２分小悦『張り紙』

「はいどーもー、『トイレットブラザーズ』でーす」
「宜しくお願いしまーす」
「向かって左側の僕がメインロールでーす」
「そして僕が予備ロールです。名前だけでも憶えて帰ってくださいね」
「いやー、それにしても予備君」
「何だいメイン君」
「最近ダイエットしてるんだけど全然痩せなくてねぇ」
「そう？まぁ、歳を取ると代謝が落ちるって言うしね」
「違うがな、君のせいやがな！」
「え？僕のせい？そんなはずないやろ？ダイエット上手くいかんからって人のせいにすんなや！」
「いや、そんな怒らんといてぇ。まぁ聞いてくださいよ。つまりね。普通やったらメインロールの僕の方を皆使うやろ？」
「せやな」
「やのに最近コロナかパロマか知らんけど、『人が触ったかもしれんもん触りとぉない』言うてねぇ、補助のはずのキミが意外に人気というか、なんちゅうか、とにかく普段より君の減りが早くて、僕が意外に残んのよ」
「あー、そういうことかいな。まぁ分らんでもないねぇ。確かに僕最近よー引っ張られるなぁって思うとったんよ」
「せやろ？いつもやったらとっくにガリガリになっとるのに見てみ、ほらまだこんなに紙残っとるやで。ただでさえここ多目的トイレやから使う人少ないのに」
「まぁそう言いなや。そんなことより皆さん最近ちゃんと出てますか？便秘やないですか？便秘はあきませんよ！ダイエットの天敵ですから」
「そやね。皆さんがちゃんと出すもん出して僕を使ぉてくれんと、いっこうに痩せんわ」
「いや、そうやなしにお客さんの言うとんのや」
「お客さん？お前、そこの便器で唸っとるおっさんのこと、お客さんって思うてるの？」
「せや」
「どこがやねん！こんなもんが何でお客さんやねん」
「ちょっと君止めとき！聞こえるで」
「聞こえるかいな！見てみ、スマホに夢中や。何熱心に見とんか知らんけど、そんなんいじらんともっと本気できばれっちゅうねん！」
「こらっ！すいませんねぇ。言い過ぎちゃうかメイン君、謝り」
「いやや、もと言うたるわ。おいっそこのおっさん、舐めとったらあかんぞこら！クソでもしていね！」
「いや、クソしてるやん」
「してへんやん！スマホ見とるやんけ」
「見ながらきばってはんのや」
「きばってないやんけ！」
「いや、君にはそう見えんかもしれんけど頑張ってはんねん。お、終わったみたいやね」
「ほれ、言うたやろ？ケツ拭かんとズボン上げよったで。出んかったんや」
「いや、そんな日もあるって」
「知らんがな。クソ出んのんやったら座んなボケ！カス！ひょっとこ！……おい、何すんねん。触んな！やめろってコラ」
「メイン君大丈夫か？」
「大丈夫やあらへん。このおっさんクソもせんとワシの体まるごと外して、こら！やめろって、うわ、なにすんねん！いかん！窃盗や！鞄開けよった！持って帰る気や。ワシのこと持って帰る気や」
「メインくーん」
「ちきしょう！これまでや、こんな形でコンビ解散するとは思わんかった。いつかお互いに流されて、下水道で再開しような！そん時はまたワシとコンビ組んでくれるか？」
「当たり前やがな」
「ほな、先に言って待っとるでー」
「あーーー、メインくーーーーーん」
「おっさん、これだけは言わせてくれ！ケツ拭く紙もまともに買えんようなら死んでまえ！ドアホ！皆さんにも言うときます。盗んだ紙でケツ拭いてそんな人生楽しいですか？自分のケツは自分で拭きなはれ！人の金でケツ拭くな！」

　##########

　と、便所の張り紙に書いてあった。