師が長い金属の棒を蛇の口に向ける。看護師が蛇の口を開け固定する。棒をゆっくりと口の中へ差し込む。
「やはり何かありますね。摘まみ出します」
グリップを握ると、先端の鉗子が閉じる仕組みのようだ。強く握ったまま、徐々に引っ張っていく。
「うわっ!何だこれ?」
カラフルな布が出てきた。
「タオル?いや違う。なんかの布?」
「皆さん、太郎君の体調不良の原因はこれです。この布を呑み込んでいたんです」
「そうだったんですね。じゃあこれでもう大丈夫ですか?」
「ええ、心配ありません」
「良かった」
一同胸を撫で下ろす。お母さんがぼそっと――
「それにしてもこんな時にお父さんはどこに行ったのかしら」
兄と妹が気付く。
「ねぇ、これお父さんのパジャマじゃない?」
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