『芸人と影』
<ストーリー>
ビートたけしによる近年の世相や事件を毒舌で切って語る週刊ポストの人気連載からことの話題を編集しなおしてテーマに沿って語り下したエッセイ。
<コメント>
いまさらたけしの「21世紀毒談」を連載や単行本で読もうとは思わなかったけれども、新書で出ていたのでつい読んでしまったけれども色々な意味で感心してしまった。
パターンとしては大きく分けるとまず「芸人論」、そして「近年の様々な事件を分析して切って過激に断罪しさらにそれを笑いにする」というものと「昔はこうだった」という三つのパターン。最後のものに関しては今までもさんざん語りつくされていたから今更だけれども、前の二つに関してはさすがだと感心してしまう。
興味深かったのは芸人とヤクザとの関連性で昔はしかたがなかったし線引きは難しいけれどもそこをなんとかするテクニック。中でもオートバイ事故後のたけしに会いたいとある大きなヤクザ組織の会長が言ってきたときのエピソードには戦慄した。親分の意向をなんとかしようとする子分達による圧迫もあって、しかしそれをマスコミに知られたら叩かれる。そこでたけしは雑誌の対談企画ということにして一緒に食事をして写真を撮ったというくだり。これは凄いなあ。
吉本興業のやり方のマズさや組織の体制は批判するけれども、現代の漫才師たちの実力はきちんと評価して分析するその冷徹さなど「なぜ自分は漫才の審査員はしないのか」には納得してしまう。
さすがに後半は使いまわしのネタばかりにはなっていくけれども、少なくともやっぱりたけしは健在なのだな、ということを実感させてくれた1冊。
芸人と影 (小学館新書)
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