<ストーリー>
様々な巨大生物が襲来する日本ではこれらを禍威獣(カイジュウ)と称し、対抗するために禍特対を結成し、日夜戦っていた。ある日、電気エネルギーを狙う透明禍威獣ネロンガの前に突然宇宙から金色の巨人が降り立つ・・・
<コメント>
うん、「ウルトラマン」として非常に面白い。特にカラータイマーなしのウルトラマンというのがこれほど美しいものなのかと驚いた。
さらに冒頭で「ウルトラQ」から始まるのもうれしい。ちゃんとゴメスやマンモスフラワーをカラーで見られるなんて。
そして禍特対出動で自衛隊との連携も見事だし、皆が有能であることを示すオープニングも見事、そして天空から飛来するウルトラマンにシーンにはワクワクする。おまけに長澤まさみはちゃんと美脚を披露してくれるし。
で、それはそれとして、ちょっと初回からリアルタイムで見ている自分にとっては脚本を書いた庵野秀明氏の嗜好と弱点が見えてしまい、そこに不満があるので、それをネタバレして書きます。
ただし、かなりネタバレするので、スペースを空けます。
(以下ネタバレあり)
この映画は見事に起承転結で構成されている。
起 ウルトラマン出現、二匹の禍威獣との戦闘
承 ザラブ聖人によって神永が正体をバラされ、にせウルトラマン出現
転 メフィラス聖人出現し、政府と交渉
結 最終戦闘生物ゼットン出現
見ていて「この構成が間違っている」と思ったのは承の部分のザラブ星人のくだり。多分ザラブとメフィラスが好きな庵野氏のチョイスだと思うのですが、この二人それぞれ政府と交渉しようとする。
いや、いらないからそんなに2回も政府との交渉シーン。
そもそも怪獣映画として完全だと僕が思っている「シン・ゴジラ」。あの映画では一切の人間ドラマを排して政治家(国家)対ゴジラの戦いをストレートに描いたからこそ傑作となった。
怪獣映画には余計な人間ドラマはいらないと僕も思う。ところが「ウルトラマン」は違う。なぜなら物語の最後にゾフィーがウルトラマンに言うのだ「ウルトラマン、そんなに人間を好きになったのか」と。
このセリフを成立させるためにはきちんとした人間ドラマが必要なのだ。なのに、神永と融合したウルトラマンは禍特対のメンバーとほとんど交流せずに書物から人間を学ぼうとしている。いや、そりゃダメだろう。せっかく人間と融合したのだからキャラの立った禍特対から人間を学ぶシーンが必要なのだ。
そのためには承の部分をザラブ星人ではなく、もうゴモラでもギャンゴでもいいから「禍特対と神永(ウルトラマン)が事件を解決する」というパートが必要なのだ。あるいはウルトラマンが神永の記憶をたどってメンバーとのドラマを思い出してもいい。
そして、そういうシチュエーションを経て初めてメンバーの中に「神永がウルトラマン」というショックが生まれるのだ。
これは多分、庵野秀明氏が人間ドラマが不得手か嫌いみたいなところに由来しているのだろうけれども、ソフィーの言葉と、ラストショットに禍特対の面々を持ってくるなら、最低限でも彼らとの絆を描かなければならないのだ。
さらに禍特対も神永がウルトラマンと知った後は「いつから神永になったのか、本物の神永はどこにいるのか」などを確認することでより絆が生まれるのではないのか。
この映画では最も人間と絆をつないでいるのはメフィラスとしか思えない。しかしメフィラス星人の山本耕史は素晴らしいなあ。人を食ったような軽妙な演技は素晴らしく、特に一番笑ってしまったのは居酒屋で神永を説得したあげくに「割り勘だぞ、ウルトラマン」というところ。思わず笑ってしまった。普通、誘った方がおごるだろう。しかもこの店はメフィラスが連れてきたわけだし。
もしも「承」の部分に他の怪獣が出てきたのなら最高点を付けたかもしれない。
シン・ウルトラマン
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