私の名前は川口民雄。子どものころから、周囲から浮いていた。学校の成績は低空飛行で、お情けで卒業させてもらった。小学校低学年のころからごく普通に生きられないと堪忍した。なんでみんなと同じことができないのだろうか。学校時代の運動会、学芸会、展示会、修学旅行で、周囲のクラスメートと同じ行動をとるのに、非常に神経を使った。仕事をいくつか渡り歩き、発達障害を支援するNPOで働いている。大人になって、検査を受け、検査の結果で、読み書きはかなり厳しいことがわかった。発達障害当事者は別に努力して、普通に見せようとしても、無理である。例え給与は低くとも、暮らしていければ、文句はない。この仕事は自分に向いているようだ。発達障害トラブルシューティングが仕事になった。
三浦氏の家、部屋の中。
川口
「どう、今日はいい天気ですよ。外へ出ないか」
三浦
「ああ、よく寝た」
欠伸をする。
川口
「三浦さんの何か、進路を探す手段を考えようと来たんだ。少し、話をしていいかな」
三浦
「どうぞ。退屈してたところだったからね。自分の好きなことって、けっこう難しいんです。なにしても、続かなかったから。自信がないんですよ」
川口
「それは、自分が本当にやりたいことをしてなかったからじゃないかな。緊張して考えなくてもいいよ」
三浦
「俺って、何が得意だったんだろう。川口さんが帰った後、一生懸命考えたんです。でも、どうしても考えつかないんだ」
川口
「子どもころから、好きだったことが、手がかりになると思うけど、何をやっているときが、一番、楽しかったかな」
三浦
「好きだったことか。寝転がって、テレビを見ることかな。アニメを見るのが、好きだったぐらい。それほど、入れ込むアニメもなかたった。子どものころ、夏休みに行った山でのキャンプが楽しかったぐらい。学校の行事はつまらなかったし、どこのクラブにも入っていなかったから、帰宅部だった。帰って、母親が帰ってくるまで、テレビを見ていた。そのぐらいしか、思いつかないですね」
川口
「今の話の中にヒントがあるかもしれない」
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