『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』
<ストーリー>
スランプ気味のCM監督のトビーは「ドン・キホーテ」を題材にした作品をスペインで撮影中にかつて学生時代に同じモチーフで撮った作品の撮影場所が近くの村だったことを思い出してそこを訪れてみるが、そこではドン・キホーテ役の老人が自分はドン・キホーテだと信じ込んでいた・・・
<コメント>
いや、まさかテリー・ギリアムの『ドン・キホーテを殺した男』が現実に観られるとは・・・まさに苦節30年だけあってある意味ギリアムの集大成のような作品となっている。
「ドン・キホーテ」ものといえば『ラ・マンチャの男』が有名であり、果たしてこれを越えることが出来るのか?と思ったけれども、なるほどさすがはテリー・ギリアムだけあって全く異なった、かついかにもテリー・ギリアムらしいアプローチの物語となっている。
実は僕は『モンティ・パイソン』時代からテリー・ギリアムの大ファンで多分彼の作品は全部見ているのではないかなあ。テリー・ギリアムの作品の特徴は全て主人公が地獄巡りの旅をするということ。『12モンキーズ』のような他人が脚本を書いた作品であっても、自身の『ローズ・イン・タイドランド』『ゼロの未来』のような舞台が限定された場所であってもとにかく主人公はボロボロになるまで地獄巡りを強いられる。
本作でもまるで運命に翻弄されるかのように主人公は放火犯から殺人犯まで汚名を着せられて自分をドン・キホーテだと信じる老人にサンチョと認識されて旅を強いられる。その後の旅はまさしく「現実か虚構かあるいは正気か狂気かわからない」ような旅なのだ。途中で何度も現れる異様なシチュエーションに「ああ、これは幻想なのだな」と思ったら実は現実であったと種明かしをされ、「この部分は現実なのだろうな」と思ったら辻褄の合わなくなってきたりとまさに悪夢のようなシーンが連続する。特に何度も現れるジプシー男はまるでメフィストのように主人公のトビーを迷わせるのだ。
クライマックスは悪夢以外の何者でもないのだけれども、その後に荒野を行く主人公の姿はまさにテリー・ギリアムそのもののような気がする。
そういう意味では『未来世紀ブラジル』で悪夢を彷徨ったジョナサン・プライズが今度はアダム・ドライバーを旅に誘うのもなかなか感慨深いものがある。
テリー・ギリアムのドン・キホーテ
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