私の名前は川口民雄。子どものころから、周囲から浮いていた。学校の成績は低空飛行で、お情けで卒業させてもらった。小学校低学年のころからごく普通に生きられないと堪忍した。なんでみんなと同じことができないのだろうか。学校時代の運動会、学芸会、展示会、修学旅行で、周囲のクラスメートと同じ行動をとるのに、非常に神経を使った。仕事をいくつか渡り歩き、発達障害を支援するNPOで働いている。大人になって、検査を受け、検査の結果で、読み書きはかなり厳しいことがわかった。発達障害当事者は別に努力して、普通に見せようとしても、無理である。例え給与は低くとも、暮らしていければ、文句はない。この仕事は自分に向いているようだ。発達障害トラブルシューティングが仕事になった。
川口と三浦が高齢者施設へ面接に来ている。森井淳子が対応している。相談室。
川口
「いつも森井さんを頼って、申しわけないけど、今回も相談に乗ってくれます」
森井
「いいですとも。お世話になった川口さんの相談なら、聞きますよ」
川口
「ありがとうございます。又、一人ボランティアをお願いできますか」
森井
「うちは手が足りないから、人はいくらでも欲しいです。お隣の男性ですか」
三浦
「三浦と言います。私にできる仕事はあるんですか。川口さんとの相談を受けっているうちに、この仕事に興味を持ちました」履歴書を渡す。
(数分の間が空く)
森井
「履歴書を読ませていただきました。旅行の専門学校を卒業されたそうで、人のお世話をすることは好きですか」
三浦
「嫌いではないけど、好きでもないです。ただ、人に頼られるのが好きです」
森井
「そうですか。それなら、ここの施設で、高齢者の方々の活動を手伝ってみますか」
川口
「そうしていただけますか」
森井
(川口をたしなめる)
「本人から聞きましょう」
川口
「ごめんなさい。つい自分のことのように熱くなって」
三浦
「この部屋に入ってくるとき、どうしょうかと迷っていたんです。でも、何もしないで悩むより、やってから悩んだほうがいい。そう思ったんです」
森井
「明日からでも、来てくれますか」
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