『煙と蜜 1』
<ストーリー>
大正5年の名古屋。母親の養生のために帝都荒から旧家に帰ってきた12歳の姫子は婚約者である30歳の帝国軍人の文治に首ったけである。彼が夕飯を馳走になりにくる日は朝から落ち着かないくらいに・・・
<コメント>
これまた変なマンガ。事件らしい事件はほとんど起こらないで大正5年の名古屋の旧家の生活を延々と描いている。この事件が起こらない物語を支えているのが画力と書き込みの繊細さで姫子や母親の和装や文治の軍服姿が微に入り細を穿つがように実に綿密に描かれえいる。線や絵のタッチなどから『乙嫁語り』と同系統と言ってもいい。
大正時代の軍人と許婚の美少女と言ったら『はいからさんが通る』を思い出すけれども、主人公の軍人である文治の一目見てわかる目の下のくまが特徴で結構不気味な外見がこれまたリアリティがある。そして主人公であり、文治にベタ惚れしている姫子が信じられないほど美少女として書き込まれているのだ。
作者はそんな二人を通じて大正時代の生活を描くことがどうやら目的のようで、例えば文治が軍服を着るのに4ページかけてじっくりと描いたり、夕食を作りすぎたところにやってきた文治が残りを平らげるのを(それをキラキラとした目で見つめる姫子!)5ページかけて描いたり、さらにはまるまる1話つかって文治が師団の兵隊たちに名古屋の観光名所を尋ねたり。
また、姫子と文治の節度を持ったイチャラブシーンも現代なら顰蹙がくるような場面かもしれない、ロリ変態一歩手前の純愛として描かれている。
非常に妖しくも怪しいけれども、思わず魅かれてしまう作品。
煙と蜜 第一集 (ハルタコミックス)
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