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2021年12月08日01:39

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「同志少女よ、敵を撃て」小説

<ストーリー>
 独ソ戦が激化する1942年、モスクワ郊外の農村に暮らす18歳の少女セラフィマは大学進学を夢見ていたが、突如襲い掛かったドイツ軍によって母親を含めて村人は全員惨殺される。かろうじて生き残ったセラフィマの赤軍女性兵士のイリーナは「生きたいか」と尋ねてくる・・・
<コメント>
 ミリタリーものは苦手だし、ましてや独ソ戦という最近やっとフィーチャーされ始めたまさに地獄の戦線というのに最初はちょっと敬遠していたのだが、『戦争は女の顔をしていない』が面白かったので、多分作者もこれに影響されて書いたのかな?とか思いながら読み始めたらこれが面白い、面白い。ぐんぐん引かれて物語に没入してしまった。
 なぜこれほど面白いのかと読んでいてふと、気が付いた。週刊文春とか朝日新聞とかの書評でも高い評価されていたけれども、そういった書評家が気づかないこの物語の骨子というか、原点。それはこの物語が「プリキュア」だからなのだ。あるいは深夜アニメの毎季に必ずあるガールズクラブ活動系。
 特に最初の章は狙撃手養成の学校に入校した主人公が鬼教官ともいえるイリーナに鍛えられながらスナイパーとして成長していくところなのだが、ここで次々と仲間は脱落してゆき、最終的に5人の女性たちが残る。
 まあ、この場合分かりやすく「プリキュア」で説明すると戦争の英雄にもくってかかる熱血漢で母を殺したドイツの狙撃兵イエガーを殺すという真っすぐな目的をもった主人公のセラフィマがレッドで最初はセラフィマと対立するが、実は明るくて甘えん坊な金髪の美少女シャルロッテがイエロー、寡黙で天才スナイパーのアヤがブラックで誇り高いコサック出身のオリガがパープル、そして年長でママと慕われるヤーナはグリーンかな。
 この5人の女性たちが地獄の戦場に向かうのである。
 スターリングラードの戦いやケーニヒスベルグ要塞の戦闘と史実に基づいた戦いの中で仲間に支えられながら主人公が様々な葛藤を抱きながら戦闘を繰り広げる面白さ。
 そして、遂に主人公が宿敵のイエガーと対決することになる部分の迫力と展開には圧倒される。それまでは戦場ドラマであったり、イデオロギーとかが背景に会ったりとしたのだが、それらがすべて最終章で収束して思いもかけぬ展開と内容に感動してしまう。
 クライマックスで初めてタイトルの本当の意味が解明するところなんてもうものすごく好みで泣けてくる。

 エピローグで「戦争は女の顔をしていない」に触れるところも納得で実に効果的に使われていて、まさにお腹いっぱいの少女冒険小説にして戦場百合小説にして、リアル版「プリキュア」な作品。傑作。

同志少女よ、敵を撃て
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