青空に罫線が引かれている。
よく見ると飛行機雲だ。初冬の硬質な空に、文字通り連綿といった質感で伸びている。
幾文字も書けるようであり、一文字も収まらぬように見える。
指を伸ばせばきっと、想いを文字にすることはできる。しかし、青空に書き連ねたところで何になる?書いたという事実があっても、あの人の心に届いたという真実には程遠い。
罫線が去ってゆく。
尻の方から消えてゆく、伸びた分だけ消えてゆく。僕を置き去りに、渡り鳥のように遠ざかる罫線。追いかけるすべはない。いや、その必要もない。僕は実感したのだ。あの人に想いを届けたいのだと。きっとどこかに、僕の望む罫線がある。いや、すでにして僕は、必要なだけの一直の線を、鞄の中に持っているのかもしれない。
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