<ストーリー>
人の心に巣食うアヤカシが見え、それに追われることの多い四月一日(わたぬき)はある日幻のような蝶に導かれて一軒のミセに入る。そこは妖しい女主人侑子が営む「対価と引き換えに欲しいものを与える」ミセだった・・・
<コメント>
元々は写真家である蛭川実花の画面の「絵」作りは本当にすごい。ときどきハッとさせられるような斬新な「絵」を見せられる。ゴタゴタとした飾りの多い部屋であったり、背景が真っ暗な広場であっても、その一部に配置されたモノが見ている方の心にザワザワとした異物感を覚えさせるのだ。
しかし、その代わりに演出は下手だ。一例をあげれば冒頭で最初から主人公のワタヌキは走っている。もしも追われる恐怖を描きたいなら最初は立ち止まっていたり、歩いていたりするべきで走ったままだと寓話性が強すぎて切迫感がない。
編集も今一つで、ストーリーは要するに「解りにくいドクター・ストレンジ」みたいなもので、繰り返される夢か現実か分からない中での主人公の成長を描くことなのだけれども、あるいはひょっとして全編が夢の中であるかのようにも感じられてしまう。
しかし、そういったマイナスポイントをよりもやはり幻想的な見事なヴィジュアルの中でひたすら吉岡里帆であったり、柴崎コウであったり、玉城ティナを妖しく描く映像こそがこの映画の醍醐味かもしれない。
実は原作は未読なのだけれども、きっとCLAMPだからきちんとしているはずだと思う。それをここまで崩してある意味「わけが分からない」状態にしても自分のイメージを優先させたのはさすが蛭川実花だなあ。
途中で「柴崎コウと吉岡里帆のキャスティングは逆でもよかったんじゃないか?」と思ったけれども、ラストで描かれる侑子の正体を考えたらこれはこれで仕方がないな。
ところで、繰り返し後半で言われるセリフ「自分だけを犠牲にして皆を救ったっていい気になっても救われた方が傷つくことだってある。そえが正しいことだとは限らない」というセリフで思わずCLAMPの初期の代表作『レイアース』第一部のラストシーンを思い出して、CLAMPのバランス感覚に感心した。
ホリック xxxHOLiC
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