『この素晴らしき世界』
<ストーリー>
「心がない」「性根が腐っている」と言われる吉本の中堅芸人東野幸治が、様々な吉本の芸人達を赤裸々な嘲笑混じりでの論評エッセイ。
<コメント>
人は悪口が好きだ。対象の慢心・欺瞞・虚栄・失敗を嘲笑したいと思うのだが、実生活ではなかなかそれが出来ない。しかし、世の中にはこの悪口を「イジる」という名目で許容する人たちがいる。それが芸人である。
キングコングの西野曰く「性根の芯まで腐りきり、人として評価される部分が一つもない」と言われる東野はその冷徹な目で様々な芸人を「イジる」と称して罵倒し続ける。
もうその内容が面白いことこの上ないのだ。『アメトーーク』で「どうした!品川」やら「帰ろか、千鳥」や「スゴイんだぞ!西野さん」などの一見リスペクトに見せかけて徹底的にTVで笑いものにしてしまう東野の語り口はまさに同様で、「大西ライオン」や「トニーズ健」に至っては罵倒しかしていないのに、最後に「そういう○○が大好き」「だからこそ魅力的」とか言っておけば全て許されるのだとばかりに。
まあそれが芸になり、さらに書かれたほうが喜ぶのがその世界だから。
しかし、中にはお笑い芸能史の中で「へえ」と思わされる一節もある。例えばR-1グランプリで優勝したにも関わらず中山功太や三浦マイルドがブレイクしなかったのはなぜなのか、であるとか宮川大助・花子が芸風を変えたのは実は新人のダウンタウンが「世の中の笑いを変える」という予感を抱いたせいであるとか。
吉本の芸人達の愉快でしかし悲惨なその生態をドライに笑うことが出来る芸能史の一冊。
この素晴らしき世界
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