mixiユーザー(id:411965)

2020年01月27日01:06

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「ジョジョ・ラビット」映画

『ジョジョ・ラビット』
<ストーリー>
 第二次大戦も末期が近づいた頃、ヒトラーを敬愛し彼をイマジナリー・フレンドとしたジョジョはヒトラーユーゲントに入るために青少年キャンプに参加する。しかし殺しの儀式としてのウサギを殺せなかったことから臆病者の烙印を押される・・・
<コメント>
 実に危なげな作品。そもそも第二次大戦下のナチスでコメディを作ろうとするその姿勢とチャレンジ精神がすごい。そしてコメディでありながら作品を見終わったときにテーマがずしりと伝わってくるのだもの。しかし、これは本当にコメディなんだろうな。だって何度も劇場で声を出して笑ったし。さらにジョジョの妄想のヒトラーがあまりに愉快でお調子者なのだから。
 妄想ヒトラーの助言で手榴弾チャレンジをしたジョジョが重傷を負って結果家にいるしかなくなるという経過もなぜか妄想ヒトラーのせいで妙に軽く描かれる。そして壁の奥に母によって匿われた年上のユダヤ人少女を発見してからはまさに彼女との二人芝居の様相を呈してくる。まさに「子供の目から見た戦争」「子供の目から見たナチス」「子供の目から見たユダヤ人」がそれぞれユーモラスに描かれるのだ。
 ただ、普通のコメディでないことは冒頭の吊るされた死体や口を開く戦争の影によって時折冷水を浴びせられたかのように観客を襲ってくる。「これ本当に笑ってもいいのか?」と。僕には「世の中には笑ってもいいことと、笑っていけないことはないけれども、笑えるほど面白くないことがある」という自論があるけれども、まさにこの映画はそれを突きつけたかのような作品である。
 ひたすらヒトラーを盲信し、ユダヤ人を怪物かと思っていた少年が自分の頭でものを考えてやがて自分のするべきことを見出していく。そして、一見ダメかと思われた大人たちが彼を助けるところには笑いながら泣いてしまった。とにかく役者が皆凄い。スカーレット・ヨハンセン扮する母親の意思の強さやらサム・ロクウェル扮するキャプテン・Kの愛すべきダメ軍人さの見事さ、そして何よりも主人公の子役がすごい。この子本当に子供か?と思わせるほど凄い。
 そして冒頭で快活に駆け出すジョジョの背景でビートルズがかかるという人を喰ったオープニングは同時にラストでさらに人を喰った形で終わる。あまりに人を喰った演出に苦笑いしてしまったけれども、チャップリンの『独裁者』のシナリオではチャップリンの演説の後で敵と味方がダンスを踊るという幻のエンディングがあったという記事を新聞で読んだ。(戦時下という時節からそれは叶わなかったらしい)監督自身がヒトラーを演じるというこの作品でのあのエンディングが半世紀を経てそれを叶えられたということならこれは素晴らしいことだ。

ジョジョ・ラビット
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