けれども、あっしだきゃあ知っていやす。
おめえさまについて歩いたって、なんの得するところもねえってことを知っていやす。
それでいながら、あっしゃあおめえさまから離れることが出来やせん。
(フッと自嘲的に笑って)どうしたのでしょうねえ。
おめえさまがこの世にいなくなったら、あっしもすぐに死にやす。
生きていることができやせん。
あっしにゃあ、いつでも一人でこっそり考えてることが在るんでえす。
そいつぁおめえさまが、くだらねえ弟子たち全部から離れて、また天の父の御教えとやらを説かれることもお止しになり、つつましい民のひとりとして、おっかあのマリヤ様と、あっしと、それだけで静かな一生を、永く暮らしていくことでありまさあ。
津軽のあっしの村には、まだあっしの小っせえうちが残って在りやす。
年老いた親父とお袋も居りやす。
ずいぶん広い桃畠もありやす。
春、いまごろは、桃の花が咲いて見事でありやす。(ほろりとする)
一生、安楽にお暮らしできやす。
あっしがいつでもお傍について、御奉公申し上げたく思いやす。
よい奥様をおもらいなせえやし。
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