貴方の言葉が透明な刃となって私をぶった斬ろうとする瞬間、私は瞼を素早く閉じ言葉を挟み込むつもりだ。
真剣白刃取りの要領で、私を殺そうとした言葉を涙で押し返す。
肌の色が殺し合いの原因になるのなら、目を閉じて触れてみよう。
「その暖かさに違いはあるか?」
言葉を電子に変えて飛び交わせるこの世界で僕ら、石を掴んで殴り合っている。目を血走らせ奇声を発して。
ならばいっそ、ネアンデルタールのままで良かった。
「憎しみを深めるためにテクノロジーはあるのか?」
プロメテウスが宙を見据える。
和して目に映る色とりどりの花、待ち受け画面に張り付けているが、心には映っていない。
世界中のどんな生き物よりも発達し、複雑な作業をこなすことができる高度な指を駆使して、タップ、ピンチ、スライド。呪いの言葉たちが液晶画面を満たす。写り込む顔が歪んでいる。
「私はただ、優しい言葉が欲しかっただけだ」
血塗れた刃物が足下に落ちてかしゃんと鳴る。
言語、ネット、笑顔、コミュニティー。
分かり合うために生み出されたものの多くが、傷つけるために使われている。
月に棲む日の僕らの子供
限りある酸素を求め
殺し合っているのだろうか?
肌の色や国を根拠に
誰か教えてくれ。
彼らの記憶媒体に、ジョンレノンは入っている?
人類はいつまで、目を閉じてすべての人を想像する能力を、失わずに持ち続けるだろうか?
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