『世界の辺境とハードボイルド室町時代』
<ストーリー>
辺境作家の高野秀行と歴史家の清水克行が現代ソマリアと室町時代の共通点を通じてそれぞれの国の成り立ちと現代社会を語る。
<コメント>
対談本というのは出来不出来の差が大きい。互いに自分の方が優秀であると立証しようと躍起になって読者が二の次になってしまう。それに対してこの本では互いにファンである二人がそれぞれの知識を駆使しながらも「なんとか面白いことを言おうとしている」のである。
本書では現代のソマリランドというほとんど実写版「北斗の拳」のような無法地帯における秩序が室町時代から戦国時代へと向かう中世日本で秩序が形作られる過程との共通点
を始めとして様々な国の風習がすとんと腑の落ちるように描かれている。中でも「日本の中古車がアフリカで大人気だけれども、なぜ東南アジアで生産された日本車ではなく、はるか遠くの日本から輸出される中古車なのか?」であったり「アジアにおける柿色の服の秘密」などはひどく理論的で感心してしまう。
さらに、対談本の面白いところはライブ感というか「本来自分の本なら活字にならないような本音がポロリと出てしまう」ところにある。
本書でも高野氏が家に留めたソマリア人留学生に振りまわされる話や辺境作家と名乗る由縁、あるいは清水氏が「信長が比叡山を焼き討ちして多くの文書が消失してちょっと助かっている」などは笑ってしまううえに、多分著書には収録されない逸話だと思う。
かなり深いところまで突っ込んだ内容であるのに、対談ということでスラスラと読めてしまう傑作。
世界の辺境とハードボイルド室町時代 (集英社文庫)
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